NO.5『やな奴1』
これは1・2と続きます。
次の日の朝、聖薔薇学園の二年A組はざわついていた。その理由は、瑠華が不機嫌だったからだ。席に座り肘をついている。
「おっおい・・・瑠華さんがまたご機嫌がななめでいらっしゃる。僕達でなんとかしなければいけないんじゃないか?」
「そうね・・あの人の機嫌を悪くしたら私達はこの学園で生きていけないもの」
A組の人間は口々にそう言いだす。
「ねぇ、どうしたの。瑠華。昨日から変よ?」
レナは気遣ってくれているが、瑠華の苛立ちは納まらない。なんたって今日あの東郷刹那というとんでも無い奴が転校してくるのだ。
「ったくそれだったら始業式の日に来いっての」
「え?」
「いや、なんでもない」
瑠華は小声でそういう。もちろんこんな会話を取り巻き達に聞かれるわけにはいかない。
「はい、皆様おはようございます。今日も何事もなくおこしになられたでしょうか」
担任のエレーナという外国人っぽい先生が入ってくる。だが外国人っぽいのは名前だけだ。顔は普通に三十過ぎの日本人のおばさん。
それだけの事が今日の瑠華には癇に障った。じろりと睨むとエレーナは場が悪そうな顔をし、金色の髪を触りながらさっさと話し始める。
「えぇっとですね、今日は転校生がいらっしゃいます。編入テストではなんと五百点中、四百九十三点を出しました」
周りがざわつく。瑠華も同じように驚いて目を大きく開ける。その点数は瑠華とまったく同じだったのだ。
「では、ご紹介します。名前は、東郷刹那さん」
そのエレーナ先生の声と同時ぐらいに扉が開く。瑠華が昨日見た通りの茶色い髪に銀のピアス。そして
整った顔。
クラスの女子は声を上げる。顔を赤くしてひそひそと話し出す。
「今ご紹介いただいた通り、東郷財閥の東郷刹那です」
自分でわざわざ言うか?
瑠華は呆れてじっと刹那を睨む。
「それでは、東郷さんはどの席に」
エレーナ先生がそう言った時、瑠華は刹那とばっちり目が合ってしまった。
「俺、瑠華さんの隣がいいです」
瑠華は特別扱いで一番後ろの席に一人だ。その横に少し離れてレナがいる。席順だけでも扱いの違いは明らかだ。
「えっ、宮塚さんの?」
「駄目?先生。いいよねぇ、瑠華ちゃん」
周りの目が一斉に瑠華の方を向く。
なんで隣に来るんだよ。
瑠華は心の中の声を必死に抑える。なんたって秘密を握られてしまったのだ。
「あら・・よろしくてよ、私はね。でもなぜ私の隣になど来たいのですか?」
「そんなの、美人が隣に居た方がいいからに決まってんじゃん」
瑠華は少し顔を赤くする。こんなの正面から言われたの初めてだ。普通でも相手からの告白は少ないのに。
「それはどうも」
「じゃ、決まりね」
刹那はかばんを瑠華の隣の机に置く。
いつもは物置にしてるのに、と瑠華は思いながら荷物をどける。
「よろしくね、偽瑠華ちゃん」
小声で耳元でそういうのだ。瑠華は殴ってやろうかと思いながらも笑顔で答える。
「えぇ、これから長い付き合いになるわね・・・刹那君?」
冷ややかに瑠華が言うとなぜが刹那は爆笑し、腹を抱えて机に顔を付ける。
刹那・・。ちょっと自己中に書きすぎてしまったかな?
まぁ、かっこいいから許すけど(多分ね)