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正当な探偵を求める水理高等学校

推理は全くありません。雷華がゲストで出てます

 謎の三つの殺人事件が発生していた、水理スイリ高等学校。

 その事件を解決すべく、較達が潜入した。



「あれ、ヤヤじゃん。どうしてここに居るんだ?」

 登校中の較達に二人の中学時代のクラスメイト、赤芽アカメ雷華ライカが声を掛けた。

「雷華の学校ってここだっけ。あたし達は、謎の連続殺人事件の調査に来たの」

 良美の答えに雷華が手を叩く。

「そういえば、特別な転校生が来るっていってたけど、そういう事だったのか!」

 較が言う。

「お願いがあるんだけど、放課後にでも殺人現場を教えて欲しいの」

 雷華は、あっさり頷く。

「良いぜ。でも、あらかた警察が調べていったぜ」

 良美が胸を張る。

「甘い、警察のずさんな捜査では、出ない証拠を発見して、解決する。それが学生探偵の醍醐味」



 放課後、雷華に案内されて、較達は、第一の殺人現場に到着した。

「ここが、最初の殺人があった理科室。当初、首吊り自殺だと思われていたけど、本人だけでは、出来ない結び目から他殺だと解った。しかし、この部屋が密室だったから不可能犯罪だって警察が騒いでいたっけ」

 雷華の説明にやる気を燃やす良美。

「密室トリック、がぜんやる気が出てきた!」

 そんな中、較が鞄の中から意味不明なアイテムを取り出すと現場の四方におくと、それから伸びた線を液晶ディスプレイに繋げる。

「それは、何?」

 雷華の質問に較が入力をしながら答える。

「過去を見る装置。間結や零刃が使っているのを借りてきた。昔と違って、画像については、科学技術を使えるから簡素化が出来たって」

 較がスタートボタンを押すと、深夜の学校での事件の一部始終の再現映像が流れる。

「仕掛けは、意外と単純だね、ドアを閉めることで、首を絞めていたロープが締り、それを利用して、密室トリックを完成させたのか」

 意外な展開に言葉が無い良美と雷華を気にせず、較が一人納得して、記録から、証拠に成りそうな点を抜き出してメモしていく。

「どんな理屈で動いてるのよ!」

 良美が装置を指差しながら怒鳴ると較が答える。

「現在に残っている情報から過去情報の映像を作り出す装置。調査には、けっこう使えるんだよ。一流所だと、こんなもんいくらでも誤魔化せるけどね」

 雷華が、呆れた顔をして言う。

「八刃の仕事をさせられている雷斗ライトが、よく愚痴ってたっけ、八刃がその気になればこの世の中の大半の事は、解決するって」

「八刃の技術があれば、どんな難病も、戦争、貧困だって救えるかもね」

 較の言葉に雷華が真直ぐな瞳で聞き返す。

「それなのに、何で何もしないの?」

 較が苦笑する。

「一般人にとって神様は、崇める存在であり、実在したら駄目な存在なんだよ」

 眉を顰める雷華。

「意味が解らないよ」

 それに対して良美が言う。

「あたしは、ヤヤがどんなに凄くても一方的に頼っているつもりは、無いよ」

 その言葉に雷華は、気付いた。

「それって、つまり八刃は、人と同じでありたいって事?」

 較が頷く。

「神様に言うとおりにすれば全て大丈夫な世界があったとして、それに頼りきる世界は、神様に支配されている事になる。そして、神様は、孤独になる。世界平和なんて物より自分達が大切な人達と当たり前に暮らせる世界を望む我侭集団が八刃なんだよ」

 雷華が、肩を竦める。

「面倒な連中だね」

「そう思うなら、普通に推理しろ!」

 良美の言葉に面倒そうに較が言う。

「了解、次は、この方法を使わないよ」



 次の現場、柔道場について雷華が説明する。

「次の事件は、ここで柔道部の男子部員が死んだ。死因は、畳に強打された事による脳内出血で、練習中の事故とも取れるんだけど、相手は、不明。放課後なんだけど、こっちは、容疑者が多すぎて、犯人がまだ特定されていない」

