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NO.15『甦る過去2』

 去年。

瑠華がまだ一年だった頃。もう、先輩までもが反論できなかった。完璧な頭脳。そして美貌。そして家柄。『宮塚』の人間ということで、周りからは媚びられ、お嬢様として扱われていた。それが、羨ましいと思う人間もいるだろう。だが、瑠華には邪魔な存在だった。普通の環境にどれだけ憧れたか。

 「別に、美しくなくていい。金持ちじゃなくていい。もっと、大事な物が欲しい」

そう思うようになっていたのだ。だからお嬢様の生活から抜け出してみたり、男言葉を使ってみたりしている。まぁ、男言葉を使うのは、地なのだが。

 そして、もう一つの難点。それは、宮塚の人間という理由が別の方向で関係している。世界的に有名となれば、潰そうとする輩もいる。

 そして、瑠華が一年だった夏の日。事件は、おきた。

 

 美コンテストの銃をつかった殺し合いのゲーム。もちろん、相手はコンピューター。普段ゲームセンターなどに行かないほかのお嬢様達は、相当苦労しただろう。だが瑠華は違う。何回も行ったことがあるので、多少は分かる。そして、見事クイーンに。

 ちょっぴり浮かれて、微笑みながら、制服に着替えていると、数人の男が勢いよく入ってきた。瑠華は腹を殴られ、意識を失い、そのまま倒れこんだ。

 よく分からない状況に戸惑いながら、何分かすると目が開いてくる。その時微かに聞こえた、女と男の声。

 「・・・美コンでは優勝さして差し上げたけど、それで終わらないわ。馬鹿な奴。信じちやってさぁ・・・。あんたなんか、大嫌いなんだから」

確か、そう言っていた。視界はぼやけていてよく分からなかったからそれが誰だかは分からない。でも、向こうは自分を知っているようだった。

「どうします?この女」

 「さぁ?適当にしとけば」

女の靴音が聞こえる。男ははい、とだけ答えた。

 やばい。

瑠華はそう思ったが力がまるで入らない。

「じゃあ、お相手さしていただきましょうかね?」

男は瑠華の手を伸ばす。制服をゆっくりと脱がせようとする。

 「なっ離せよこのボケ!!」

瑠華はなんとか力を振り絞って男を殴る。

 こんなとこで処女を奪われるだなんて、冗談じゃない。

「・・・ほんとにお嬢様なんですかね。その口調。見かけはお嬢様でも、殻をかぶっているだけかな」

「それがどうした。お前馬鹿じゃねーの。今は見えないけど、頭がすっきりしてきたらてめぇの顔が見えるんだぞ。そしたら退学や・・・もっと他の事も出来るんだぞ?あたしは」

 別に脅そうとかそんなんじゃない。ただ、本当のことを言っているだけだった。

「そうですね。だけど、あなたは今は目があまり見えないでしょう?耳も・・・あまり聞こえないはずだ。もう一発ぐらい殴った方がいいですかね?」

そういい、なんのためらいもなく、瑠華の腹を殴る。そのあまりにもためらいの無い態度に驚いて、一瞬力を緩めた。だから、腹の中心に、思いっきりあたってしまった。激痛が、瑠華を襲った。

 もうだめだ。

瑠華はその場に倒れこみ、意識を完全に失った。

 その後、どうなったかは知らない。気がつくと病院で、両親は何事もなかったように話をしていた。きっと、宮塚の人間にそんなことあってはならないと、洗い流したのだろう。

 『何か』は、きっとあった。でも分からない。周りは何もなかったと言うし、医者だって無言でどこかへ行ってしまう。

 よく分からない感情と、腹の痛みで、瑠華は泣いた。情けなくて、泣いた。どうなったのかも分からない、教えてもらえない恐怖が瑠華の頭の中を回って、回って、いいようがない恐怖と戦いながら生きていた。でも。

「考えても見つからない答えを、なぜいつまでも探さなければならない?」

 ふと、瑠華はそう思ったのだ。だがら、消した。記憶を、あの、情けない自分を。冷たい大人を。

 過去を、なんとか振り返らないようにしていた。だから、これまで生きてこられた。





「思い出して・・・いただけました?」

男の声に、はっと瑠華は我に返る。男はにこりと微笑み、瑠華に顔を近づける。

「悲しいですね。あなたは。まるで宮塚のおもちゃだ。そして、あなたがナニをされたのかも教えてもらえない」

 胸の鼓動が早くなる。冷たい汗が流れ、背筋が凍る。

「なんなら、私が教えて差し上げましょうか。それをした、張本人なんですからね」

 「あんた・・・・?」

「そう。私です。ある方に命じられ、言われたことを、やりました。それはあなたに精神的ダメージを与えること。なぜだと思います?」

 瑠華に精神的ダメージを与えたとしても、別に宮塚の財閥が崩れるわけではない。なら、なぜ?

 「お分かりになりませんか。それとも、恐怖で声が出せないとか?なんたってあなたの中で一番思い出したくないことを思い出したんですからね・・・」

 「うっうるさい。声は出る」

男は笑い、瑠華の頬に手を当てる。

「でも、動けないでしょう。体が固まっているでしょう?まぁ、そんなことどうでもいいんですけどね」

 微笑みながらそういう男はまるで、遊んでいるようだった。ただの、遊びをしている感じだ。

「で?私をここに呼んだのは、どんな理由かしら」

 睨みながら瑠華は男の手をどける。男は動けたことに驚いているのか、それともこの状況でそんなことを言えることを感心しているのか、どちらとも考えているような顔をした。

 「それはもちろん・・・あなたに消えてもらいたいのです、とある方が言っていました。ねぇ、宮塚さん。ここで消えてくださいませんか?生きていたって、楽しいこともないでしょう?なんなら、私が殺してあげますよ。あとね、あの時のこと、教えて差し上げますよ」

 「あの・・時?」

「そう、あの時。気絶した後・・・ですよ。誰も教えてくれなかったのでしょう?だったら教えてあげます。この、張本人である私が」

 なんだって?自分がしたことを教える?自分で。

 聞きたい。そうも思った。だがその思いよりも大きな、思いがあった。

 『怖い』。

聞いて、自分がどうなったか知りたい。でも、この本人から明かされるのは怖い。言わないで欲しい。

言わなくても、生きていけたのだ。

瑠華の困った様子に、男はにやりと微笑む。

「別に、あなたの意見など聞いてませんよ。教えるといっているのです。さぁ、目を閉じて。私に集中してください?」





さて・・あの女は?そして、男が瑠華にしたことは?

瑠華、絶体絶命のピンチ!どうなるでしょうか?

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