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フィニッシュガールズ  作者: 鈴神楽
外伝:VS八刃編
20/21

希望の為に動く者達

夜襲、そして、新たなる賭け。ヤヤは、無理難題をどうクリアするのか?

 二日目の夕食。

「今日は、襲撃が無かったな?」

 ある程度、元気になった良美が食事を食べながら言うと較が面倒そうに言う。

「多分、夜襲を仕掛けてくるよ。昼間からこっちの動きを探っていたからね。そういうわけで、今夜は、眠れないのは、覚悟してね」

 雷華が平気そうに言う。

「任せておいて、吸血鬼相手にする時は、徹夜は、デフォルトだったから慣れてるよ」

 優子は、辛そうにスープを啜っていた時、窓から侵入者が現れた。

『我は神をも殺す意思の持つ者なり、ここに我が意を示す剣を与えよ』

 その呪文に答え襲撃者の手に神威カムイと呼ばれる剣が生まれる。

 較は、冷静に動く。

『オーディーン』

 手刀でその神威を弾く。

 そして視線は、侵入者を見る。

「中学生?」

 優子が驚きに声を上げる中、良美が言う。

「神谷の所の百剣オケンじゃん。お前が今度の襲撃者か?」

 それに対して百剣が鋭い視線を見せて言う。

「馴れ馴れしくするな! 俺は、そいつの命を狙っているんだぞ!」

 それに対して較が鋭い視線で言う。

「出来ると思ったの?」

 怯む百剣。

 その時、空間が歪み、新たな襲撃者が現れる。

『血の盟約の元、一刃が求める、戦いの角をここに表せ、竜角槍リュウカクソウ

『ガルーダ』

 較が手のふりで生み出した突風で、その現れた槍、竜角槍を持った先ほどの少年と同じ年の少年を吹き飛ばす。

「こっちは、一刃カズバかよ」

「やっぱ俺達だけじゃ無茶ですよ。神谷の長」

 霧流一刃の言葉に、優子の直ぐ後ろから返事があった。

「そう簡単に諦めるな。勝つ為の策は、ある」

 較は、振り返るとそこには、先ほどまで居た筈のない男、あの会議室にも居た神谷の長が居た。

「やらせるか!」

 雷華が咄嗟に気を籠めた木刀を振るうが神谷の長は、気迫のみでそれを弾き返す。

 較は、全神経を神谷の長に向けて言う。

「まさか、神谷の長がこんな所に来るなんて思いませんでした」

 それに対して、神谷の長が頷く。

「見事な位置取りだ。ここは、日本といえば日本だが、他の国との領土問題が複雑に絡み合っている。ここに長クラスの人間が移動すれば問題になるだろう。しかし、短い時間だったら、誤魔化せる」

 汗を拭う較。

「八子さんが協力しているって事ですね」

 神谷の長は、一刃を指差して言う。

「霧流の長の奥方からの進言だ。白風の次期長と本気でやるあうチャンス等そう無い。自分達の次期長達にこれ以上無い経験をさせられると」

「どういう事ですか?」

 較の質問に神谷の長が答える。

「正直な所、今回の件は、この娘が淫虫の魔王の種虫に屈服しないという前提ならお前に任せても構わないと思っている。だからこそ、霧流の長の奥方の提案も十分考慮に値した。ルールは、簡単だ。これから百時間以内にお前がこの二人に預けた護符を破壊しろ。それが成されない時は、私が再びここにやって来て、この娘の命を絶つ」

 冷たく鋭い言葉。

 同時に百剣と一刃が部屋から抜け出していく。

 較が舌打ちする中、神谷の長が言う。

「壊すつもりでやってもらって構わない。霧流の長の奥方にも了解を得ている。この程度の事で壊れるのなら、八刃の家の長には、到底なれないからな」

 優子の首に手を当てて言う。

「この手が再びこの娘の首に当たらぬように頑張るのだな」

 そして消えていく神谷の長。

「くそう! なんだって言うんだよ。次ぎ来たら、やっつけてやろうぜ」

 較が首を横に振る。

「無理。あまりおおきな事をしてないけど、間違いなく三強と呼ばれるお父さん達に準ずる力を持った人だよ。最強の空間移動能力を持つ八子さんまで力を貸したとなれば防ぐことなんて不可能。あちき達に出来るのは、百時間以内にあの二人から護符を奪い、破壊することだけ」

