NO.7『ライバルな姫君』
「ちょっと、瑠華。めんどくさい人が来たわよ」
レナはぼそりと瑠華に耳打ちをし、瑠華は頷く。もう絶対会いたくなかったあの女が目の前に現れた。
嫌味に取り巻き多くしやがって。
瑠華はにこりと微笑み、軽くお辞儀する。
「あら。居たのね瑠華さん。取り巻きが少ないからどこぞの貧乏お嬢様かと思ったわ」
「あなたも相変わらずで」
「うるさいわね」
この超がつくほど自己中心的なお嬢様。名前は華道夕維。赤い血のような髪と、その残虐さでついた別名『血の姫君』。三年A組の瑠華と同じクラスのお嬢様だ。まぁ一応年上だからこんな嫌味も黙って言わせている。
「それで、何か御用で?」
「あなたなんかに用なんてなくてよ。あぁでも、今度の『美コンテスト』楽しみね。今度こそ・・私が優勝いたしますわ。覚悟しておくのね」
「美コンテストね・・」
結局それを言いに来たのか。
瑠華は呆れてはいはい、と手を振った。
「まっなんですの、その無礼な態度は」
「あいにく、私に無礼もくそのないのですよ。優勝は、渡しませんよ。夕維さん」
夕維はまるで鬼のような形相をする。周りの取り巻きは怖くて何もいえないらしい。
「ふん。そういってられるのも今の内よ、瑠華さん。あなたなんかに絶対渡しませんから」
そう捨て台詞を残し、魔女のような高笑いを残して消え去った。
「あいかわらず高飛車な奴」
瑠華がそう言うとどこかで笑う声がした。その方向を見ると、やはり刹那だ。教室のドアの前に立ち
密かに笑っている。
「あら、刹那さん。何笑ってらっしゃるの」
「いや、女は怖いね。あれ誰?」
「・・三年A組の華道夕維さんよ」
「へぇ?そんな会社あったっけ。大して有名じゃないんだね」
こいつ、そんなに笑ってられるほど金持ちか?
華道って言ったら瑠華と並ぶ世界的に有名な電気製品系の金持ちだ。
「あら、華道を知らないとはあなたも世間知らずのお坊ちゃまってことかしら?」
「冗談」
刹那はにやりと笑い瑠華の傍に来る。瑠華は少し下がってじっと睨む。
「君よりはあんなことやこんなこと、知ってるけどねぇ」
こっこいつ・・・!
瑠華は平手で刹那の頬を殴ろうとした。だが軽くその腕は止められてしまう。それがなんだか腹立たしくてつかまれたままの手を強引に振り解く。
「このプレイボーイ男」
小声でそういうと聞こえたのか、聞こえてないのかしらないが、にこりと微笑んだまま返答はない。
「さてと、その華道夕維ちゃん?落としに行こうかな」
「なっどういう意味よ」
「そのままの意味だけど?だって俺、プレイボーイだし。瑠華ちゃん落とせなかったし。それの身代わり」
「みっ身代わりって」
聞いてたのかと瑠華は刹那を睨むが刹那はやはり平然といいながら廊下を歩く。
「だって、俺が落とせなかったの、瑠華ちゃんだけだもん。それって俺のプライドに触るし」
あぁ、腹が立つ。瑠華はここが何もないところだったらぶん殴っていただろう。
「夕維は気が強いわよ」
「なおさらオッケー。気が強い方が落としやすいよ?じゃあね、授業はさぼるし」
刹那はその台詞を残して、階段を上に上がっていった。本当に落とすつもりなんだろうか。
「しかも、落とすってなんなのよレナ、知ってる?」
後ろからレナはついてきている。金色の長い髪を揺らし、微笑みながら瑠華の傍へきた。
「何?瑠華」
「いや、なんでもない」
やっぱりやめておこう。瑠華は一人で納得し、教室へと戻る。
「え?ちょっと、瑠華?どうしたのよ」
「何にも無いって。さ、行こレナお嬢様」
瑠華はレナに手を差し伸べる。
瑠華にそう言われ、レナは嬉しそうに頬を赤らめ天使のような微笑みをしながら、瑠華の差し伸べた手を取った。
次回はとんでもない「美コンテスト」の始まりです。
あと刹那は夕維を落とせたのでしょうか。いや、落とせてたとしても、きっと瑠華には言わないでしょう。その理由は・・・まぁ、楽しみにしてくださると嬉しいです。