NO.8『美コンテスト1』
「美コンテスト・・・それは、究極の美を求めるコンテストなのですっ!みなさんも大いに参加してくださいませ」
夕維が瑠華に宣戦布告した次の日のホームルームの時間。
二年A組の委員長である、黒く長いストレートな髪を三つ編みに結んだ松岡久美子が教卓に立ち、クラスのみんなに呼びかける。
そう、もうすぐあのコンテストが開かれるのだ。あれはむしろコンテストというか、競技。金持ちたちの醜い争いが起こるのである。
それを知っている瑠華はあまり乗り気はしない。
「なぁ、美コンテストってなんなんだ?」
瑠華の横の席で、うつぶせになったまま刹那は瑠華に問う。
「美コンテスト・・なんて美しいものじゃないわよ」
「何、それ」
「まぁ、あの委員長の話聞いとけば分かるわよ」
ふーん、と頷き、そのまま前を見る。
「参加は自由ですが、宮塚様っ!あなた様は出ていただけますよね?」
久美子は瞳を輝かせて瑠華をじっと見つめる。
「あら、なぜ?」
「なんたって宮塚様は去年のクイーン。結局、男子の方は宮塚様目当てで乱闘騒ぎになって決まりませんでしたけど」
「クイーンって?詳しく教えてくれない?委員長」
刹那がにこりと微笑みかけると久美子は頬を染めながら淡々としゃべる。
「はっはい、まずこの美コンテストではクイーン、キングの二人を決めます。そしてその二人はドレスやタキシードを着てお写真が撮れるのです」
「へぇ、じゃあ瑠華ちゃんがクイーンになったら、他の俺以外の男子が瑠華ちゃんと撮るの?」
そんなことどうでもいいでしょ、と瑠華は目で訴えるがまるで見もしない。
「はっはぁ、そういうことになります」
「それはやだな。夕維ちゃんなら、まだいいけど」
夕維ちゃん?こいつ、一日でそんな名前で呼べる関係になったのかよ。
「そっそうですか。ではルールを説明します」
久美子委員長はさっさと方向を変える。
「ルールは簡単。美コンテストです。まず参加者の中で誰が美しいかを決めます。それは一位から二十位まで決めます。そしてその二十人の中であるゲームをしていただきます。そして・・」
そう、ここからが大変なのだと瑠華は去年を思いだす。
「そのゲームは・・お化け屋敷とサバイバルゲームが混ざった超恐怖ゲーム。あっ、お化け屋敷というのはですね、調べたところ、なにやら布をかぶった人が出てきて、人に恐怖の概念を植えつけるというものらしいです」
調べたのかよ。瑠華は呆れる。まぁ、一生懸命なことだ。
「そしてサバイバルゲームというのは、深い森の中へ入っていき、敵を抹殺するというゲームです」
クラスからはえー、怖いという悲鳴が聞こえてくる。
まぁ、普通は金持ちなどとは縁の無い話だ。
「クイーンとキングには誰がなるかは分かりませんが、キングかクイーンになると学園ナンバーワンの称号を得ることが出来ます」
「学園ナンバーワンねぇ。瑠華ちゃん、よくそんなコンテストに出たね。ってかどこがコンテスト?」
「無理やりに決まってるでしょ。なんか、お化け屋敷とかの恐怖にも顔を崩さず冷静にお嬢様をみせれたらいいんだって。そういう意味の美コンテストよ。ちなみに去年は銃をつかった殺し合いだったわ」
「さすが、瑠華ちゃん。そういうの得意そうだものね」
「どういう意味よ。まぁ普通のお嬢様よりは出来るけど。あとはあの夕維さんね。あの時もものすごく怖かったし」
刹那はくすっと笑い、確かにと言った。
「ねぇ。夕維さんといつからそんなに仲良くなったの」
「言っただろ。落とすって」
「落とす?前から思ってたけど落とすって何よ」
刹那は少し驚いたように顔を顰め、にやりと意味深に微笑む。
「そういうとこは疎いんだ。そんなとこはお嬢様だね」
「悪い」
「全然?そんなとこがまたいいんだよ」
「あのね。話しそれたわよ。どうなのよ、落とすって」
刹那はぐいっと瑠華と引き寄せ、耳元で何かしゃべる。
「それはね・・・。俺に惚れさせるってこと。瑠華ちゃんも仲間に入る?」
「こっの・・」
大声を出そうとしてぴたりとやめる。全員の目が瑠華と見ていたのだ。瑠華はわざと咳き込み、にこりと笑った。
「気にしないで下さい」
そういい、刹那を突き放す。刹那はちぇっと舌打ちをし、また机に寝そべる。
「あんたって、ほんと最低」
「そりゃどうも。でも惚れられるんだからしょうがないじゃないか」
この自意識過剰。
ここの中で思ったことなのに、刹那は察知したのか、ありがと。と小声で言った。
本当に、よく分からない男だ。ただの女好きか、それとも何かあるのか。だが今のところはただの女好きにしか見えない。
「あ、俺そのコンテスト出るから」
寝そべったままそう言ったので、本気かは分からないが、その言葉を聞いた瞬間、瑠華は刹那の頭を拳骨で殴った。
次はこんどこそ、美コンテストの始まりです。
夕維と瑠華と女の争い。(夕維は刹那をかけた戦い)
レナもお嬢様の割にはがんばってます。
次回、お待ちくだされ・・。