 良美が拳を握り締めて言う。

「今度こそ、僅かな証拠から犯人を割り出す、推理をしないとね!」

 やる気を再び燃やす良美を横に較は、呪文を唱え始めた。

『白い風よ、ここに亡き者の思いを結べ。白き遺言』

 呪文に答えて、死んだ学生の亡霊が現れた。

『監督、すいません! キャプテンには、強引に迫られて関係を続けてただけなんです! 僕が愛しているのは、監督だけです』

 亡霊の言葉に較が頬を掻きながら言う。

「ねえ、ここの監督とキャプテンって、男性だよね?」

 雷華がかるく引いた表情をして言う。

「噂は、あったんだ、柔道部は、同性愛者の集団だって」

 呆れた顔をして較が言う。

「同性愛者同士の痴情の縺れね。警察に事情を流せば、勝手にアリバイの確認と自供をとってくれるでしょう」

「ヤヤ!」

 良美が再び怒鳴ると較は、面倒そうに言う。

「言われたとおり、さっきの装置は、使わなかったよ」

 良美が畳を叩き言う。

「とりあえず、座りな!」

 較が渋々座ると良美が言う。

「少し考えれば、一般人が行う捜査方法で推理しようとしてるのが解るでしょうが!」

 較が遠くを見て言う。

「あちきは、そっちの担当じゃないから。そっちは、零子さんの事務所の下の人の担当だから」

 良美が大きくため息を吐く。

「そうだった、ヤヤは、そういう人間だった」

 雷華が不思議そうな顔をして言う。

「どういう意味だよ」

 良美が苦虫を噛んだ様な顔をして言う。

「基本的に乱暴で攻撃的。道を塞ぐトラップは、破壊して進むタイプって事」

 雷華が意外そうな顔をする。

「あたしは、どっちかと言うとヨシの方が乱暴だと思っていたけど違うんだ」

 較が遠い目をして言う。

「ヨシは、けっこう形式美を大切にするタイプだよ。あちきは、結果を大切にタイプでもあるけどね」

 良美が睨みながら言う。

「とにかく次こそは、まともな推理をするんだからね」

 較は、大きなため息を吐いて言う。

「解ったよ」



 最後の現場、屋上に来て雷華が説明する。

「ここの事件が一番謎なのよ。沢山の目撃証言があり、確かに女子生徒が突き落とされたのに、犯人の痕跡が全く無いから」

 肩を竦める雷華。

「今度こそ、推理でその謎を解いてみせる!」

 闘志を燃え上がらせる良美であったが、較が屋上の一点を見て言う。

「盛り上がってるところ悪いけど、これ霊障だよ」

 良美が顔を引きつらせている間に較が見ていた所を指差して言う。

「雷華だったら集中すれば見えると思うよ」

 雷華が較の指差した一点に気を集中すると驚いた顔をする。

「本当だ。あの顔からして、道連れを求める悪霊だね。それも既に何人も道連れにして、常人でも目撃可能な存在になった複合霊だね」

 良美が顔を引きつらせて言う。

「どうして雷華にそんなが解るの!」

 雷華が昔を思い出すように言う。

「吸血鬼って、よく悪霊の類を使役してくるから、自然とそっちの知識もついたんだよ」

 悔しそうにする良美の肩を叩き較が言う。

「残念だけど霊障じゃ、まともな推理は、出来ないよ」

 良美が霊の居ると思われる方向を向いて怒鳴る。

「あんたも、あんたよ!」

「ヨシ、若干左」

 較に指摘に従い、少し方向を直して良美が言う。

「死んでまで、他人の道連れにしようなんて根性が情けないのよ! 死んだんだったら、大人しく成仏してやり直しなさいよ!」

 良美には、見えないが、悪霊達が怒り、憎悪の手を良美に伸ばし、地上に引っ張り落とそうとする。

 しかし、良美がその力を感じて怒鳴る。

「一人で成仏も出来ない奴等に、あたしが力負けするとでも思ったの!」

 激しい引っ張り合いが開始する中、雷華がのん気に質問をする。

「前から思っていたんだけど、悪霊とかって本当に人間の魂なのか? あたしには、とても信じられないんだけど」

 較が肩を竦めて言う。

「単なる残留思念だよ。魂の存在は、八刃でも色々と見解が異なるんだけど、すくなくともさっきの亡霊も含めて、無意識な術で空気中の電気信号等を媒体に実行されている式神の類とされているよ」

 そんな応答している間に良美が複合霊を投げ飛ばし、無事に全ての事件を解決してしまったのであった。

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