NO.3『情報』
知的で美しい瑠華、まるで妖精のような可愛いらしいレナ。
この二人を見に来るファンも、いっぱいいる。
「本?まぁ、どんなのかしら。見てみたわ?でも・・分からないでしょうからやめとくわ」
そりゃ分からないでしょうよ。あたしが読んでたのは「勇気」っていう古本屋に売ってた本なのだから。
「えぇ・・そうしといて頂戴」
わざとお嬢様風にそう言うと、レナも笑いそれにつられて瑠華も笑った。
二人は仲良く赤い絨毯を歩く。
だが、こんな幸せな気分をぶち壊すのが、後ろの奴らだ。
約三十人の取り巻きが瑠華とレナの後ろからついてくる。
はぁ・・とため息をついた瑠華を、じっとレナは見つめる。そして後ろの取り巻き達の微笑みかける。
「ねぇ、先生に言ってきてくれるかしら。《西園寺レナは宮塚瑠華に話があるから、一時間目は休みます》ってね」
すると取り巻き達は慌てて教室へと向かおうとする。
「わっわかりました。すぐに伝えてきます」
瑠華はレナを見て苦笑いする。
「さすが・・・レナ」
「あら、それほどでもないわ」
いつもこのパターンだ。この名前を出すと担任たちは文句をいえない。二人の一声で、先生など簡単に辞めさせられるのだ。
「で?話って何?」
レナは微笑みながら、校舎の中の噴水の前に腰を下ろす。瑠華も続けて腰を下ろす。
「あのね、転校生が来るらしいのよ」
「転校生?誰よ」
「男の子らしいわ。同じ二年A組らしいわよ?」
「え、じゃあつまりお金持ちさん?」
この学園ではA・B・Cとクラスが分かれ、Aは瑠華やレナのような超大金持ち。Bはまぁ普通の金持ち。そしてCは小金持ちだ。つまりAについている取り巻きは、Bが少しで大抵はCだ。
みんな、媚を売ってなんとかAに行きたいのだろう。実際Aに指名されたB・Cクラスの人間は、Aに上がれるとも言われている。
「さぁ・・分からないわ。でも情報によるとかなりの美形らしいわよ」
「情報?ただの噂じゃないの?イモっぽいのが来たりして。感動だねぇ」
「そりゃそうかもしれないけど・・・楽しみね」
「それより頭がいい人来たら困るって、あたし」
レナはそれを聞いてあぁ、と頷く。
「学園一、知的で美しい・・・の知的の部分がなくなるものね」
「そうよ・・・苦労して試験では一番とってるんだから。とにかく気をつけるに越したことは無いわね」
レナはそうね、とだけ言った。
「それだけ?話は。だったら一時間目休まなくてもよかったんじゃないの?」
「あら、瑠華に教えてもらったのよ?一年の時」
『どうせ休むんなら、全部休めばいいじゃん』
「・・・そうだっけ?」
瑠華は思い出しながらもわざと目線をそらす。
「私、楽しかったわ、瑠華と友達になれて。私もいつもの空間に飽きていたもの。瑠華と友達になっていろんなこと教えてもらったわ」
「そっそう?」
瑠華は照れながら笑う。
実は結構嬉しいのだ。そんな瑠華を見て微笑むレナは、ゆっくりと噴水の傍のベンチから立つ。
「ね、飲み物欲しくないかしら。買ってくるわ」
「へ?レナなんかにさせれないよ、あたしが行くから座ってて」
「え、でもいつも瑠華にさせてるし・・・」
「なぁに言ってんの。いいから!」
そういい、自動販売機へと向かう。もちろんただの自動販売機ではない。コンピューターが喋って注文を頼むと言う変わった奴だ。
瑠華はゆっくりと歩いて行く。
この後起こることは、瑠華にとって籠から出れる、チャンスになるのだ。
そんなことを知らない瑠華は、のんきに鼻歌を歌いながら販売機へと向かった。