「なに、実力は、ヤヤより劣るんだろ? 何とかなるさ」

 良美は、気楽に言うがヤヤは、複雑な顔をする。

「一緒に行動してくれてたらね」



 屋敷の近くの森で一刃と較が遣り合っていた。

『ドラゴンサンダー!』

 一刃の槍からヤヤに向かって雷が降り注ぐ。

『カーバンクルハンドミラー』

 最小の力で雷を全て地面に逃がすと較は、一気に間合いを詰める。

 だが、一刃が直ぐに逃走に走る。

 追撃に移ろうとした較だったが舌打ちして屋敷に戻る。

 そこでは、雷華が必死に百剣の剣を防いでいた。

「ヤヤ、いい所に来た!」

『ヘルコンドル!』

 較の放ったカマイタチを大きく避けてそのまま逃走する百剣。

 大きく息を吐く雷華。

「あのガキ共、意外と強いじゃ無いか」

 較が周囲を警戒しながら言う。

「次期長なのは、血筋だけじゃないって事だよ」

「意外と手間取っているな」

 優子のガードをしていた良美の言葉に較が頷く。

「普通に戦えば二人同時でも勝つ自信は、あるけど、別々に動かれたら、一方に関わっている間にもう一方がこっちを襲撃してくる。護符の奪回がなければ護りに徹する事が出来るのに」

 悔しそうな言葉に良美が言う。

「何時のヤヤらしくないぞ。こういう条件だから神谷の長がやらせたんだろう」

 苦笑しながら頷く較。

「そうだね」

 そして優子が時計を見る。

「あれからもう九十時間。残り十時間です。もう無理です。ここは、大人しくして、あの人が来たら……」

「同じ事を言わせないでよ、あちきじゃあの人の襲撃を防ぐのは、不可能だから駄目」

 較の言葉に優子が言う。

「でも、これ以上、雷華達を危険な目に合わせるなんて……」

 優子が視線を向けた先には、幾つもの傷を作った雷華が居た。

「自分が死ぬかも知れないって時に、人の傷の心配するんだから本当に人が良いな。だから、やってるんだけどな」

 雷華の言葉に良美も頷く。

「ヤヤ、もう手が無いのか?」

 それに対して較が言う。

「奥の手と行きますか」

「あるのか?」

 雷華の言葉に較が頷く。

「あの二人が離れた位置に居るから使える奥の手がね」



 森に流れる川で喉を潤す百剣。

「白風の次期長を出し抜き、あの女を殺せば、俺も千夜さんの代用品じゃなくなる」

 一文字家に嫁入りした叔母の千夜に代わって次期長になった百剣は、周りから代用品と呼ばれる場合もあった。

 それを嫌い、必死に実績を上げようとしているときに飛び込んできたこの話に百剣は、チャンスだと思い、必死に戦っていた。

「そういうのを意識し過ぎると駄目だって言われなかった」

 較の言葉に驚き振り返りながらも神威を振るう。

 較は、紙一重の所でそれを回避していく。

「逃げないの?」

 較の言葉に悔しそうな顔をする百剣。

「あんたこそ、今頃、一刃の馬鹿が屋敷を襲撃してるぞ」

 百剣が油断していたのにも訳があった。

 いま百剣が居るところは、屋敷から大きく離れている。

 この距離を戻っても一刃の襲撃は、防げない。

 だからこそ無いと思った逆襲撃だったのだ。

「連絡は、密にとれって言われてなかった?」

 較の問いに百剣が神谷の長に同様の事を言われたのを思い出しながら言う。

「関係ない! 一刃の気配位解る!」

 較は、神威の攻撃を掻い潜り、胸に手を当てる。

『バハムートブレス』

 吹き飛ぶ百剣。

 地面に叩きつけられた百剣に近づき、護符を取り出しながら較が言う。

「離れすぎだよ。ここまで離れていたら、連携が取れない。今回の策の失敗は、そこだよ」

 そして較は、戻っていく。



 一刃は、構えを解き、竜角槍を戻して、護符を取り出す。

「これを渡して置いてください。痛い思いをするのは、嫌ですから」

 とっとと逃走を開始する。

 護符を受け取った良美が言う。

「あれは、完全にヤヤに苦手意識をもってるな」

 そんな中、較が戻ってきて言う。

「根性がないな。もう少し、頑張れないと」

 そして、雷華が言う。

「しかし、よく上手く言ったな、優子を連れて一方の襲撃に向かうなんて方法が」

 較が肩を竦めて言う。

「あの二人って仲良くないからね。もう少し連携がとれていたら、こっちの考えを察知できて、逃げに徹せられたのにね」

「何とかなりましたね」

 小さく安堵の息を吐く優子。

 そして較が言う。

「神谷と霧流もね。さて、今まで話の発案者、間結がこのまま動かないなんて事無いだろうし、物凄く深い作戦をしかけてくるぞ」

 残り時間が丸一日を切ったが、較達の試練は、これからが本番なのかもしれない。

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