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北極星に  作者: A4クリアファイル
アルコル
1/3

スパイ型人造人間 勇珠

 日本は要塞国家である。

アジアに位置する島国でその列島は東アジアを太平洋から遮断する要塞として昔から知られてきた。その島国は戦争に間接的に関与し、あるものを造り出している。

 リズミカルにブーツを鳴らしながら歩く男、勇珠「ユウダマ」もその一つだ。

彼は人間ではない。今の時代、最も強力といわれている兵器は核ではなく「改造人間」「人造人間」だ。彼らは科学組織「ポラール・シュテルン」によって開発された新兵器である。                  

 

改造人間と呼ばれるものは生粋の人間を組織の科学者があらゆる物を体に組み込ませ、対戦闘用にリメイクしたものである。

 対して人造人間は、人間の女性に開発した精子を胎内の卵子と受精させ、生まれた子供に目的用途に合った神経に刺激を数年与え続けたものだ。勇珠は洞察力、瞬発力、そして自律神経の全てを3年間刺激し続けられたスパイ型の人造人間である。

 

さて、我々は先ほどからこの男を勇珠と呼んでいるが「A-Jアキタ 180502」が彼の本名である。人造人間には名前ではなくコード名が与えられる。しかし、スパイ型の仲間とつるんでいるうちに彼はいつの間にか勇珠と呼ばれるようになった。

 

 彼がいるのはポラール・シュテルン本部の地下214階の廊下。

今回は任務ではなく、A級危険犯罪者の尋問だ。スパイが尋問官まがいのことをするのは極めて少ない。本来ならば尋問型の人造人間、または攻撃力を持つ改造人間を使うが勇珠の組織への行き過ぎる忠誠心が上層部の耳に届き、偶然抜擢された。

 A級危険犯罪者というのは組織の思想と志に対抗する兵器を開発した者のことを指す。今回、勇珠が尋問する者は極めて悪質な科学者らしい。なんでも、ポラール・シュテルンの元幹部だ。しかも組織に対抗すべく、最新型の人造人間を陰で開発し実験を重ねてきた頭の切れる科学者。しかも、ポラール・シュテルンに対抗する別の組織を立ち上げた罪にも課せられている。それだけ危険な人物なので、名前も顔も功績も公開されていない。

 

 きっと目の下に隈ができているような男に違いない。勇珠は尋問室に向かう間に案内役の人間からこの話を聞いてそう思った。どうやらこの人間はその科学者のことを深くは知らないようだ。まあ、自分もそうなのだが。

 不意に案内役の人間が止まった。勇珠も止まる。この先が尋問室らしいのだが、どうやらこの人間はここから先に行くことを許されていないらしい。

 この先は一つの道になっているからわかるだろう。人間はそう言って元来た道を戻った。

 勇珠は長ったらしい廊下を歩きながら案内役の人間に心の中で人間らしく扱ってくれたことに感謝を告げた。

 



 尋問室まであと数歩。



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