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NO.11『美コン4』

 空砲の音が、聖薔薇学園内に鳴り響く。

「それでは!ようやくはじまりました、第七十回美コンテスト。今回の出場者は八十五人!果たしてキングとクイーンになるのは誰でしょうか」

 アナウンスが流れ、参加者は着替えの場所へと進む。一般の参加者は特別のチケットがなければ入れないようにしてある。じゃないと大騒ぎになってしまうからだ。

 特別のチケットの枚数は全部で五十枚。このぐらいなら騒ぎにはならないだろう、とされた。

 「瑠華様っ!こっち向いてくださーい!」

それでも一般人はカメラ片手に騒ぎまくる。着替え室へ向かおうとしていた瑠華は、軽く微笑みを返す。それだけで男女関係なく声を荒げる。

 まるで、芸能人の握手会だ。

 周りの人間に道をあけられながら、真ん中を通っていた瑠華の目に、夕維の姿が瞳に映った。当然、何か言われるだろうと覚悟をしたが、夕維は瑠華の姿を見ると、まるで逃げるかのように去っていく。当然理由なんて知らない瑠華は、よく分からなかったが、そのまま道を通って一番に着替え室に。そこにはそれぞれが用意したメイクアップアーティストや、スタイリストなどが辺りをうろついている。

 「瑠華様、はじめましょう」

「えぇ」

そういい、スタイリストは、着々とドレスを着せる。

 もちろん、一人一人個別の部屋だ。

外ではまだアナウンスが流れている。

「さて・・ただいま姫や王子様達はお着替え中です。もうしばらくお待ちを・・・」

美容師が髪を結っている間に、スタイリストはドレスを着せる。瑠華一人に約五のスタイリストがつく。そのぐらい、大切に扱わなければいけないのである。ドレスも、瑠華も。

 「それでは・・・できました。まぁ、今まで見た中で一番お美しいです・・」

スタイリスト達も驚き、その仕上げにうっとりとする。

「ありがとう」

瑠華は笑い、そのドレスのまま、外へと出る。この時にはもう、四十分は経過していた。だが、これはしょうがないのだ。

 「でっでは、仕度が整ったようです」

司会者は待ちくたびれていたのか、少し木をむいていたらしく、チョーネクタイをきつく縛りなおす。

「まずはクイーン候補であり、昨年クイーンに輝いた、宮塚瑠華様の登場です」

 司会者が名前を言った途端、一般人たちは歓喜の声を上げる。

「では、ご登場していただきます。宮塚様、どうぞっ!」

 司会者の声と共に、瑠華はゆっくりと動く。その瞬間、空気が変わる。風向きまで変わった気がした。

 他の影で見ていた参加者や、もちろん一般人も、言葉をなくす。誰一人、瑠華の姿から目を離せなくなっていた。

素人目にも分かる、高級なダイヤ。そして、漆黒の髪によく映える、細かいレースが使われた純白のドレス。

まるで、『異世界の住人』。

 『アルテミス』の異名を持つ、聖薔薇学園の中で最も美人とされている、その真の姿が今公開された。

 はっきりと、その力の違いを見せ付けただろう。

 周りの参加者も戸惑うばかりだ。

登場から五秒後、一盤の客からは今まで以上の歓喜の声があげられた。

「いっいやぁ、さすがは、えっと、昨年のクイーンっ!すばらしいです。なんというか、言葉が見つかりません」

 司会者、仕事しろと瑠華は横目で睨んだ。


 瑠華が一番目立っていたせいで、他の参加者を見てもいまいち迫力が感じられないと思うのは無理ない。

「瑠華、すごかったわぁ」

 レナがドレス姿のまま、瑠華へ飛びつく。

「ありがと。レナも可愛かったわよ」

桃色の妖精のようなドレスに、金の髪はよく似合う。瑠華はこういう可愛らしいのが好きだ。着ようなんて思わないが。これはレナが着るから可愛らしいのだ。

「これでこのコンテストでは瑠華が一位に決まりね。男子の方はどうなのかしら」

 男子、ね。

「さぁ」

本当は分かっている。あいつだろう。投票なのだから、決まってる。そんな瑠華達の所に、アナウンスの音が聞こえる。

「王子様のコンテストの結果では、一位東郷刹那様ですっ!いやぁ、さすがですね。姫様の方は、これはもう誰も反論できないでしょう。あのドレスを見事に着こなした、宮塚瑠華様ですっ!」

 その声とともに、一位である、瑠華と刹那は舞台へと上がる。

 お互い微笑みあってお辞儀をする。隣同士になった時、刹那はぼそりと小声で瑠華に問う。

「さすがだね。あれ見た途端、俺言葉失っちゃった」

「あっそ」

「冷たいなぁ」

「なんであんたも一位になってるのよ」

刹那は得意げに笑う。

「俺以外に、一位取れると思った?それこそありえないでしょ」

 出た、自意識過剰。でもこれを言って別に変に思わないのが逆にむかつく。

「この後のサバイバルゲームとお化け屋敷・・・絶対に負けないからね」

「まっ、男子と女子で違うからさ。お手柔らかに。きっとクイーンになれよ、俺もなるからさ」

 そういい、瑠華の手に口付けをする。その場面を見た客は大騒ぎだ。だが泣く人間はいなかった。それは相手が瑠華だったからだろう。

 瑠華は怒りを胸の中へ押し込め、にこりと笑った。

「がんばりましょう」

そのいい、向きを変え、舞台裏へと向かった。



 

 「予想どうりね」

女の声が、暗い倉庫の中を響き渡る。

「やはり、あいつが一位だったわ、宮塚瑠華」

 次に男の声が聞こえる。

「どうします?やりますか?」

「いえ、いいわ。今回は一位にさしといてあげる。美コンテストなんかで私の価値は決まらないわ。お楽しみは後半からよ」

 にやりと笑い、女は男に指示する。

「あいつは?夕維は?」

「今は特に何も」

「あいつも使えないわね。いいわ、処分して」

「ですが、華道をつぶすのはおしいかと・・・」

 その瞬間、大きな物音が響き渡る。

「・・私に、口答えする気?」

男は腹を押さえながら深くお辞儀し、申し訳ありません、とだけ言う。

 「待ってなさい・・・瑠華。あんたには苦痛を味合わせてあげる」

 女は甲高い笑い声を残し、倉庫から出て行った。

あれは誰でしょうか?その正体はもう少ししたら分かってきます。

 次回はお化け屋敷とサバイバルゲーム。ですが、そんなに簡単には行きません。次はどんな事件が待っているでしょうか?お楽しみに。

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