NO,1『家』
朝日がふわりと包み込むように差してくる。小鳥は美しい声でさえずり、草木はやさしく揺れる。こんな天国ともいえる部屋で、見た目だけはかわいらしい少女、宮塚瑠華はなにやらため息をつきながら本を読んでいる。
「・・・心の扉を開け・・・勇気があれば、大丈夫・・自信を持って突き抜けろ・・。馬鹿じゃないのか、これ」
瑠華は本を投げ、かばんに学校の用意を詰める。その容姿とは裏腹に、汚い言葉で瑠華は喋る。
瑠華は世界的に有名とされている宮塚財閥の一人娘。欲しいものは何でも手に入るし、何か特別に困っていることはない。だが、この頃思うようになってきたのだ。
その思いは、自立したい。この宮塚の家から、逃れたい。そう思うようになってきたのだ。別に何の不自由もない。けれど・・・本当の自分が出せないのだ。どうにかして自分を出したい、そう持った瑠華は、今投げた本「勇気」を読んで見た。だが書いてる内容は陳腐。
「ったく、何が突き抜けろっ!だよ。突き抜けれるかっつうの」
瑠華は椅子を足で軽くける。だがその瞬間ドアがなる音がした。
「瑠華?用意は出来て?」
「はっ・・・はい、お母様。出来ました」
漆黒の黒髪を梳き、赤いリボンの白い制服。金のバッチが光り輝いている制服を慌てて正す。
「今日はやっと始業式ね。ちゃんと宮塚の人間としてきちんと過ごすのよ?わかった?瑠華」
「はい。分かっています。お母様」
瑠華の母、梢はにこりと微笑む。天使のような笑顔がとても印象的だ。だが、それは瑠華にとってとても苦しいものなのだ。母の期待を裏切るようなことはしたくない。
けれど、自分の思いを消し去ることだけはしたくない。
「では、行って参ります」
瑠華はお辞儀をし、部屋を出る。どこまでも続く長い廊下を一歩一歩、歩調を正して歩く。
茶色い大きな扉を執事が二人がかりで開け、執事やメイドがいっせいに深く頭を下げる。
「いってらっしゃいませ、瑠華お嬢様」
と、いつもの感じで挨拶をする。
「いってきます」
そう言い、瑠華は黒いベンツの車に乗り込んだ。