4人が見たもの
学校、それは希望する者達が集い、勉学を学び、社会へ出るための準備をする場所だ。
生徒達が勉学を学ぶ為に集い、それを教師が教える。
昔では、そんなものは金持ちの特権であったが、今ではその門戸は広くに開かれ、多数の国では、国民のほぼ全員がそれを受けられるようになった。
そんな学校には、学校ごとに「七不思議」と呼ばれるものがある。
例えば、真夜中にひとりでに鳴るピアノであったり、理科室の動くガイコツであったり様々だ。
現在の時刻は夜の20時を回り、あと少しで21時になろうかという時間。
駅の近くであれば、人通りがまだ多く、帰宅途中のサラリーマンや学生がいる時間帯ではあるが、この住宅地の中ではヒトはまばらである。
それに、授業が終わり、部活動も終了した学校の近くなんかはめっきりと人の数が減る。
そして、ここに、この学校にある「七不思議」を調べようと、4人の男女が学校の裏門の前の監視カメラの死角の気の陰に揃っていた。
「ねぇ、ホントにこの学校の『七不思議』を調べるの?」
「あったりめぇーだろ!! なんせ、このまえホントに見たっていうヤツが出たんだぜ?」
「ホントかなぁ?」
「だって、髪の長い女のヒトを見たって言うヤツがココ最近、頻発してるんだぜ?」
「それはそうなんだけどさぁ」
ボブカットの可愛らしい外見をした少女と、短く髪を刈り込んだ活発そうな少年が話す。
「だから、美樹。 言っただろう? マサは何言っても聞かないから来ないほうがいいって」
困ったような顔をしたボブカットの少女、美樹に理知的な瞳をした少年、亮が、勢いよく話す親友であるマサを白い目で見ながら言う。
「でも、心配じゃない!」
「確かに心配ね。 この馬鹿が安易に学校に侵入して警報でも作動したら警察沙汰になるもの」
健気にも、マサの心配をする美樹に同調して、髪の長い清楚な雰囲気を醸し出す美少女が毒舌に言う。
そんな様子を後ろの二人は苦笑しつつも、認める。
「相変わらずの毒舌だな、香織」
「たまにマサを見てると可哀想になってくるわぁ」
毒を吐いた香織に、亮が小さく笑いながら言い、美樹があわれむような声で言う。
「そ、そんなコトよりっ! 早く、中に入ろうぜ!」
香織の言葉に、顔をひきつらせたマサだったが、周囲に聞こえないように声を発する。
そして、後ろにいる香織に催促するような仕草をする。
「はいはい、やればいいんでしょ、やれば」
「おう、頼むぜ!」
呆れながら諦めたように言いつつ、肩から提げてあった大き目のバックから、薄いノートパソコンを取り出す。
そして、素早くパスワードを入力してパソコンを起動し、あるプログラムをフォルダから開く。
そして、自分が持ってきたバックから、USBコードを取り出し、裏門の門戸の脇に付いている侵入者用のセンサーに探知されないように気をつけながら、その本体にコードを差し込み、先程開いたプログラムを実行する。
そのプログラムは、装置の機能を停止させ、なおかつ、それを管理者側には悟らせないという類のプログラムだ。
それを高校生で作る香織も瞠目に値するが、立派な犯罪行為である不法侵入に心配だからという理由で加担する亮と美樹もかなりスゴイ。
「しっかし、よくこんなの作れるよなぁ」
「そんなに難しくないわよ。 やりかたさえ覚えてしまえば、どんなプログラムでも作れるもの」
「ほへぇ、そんなもんなのかぁ~」
「いや、そんなに簡単ではなかったよ?」
感嘆の声を上げるマサに、パソコンの画面と格闘しながら、顔を上げずに言い切る香織。
それに対し、同じく感嘆した声で言うマサに、亮が実体験から基づく感想を述べる。
「へぇ~、じゃあ、やっぱり香織スゴイんじゃん」
「当たり前じゃない。 私を誰だと思ってるのよ」
