NO.12『美コン5』
「・・・えぇっと、刹那さん。これはどういうことかご説明願いましょうか?」
眉間にしわを寄せた瑠華は、王子様スマイルで済まそうとする刹那にくってかかる。だが今は取り巻きが後ろについている。ここで殴り倒すわけにはいかない。
「何って、何が?」
「だから、今からお化け屋敷というゲームなのだけれど、あなたのせいで行けないと言っているの」
聖薔薇学園二階、二年A組の教室の前で、瑠華と刹那は微笑みあっている。それが他の人間には怖くてならない。なんたって刹那の方は無邪気に笑っているが、同じく笑っている瑠華の顔は、明らかに切れている。これ以上怒らしたらたぶんこの教室は破壊、だ。宮塚財閥の娘を怒らしたらこの世の終わりとも言われているのだから。
が、その横にいる男も瑠華と同じ地位の男。宮塚に並ぶ財閥、東郷の御曹司である。だから、この状況を他の誰もとめられる事はできない。
「あのね、刹那さん」
「何?」
「近いのですわ、顔」
「なんで」
「それは・・・私の方が聞きたくてよ」
周りは冷や汗を流しながら見守る。
「なーに、してるの?瑠華、東郷君」
瑠華は救いの天使を見つけたように、声の方を向く。
「レナ!」
刹那はちっと舌打ちをし、にこりと微笑む。
「それでは、瑠華ちゃん?またお化け屋敷でね」
「二度と会いに来てくれなくてけっこうよ」
その言葉にまた周りの人間は固まる。
「もう、瑠華ったら、そんな怖い顔をしてはなりませんわよ。私は瑠華の笑顔が大好きなんだから」
その言葉に瑠華も、周りの人間もほんわかとした空気になってしまう。
そう、もはや最強な存在、西園寺レナ。こちらも瑠華と刹那の後に続く金持ちだ。そして、瑠華の秘密を知る唯一の大切な友人なのだ。
「もう、なんで突き飛ばさないの?」
もちろん小声でだが、レナは不思議そうに瑠華を見ながら問う。
「馬鹿言うなよ、こんなとこで突き飛ばしたりしたらそれこそ終わりだよ」
「東郷君は瑠華に気があるのかしら」
「まさか。あいつはただの女好きだよ。誰でもいいんじゃん」
「そう?瑠華にはなんかよく絡んでる気しますけど。それに、あんな状態で動けなくなっている瑠華を見たら、他の人間は幻滅したかもしれないわ」
確かに。
先ほどの現状は、刹那が瑠華に迫っていて、それをどかせようと頑張っていたのだが小声でばらすよ、と言われ動けなくなってしまっていた、もはや最悪の場面だったのだ。
「そうだけどさ・・まっいいじゃん。次のお化け屋敷を楽しもうよ」
その言葉を聞いた時、ほんの一瞬だがレナの顔が曇った。めったに見せない表情だったので、瑠華は驚いてじっと見てしまった。だがもう普通の顔に戻っていたので、安心したのだが、次の言葉で瑠華の不信感はさらに高まった。
「そうね。楽しみましょう。でも、そう簡単には・・・行かないかもよ」
その言葉がなんだか意味深で、よく理解できなかったが、瑠華は答える。
「そりゃあお化け屋敷だものね。でもたっ楽しみましょうよ、レナ姫?」
冗談っぽく言うと、レナはいつもの微笑で、えぇ、と言い、場所へ向かう。
だが、本当は楽しみになんかするとこじゃなかったのだ。この後のお化け屋敷も、サバイバルも。
この後、瑠華は信じられないことに遭遇するのだ、そして、過去を・・思い出してしまうのだ。
これは瑠華には忘れられないものになるだろう。
それがいいものじゃなくても。
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