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ゆめにっき〜もっと上に〜

作者: なむP


『姉ちゃん、あの上にね

とってもとっても急な坂道があって

たどり着いた先に雑貨屋さんがあった!

そしたら今度はもっと急になった

大きな坂道があって。その先には

捨てられたペット達が仲良く暮す

部屋があったんだ。

そしてまた坂道があったんだけど

今度は急すぎてのぼれなくって、

そこまでにして帰ったんだ…』



よほど楽しかったのか

妹は息を荒げて話す。



『また行きたいな』なんて

目をキラキラさせて話す。

話だけ聞くととても気味が悪い。



妹のお願いに折れたわたしは

車を走らせることになった。

まず一つ目の坂道。アクセル

ベタ踏みなのに進まないほどの坂道。



少し気を緩めると後ろに

下がってしまいそうだ。



一つ目の坂道の先には

妹の言う通り、雑貨屋さん。



一通り見終わった妹は次に行こうという。



二つ目の坂道は先ほどより

もっと急になっていた。



たどり着いた先にはたくさんの

動物たちが暮らしていた。

人は誰もいない。動物たちだけが

その部屋で仲良く暮らしていた。



三つ目の坂道はもう車では

登ることができなかった。

仕方がないので帰ろうというと

妹は『姉ちゃんだけでも登ってきて』

なんて無茶いうもんだから

妹をその場にいさせてわたしは

一人で登ることにした。



たどり着いた先は奇妙なゲームセンター



ここに来て初めて

たくさんの人がいる場所だった。

みんなどうやってここまできたのか

それだけが本当に不思議だった。



『みなさまご来場ありがとうございます』

館内放送が流れる。

みんな心なしかこれを待ってたかのように

にやりとして手を止める。



『さらなる上を目指す皆様へ…』

要約すると、さらに上に行くには

こっからあることをしなければならない。

それができた人のみがここから

上に行けますよということ。



ここから何をしたのかあまり

よくは覚えていないのだが



気づけばわたしと、40歳くらいの女性と

若い青年がいた。どうやらわたしたちは

上に行けることになったらしい。



また険しい坂道を登る。

もはや崖のようである。



次にたどり着いたのは

何もない部屋だった。




そこからまた登る。




『病室』と書かれた傾いたドア。

開けてみると、少し古い民家のような

作りであった。


ここで突然一緒にきた女性が何かを

必死に探し始めた。

いろんなドアを乱雑に開ける。



わたしと青年は驚いて後を追う。

一番奥の部屋で女性は見つけたようだ。



『あなた!』



この部屋は怪我や病にかかった人達が

自由に生きていい場所、

自由に生きて、自由に死んで。



女性の旦那さんは自分が

不治の病と知り、ひとりで

ここまで上り詰め、ひとりで

ここで暮らしていたという。



『ねぇ、帰りましょう。あなた、

一緒に帰りましょう』


ベッドに寝転がり首だけをふる。

『もう。動くこともできないんだ』



青年とわたしは担いででも

連れて帰る!と言ったのだが

女性は『もういい』といって

出て行ってしまった。



『ここまでくるの大変だったろ〜、

俺が来た時にはもう少し人がいたが

もうみんな先に行っちまった。

良くなって降りるものもいれば、

上に行っちまったやつもいる。

俺はもうそろそろ上に行く。

あいつはここまで俺のこと

探しに来てくれたんだな。

急にいなくなってごめんなって

伝えておいてくれ。』


そう言って彼は笑った。


どうしても連れて帰りたいと言うが

自分をおぶってこの崖降りれるのか?

と言われて言葉に詰まった。



それからしばらくいろいろ考えたが

いい案はなんにもでてこなかった。



『ではもう、行きますね』



泣く泣くここを後にしようとすると

『その辺にな、鍵があるはずなんだ。』

と彼は言った。



机の上を見るととても細い鍵があった。



『それを取ってくれないか。

これを持って死にたいんだ。』


手渡すと彼は微笑んだ。


『大事な大事な鍵なんだ。

ありがとう』



わたしたちは降りた。

妹を迎えにいく。

車に乗り家に戻る。



なんだかずっと、

ずっと。

心がぽっかりしたような

そんな気持ちになった。







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