「おおう、謙遜しないのかっ!?」
「だって、私、スゴイでしょ?」
「…………返す言葉もございません」
最初はただ感嘆した様子で話していたマサだったが、傲然とした態度の香織に面食らって言葉を続ける。
だが、確かにスゴイのは変わりないので、反論もできなくなる。
そこに救済の手を差し伸べたのは、二人のやりとりを隣で見ていた亮だった。
「まぁまぁ、香織もそこらへんにしてあげて。 ここの警備を解けるのは香織しかいないんだからさ、マサも何も言わない」
まるで、どこかのお母さんみたいな口調で二人を宥める。
しっかりとした亮の言葉なので、さすがの香織も逆らえず、素直に返事をする。
「わかったわよ」
「はいはい、わかったよ」
「それじゃあ、早いトコ入りますか。 ここでもたもたしてると、いくら人通りが少なくても流石に通報されそうだしね」
二人の返事にうんうんと頷き、亮は二人に先立って侵入をしようとする。
あまり乗り気では無かったハズの亮が自分から行動を起こすことを提案したのに驚いたマサは、眼を瞬きながら亮を見る。
「な、なんだよ?」
その視線に気付いた亮が、マサを恥ずかしそうな顔をしながら見る。
マサは、その顔を見た瞬間、ニヤリと笑い、嬉しそうにニヤニヤする。
「いや、別に~。 やっぱり亮も男の子だったんだな、と思ってさ。 やっぱり見たかったんだろ?」
「好きな女の子のパンチラ?」
「ええっ!?」
「違うよっ!! そういう話じゃないからね!?」
マサがニヤニヤと言った言葉に、どう誤解したのか香織が真面目な顔で亮に聞く。
その香織の言葉に驚いた声を上げた美樹だったが、すぐさま亮が首を振って否定する。
「はいはい、わかったわよ。 じゃあ、行きましょうか」
まるで、さっきの意趣返しとでもいうような香織の行動だったが、今度は自分が先程の亮と同じ提案をする。
「そうですねっ! いきましょうか!」
「いや、だから提案したの俺なんだけど」
香織に美樹も同調し、声を上げるが、このメンバーを集めた張本人であるマサが、ボヤくが、誰も応えなかった。
しかし、彼らの与り知らぬところでこの言葉に反応したモノがいた。
4人がいる裏口が見渡せる校舎の4階の窓から、真っ白な死に装束のような服を着た髪の長い見目麗しい女性が微笑んでいた。
「フフッ、いらっしゃい。 正行くん」
目標など全く決めていない4人は、とりあえず職員用の玄関から警備室の前を気付かれないようにそっと通り、自分達の教室がある4階に向かった。
そこに目当ての人物がいるとは知らずに。
「夜の学校って、怖いイメージあったけど、実際そうでもないな」
「確かに。 今日は月も出てるし、街灯が意外と明るいしね」
マサが辺りを見ながら、呑気に呟き、それに応える亮。
確かに辺りは意外と明るく、普通にお互いの顔が視認できるぐらいだ。
そう言って自分達の教室の扉に手をかけるマサ。
だが、鍵がかかっており開く気配はない。
「クソッ、入れないか。 宿題取ろうかと思ったのに」
「ねぇ、アンタまさか宿題を取りに来るためにわざわざここまで来たの?」
「んなワケねーだろっ! 流石にそこまでバカじゃないわっ!」
「信じられないわね」
悪態を付くマサに、白い目を向けながら返す香織に声を荒らげるマサ。
しかし、すぐに言葉負けするマサ。
そんなマサを不憫に思ったのか、美樹がフォローをする。
「マサ、別に私はついでで、探検でもいいと思うよっ!」
「ついでじゃねーから!!」
「そうそう、別に気にしてないし」
「おまえらなぁ! だか…………」
不自然に言葉が途切れたマサだが、他の3人がそれを気にする前に、第三者の声が彼らの耳に届いた。
そして、4人の叫び声が校舎に響き渡った。




