開放されるロウアマクサシ学園
今回は、軽めな教祖様話
その学校は、カトリック系の宗教学校、ロウアマクサシ学園。
敬虔なクリスチャンが多く在籍する学校である。
しかし、新しい生徒会長になってから、その学校の雰囲気が大きく変わっていった。
「今度の学校には襲撃は、無いよね?」
良美の質問に較が自信たっぷり頷く。
「こないだ襲撃してきた組織の本部潰して、幹部は、全員再起不能にしたし、構成員とその関係者全員に少しでも反抗したら、次は、関係者含めて全滅させると脅しの手紙等を送った。相当な組織じゃないとあちき達と知って、喧嘩を売ったりしないよ」
「相変わらず、敵対者に対しては、鬼だよね。きっと、何にも知らない子供や奥さんがその手紙を見て、父親に詰め寄り、修羅場が展開されてるよ」
良美の当然の指摘に較が困った顔をして言う。
「喋る事も出来ないベッドの上での再会よりましだと思うけどな」
「どっちもどっちだよ」
良美が呆れた顔をして、新しい学校に向う。
「君達を歓迎します」
二人を迎えたのは、先生では、なく生徒会長の天野四郎だった。
「質問、どうして、生徒会長が転校生に挨拶に来るんですか?」
良美が手を上げて言うと四郎は、笑顔で答える。
「当校では、生徒に自治を重んじています。その為、全ての事柄を生徒会で行っているからです」
「あちきも一つ質問があります。あちきは、家庭の事情で、宗教的儀式を本心から行う事が出来ませんが、宜しいでしょうか?」
良美が言う。
「やるふりは、良いのか?」
較が頷く。
「必要と認められる場合、儀礼的にやるのは、問題ない」
四郎は、笑顔で答える。
「最初は、誰でもそんなものです。ここで学ぶうちに自然と、真実の宗教に目覚めます」
そういった時、四郎の首もとの紫の鎖のアクセサリーが暗く輝いた。
教室の案内と午前中の授業が終わった昼休み。
較と良美は、人気の無い、屋上の給水タンクの横で食事をしていた。
「何か嫌な感じの奴だね。皆、大人しく礼節を重んじている。活気って言うものが無いよね」
良美の言葉に較があっさり言う。
「そりゃ、操られてるから仕方ないよ」
良美が呆れた顔をして言う。
「そういう大問題をあっさり言うな」
較が自分のつけている紫の鎖を用いた校章を指差す。
「これが、その媒介。一種の術式が組み込まれていた。あの生徒会長がつけていたネックレスが、大元だね」
良美が頬をかく。
「つまり、原因は、もう判明してるって事?」
較があっさり頷き言う。
「制服と一緒にこの校章をもらった時点で大体の筋書きが読めたんだけど、普通の学校生活もしたいから、監視体制の維持って事で」
良美が呆れた顔をして言う。
「手抜きだな」
較が攻める視線を向けて言う。
「そういう言葉は、制服の裾直し等を自分でやれるようになってから言って。すぐに転校するんで業者に頼めないからあちきがやってるんだよ」
視線を外す良美。
「まあ、何事も、確証を得る事が大切って事で」
こうして事件の全貌をしりながらもサボりを決める二人であった。
数日が過ぎた頃、トラブルが発生した。
「偉大なる主に逆らう愚か者め!」
「止めてくれ!」
一人の教員が、複数の生徒に暴行を受けたのだ。
原因は、完全に教員側が悪かった。
一言で言うと部長を務める部の女子生徒にいやらしい事をしようとしたのだ。
それが、即座に発覚して、その周囲に居た生徒たちによる私刑が行使された。
「なんか変だよね?」
良美の言葉に、較が答える。
「ここの生徒は、皆、ルールを確実に守る善良な生徒。だからルールを守らないものには、容赦がない。それに絶対の自信があるから、躊躇もないし、全員が同じ考えだから、止める人間も居ない」
「ヤヤが止めれば?」
良美の当然の質問に較が言う。
「あちきが加わると、更なる不幸があの人に下るけど良い?」
頭をかく良美。
「そういえば、ヤヤは、性犯罪者は、壊す事にしてるんだっけ」
一切の躊躇無く頷く較であった。
問題の件で生徒達が先生達に事情聴取をうける。
一応にあれは、全て先生が悪いと報告する中、良美が顔色も変えずに言う。
「あれは、完全にリンチだな。あんな事を認めていたら、一般生活が成り立たない」
生徒達がざわめき、四郎が笑顔で言う。
「あの教師は、教師として恥ずべき行為をしたのです、それ相応の罰が与えられるべきなのですよ」
「残念だけど日本は、法治国家なの。罰を与えるには、ちゃんとそれを裁判で裁かなければいけない。それを行わず、個人個人の判断で行っていたら、それは、単なる暴力だよ」
較が正論を吐くと隣に居た良美が言う。
「ちなみに普段のヤヤの行為は、どうなるの?」
較が笑顔で答える。
「あれは、正当防衛か、たんなるあちきの我侭。何百人、人間を休業させても立件されなければ犯罪じゃないと思うよ」
「そうか、ヤヤが警察に捕まらないのは、立件されないからか」
良美が納得し、較が頷き続ける。
「だから、自分が正義だなんて思っていない。正義とは、何か? 力の総量が勝る考え。勝てば官軍。そして、ここは、日本国内、正義は、憲法で、六法全書だよ。こんな学校内だけの正義や道徳で罪を裁く事は、出来ない。極々当然の事実だよ」
四郎が顔を引きつらせながらも、首もとの紫の鎖を触る。
「貴女も神の御意思を感じれば、きっと理解できます」
較は呆れた顔をして言う。
「通じないよ。それは、この校章を媒介にして、上級神、紫縛鎖の使徒、紫頭の力で侵食して操るもの。あちきと良美って元々、白牙様に侵食されてるから、侵食する余裕ないんだから」
言葉をなくす四郎に較が近づき、その紫の鎖を掴み笑顔で言う。
「いい事を教えてあげる。この鎖が力の供給口になってるから、これを壊すと、侵食が解除されるよ。支配から開放された生徒達がどうなるか楽しみだよね」
「止めてくれ! 何でも言う事をきくから、それだけは、止めてくれ!」
四郎が較に哀願する。
「どうするヨシ?」
較が問いかけると良美が首切りのジェスチャーをする。
較が鎖を握りつぶした。
「この学校も長くなかったな」
次の学校の選択作業をする較。
「ところで、あれを止めなくて良いのか?」
良美が、生徒達にリンチにあう四郎を指差す。
「随分やりたい放題してたらしいからね。自業自得でしょ」
良美も多くの女子が泣きながら殴る姿を見て大きく溜息を吐く良美。
「こういう陰湿なのは、合わない。次は、前回みたいに、肉体で語り合う学校にしよう」
較が肩をすくめる。
「今時、そんな馬鹿な奴等は、多く居ないよ。あちきとしては、コンピューターウイルスの製造競争してる学校なんかが物理的被害が少なくていい気するけど」
嫌そうな顔をする良美。
「根暗なのは、嫌だぞ」
そんな二人の会話を他所に、四郎がボコボコになり、生徒達が元に戻って普通の学校になったのであった。