NO.13『お化け屋敷・・?』
「やだぁ・・・瑠華お姉さま怖いですわ」
数人の瑠華の後輩であり、そして宮塚の大切なお客様の娘達は、瑠華の傍にくっつきながらお化け屋敷という設定の部屋へと向かっていた。
このお化け屋敷は一グループに約五人で十分間の間、広い館の中へと入る。
「大丈夫よ。何かあったら私が守ってさしあげてよ」
「本当に?瑠華お姉さまに守られるなら、私襲われてもよくてよ」
周りの後輩は口々にそう言いだす。瑠華は呆れと哀れみの瞳で後輩達を見つめる。
「お待ちしておりました、第六グループ様。この中は大変暗くなっておりますのでお気をつけて。あと、結構な衝撃を受けるかもしれませんので、注意してください」
入り口にいた案内役の男は微笑みながらそういう。後輩達は顔を青ざめ、不安そうに下を見る。
「大丈夫よ。あなた、そう人を驚かすものではなくてよ」
瑠華は男の方を向き、宮塚、ということを前面に出す。すると今度は男の方が顔面蒼白になり、すいませんと謝ってくるのだ。
「さぁ、行きましょう。私についていたら大丈夫よ」
瑠華は微笑み、後輩達の手を引く。
「はい、お姉さま」
安心したように胸をなでおろしながら元気よく頷き、五人は中へと入っていった。
「あのぉ、東郷さん」
一方男子の方では、刹那も同じようにお化け屋敷の中を回っていた。刹那達は第五グループで、瑠華よりは先に入っていた。
「なんだよ」
刹那は不機嫌そうに答え、声のした方を向く。だがその不機嫌そうな顔に、他の男子はたじたじだ。
「なんで女子と合同じゃねーんだ」
刹那は一人でつぶやく。
そう、こんなゲーム、女子と同じじゃなきゃいみが無い。男子が一緒で悲鳴なんて上げてたらまさに笑いものだ。女子が悲鳴を上げて、それをかばったりするのがこのゲームの一番の楽しみなのに。
刹那が一緒に回りたいのはもちろん、瑠華。
「あっでも、あいつは悲鳴なんてあげねぇんか」
というか、逆に殴ってそうだし。
刹那は一人小さく笑う。
なんたって、あの宮塚のお嬢様だ。世界的に有名な、東郷と並ぶ名門。仲良くしていて損はない。見方につけておけば、これほど役に立つやつはいない、と。
あの瑠華に会うまでは、世間知らずのお嬢様を上手く丸め込んで、自分の手の内におさめようと思っていた。だが、噂とは遥かに違う、あの性格。
『東郷』という名だけで、周りは自分を見て見ぬふり。聖薔薇学園に来る前の学校なんて、普通の一般の高校だったら、周りは俺を見ない。先生は媚を売ってくるし、周りは俺をいないものとして扱う。万が一何かあったら済ませられないからだろう。
しかし、瑠華は違う。自分と同じ位置にいる人間、そして、あの物怖じしない性格。話していると心が安らぎ、なぜか安心する。
「ほんと・・・なんか予想外なことばっかりだよなぁ」
まさか宮塚のやつと、あんなに絡むとは。さっさと手の内におさめて、天下をとろうと思っていたのに。なぜかできない。
『冷酷な人間』。そういわれてきた刹那。なのに、それを瑠華に対してはできない。いつもおちゃらけた感じになってしまう。
「なんでだろ・・・」
刹那自身、まだ分かっていないのだ。
「しかし、あいつらどこにいるんだろ。おい!」
びくびくしている男子に怒鳴る。
「何分後に次のチーム入ってくるんだった?」
「え?えっと、五分後じゃ・・ないでしょうか」
五分ってことは、入ってきてからもう六分。ってことは。
「もう入ってるのか」
刹那は後ろをじっと見てみる。なんせでかい館だ。しかも廊下がとても複雑でよく分からない。
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