尋問開始
尋問室は殺風景という言葉とは程遠かった。
何故か部屋が朱一色に塗られており、薄暗さと混合して不気味。プラスチック製の椅子と鉄製の机がただただそこにあるだけの空間だった。
まだ科学者は来ていない。椅子に腰かけ、組んだ足をぶらぶらさせながら無駄な時間が十数分ほど過ぎた。
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
イライラする。なぜこんなにも遅いんだ。尋問型ではないので奴らのルールは知らないが、尋問官をここまで待たせる理由は何なんだ。
今日で何回目かも分からないため息を長めに吐きながら舌打ちすると、背後からため息が聞こえた。勇珠は足元に向けていた目線をバッと音源に向ける。
後ろには誰もいない。気配もない。何かがいた痕跡もなく、朱が自分の影を作っていた。気のせいか、顔を戻すと向かいの椅子に人が座っていた。
思わず肩が飛び上がる。いつから居たのだろうか?
薄汚れた白衣、無駄に大きいゴーグル、肩まで伸びた黒髪、その髪には精神的にショックを受けたことを表すかのように白髪が黒に線を作っていた。
男は腕を組み、目を細めた。
「いつから居たんだって顔してるな」
口元は薄く緩まっており余裕の表情だ。おそらく何度も尋問されているのだろう。勇珠は表情を変えず任務を遂行した。
「お前がA級危険犯罪者カズヤ=アサクラで間違いないな?」
男はうなずいた。目はまだ細い。
「俺の質問に答えろ。返答によっては強硬手段を取らせてもらう」
威圧的に言うが、男の目は未だ細い。
「うん、素直に答えてやるよ。俺はこういうの慣れてるからさ」
やはり。
「俺は上からお前が結成した組織に関しての尋問を頼まれている」
「うん」
「俺の質問にはウソ偽りなく答えろ」
「うん」
いちいち「うん」と返事されることが癪に障るが、任務に感情を押し付けることがあってはならない。
「まず、お前が造った人造人間、あるいは改造人間についてだ。報告書には正確な個体数が書かれていなかった」
数を言え。その具体的な改造方法も吐くように。
そう言わなくとも男は何が聞きたいか分かったらしい。いつも通りの質問なのだろう。
「うん、教えてあげるさ」
何から話そうかなぁ、とまるで旧友に思い出話を語ろうとするように口元に手を当てた。
「まず、俺が造るのは人造人間だけだよ。改造はグロイからやらないんだ。でも、最初らへんに造ったのが改造で2体だけ。そのあと組織に依頼された人造が5体。そんで趣味で造ったのが1体。あと自分の組織で6体。たぶんそうじゃないかな」
ニコニコと話している。
脳内で尋問チェックリストにチェックした。