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フィニッシュガールズ  作者: 鈴神楽
外伝:VS八刃編
19/21

信念を持つ拳での対決

無人島で迎い討つヤヤ。そこに現れたのは、身内だった

 日本国内といえるか微妙な位置にある孤島。

 そこには、自家発電設備まである屋敷があり、その一室に較は入っていく。

「ヨシの調子は、どう?」

 較の質問に、良美に付き添っていた優子が言う。

「大分、落ち着いたみたい」

 苦しそうな顔をする良美の汗を拭く。

「何時もは、もっとマシじゃなかったか?」

 同室に居た雷華の言葉に較が肩を竦ませる。

「普段は、八刃の専門治療チームが対応してくれてるからだよ。今は、それを頼れないからね」

「全部、あたしの所為なんですよね?」

 優子の言葉に較が言う。

「ヨシは、自分の判断でやってるの。雷華だって一緒」

 辛そうに言う。

「でも、今からでもあたしが出て行けば……」

 較は、呆れた顔をして言う。

「却下。そんなことしたら、ヨシが激怒するし、あちきも嫌。あちきのこの力は、護りたいものを護る為にあるんだよ」

「嫌ってそんな事で命をかける必要があるの!」

 優子が大声を出すと雷華が言う。

「人間、生きてれば良いって訳じゃ無い。あたしは、死なないために吸血鬼になった奴等を何人も見た。大半が正気を無くしていたし、正気を残していた奴は、全員後悔していた。一度吸血鬼になったら最後、自分を吸血鬼にした主に逆らえず、したがって生きるしかない。そんな生に意味なんてないよ。八刃の奴の言葉に従って生き残っても、それは、吸血鬼になって生きて行くのと代わらない」

「だけど……」

 戸惑う優子。

「ごちゃごちゃ五月蝿いよ。あんたには、自分の中の淫虫の魔王の種虫に負けないって重要な役目あるんだから、余計な事を考えない。あんたが負けたら、あたし達のやっていた事が無駄になるし、ヤヤが余計に苦労するんだからな」

 薄目を開けた良美の言葉に較が頷く。

「確かに、あちきは、鈴木さんが淫虫の魔王の種虫に侵食されても助けるつもりだけど、それってかなり面倒。頑張って抵抗してね」

「皆……」

 優子が嬉し涙を流す中、較が苦笑する。

「第一波がやって来た。雷華、鈴木さん達をお願いね」

 雷華が頷く。

「任せておけ」

「気をつけてね!」

 優子の言葉に頷き、較が屋敷を出て行く。



 屋敷に向かう道をその中年が居た。

「最初に聞きたいんだけど、ヒョウ叔父さんがここに来たのは、自分の意思だよね?」

 その兄の焔より年配に見える男、白風氷コオリが答える。

「当然だ。こんなチャンスを逃すわけには、行かないからな」

 大きく溜息を吐く較。

「ヒョウ叔父さんも白風じゃ珍しい、権力執着タイプなんだね」

 顔を引きつらせて氷が怒鳴る。

「私から次期長の地位を奪ったお前が言うか!」

 較が頬をかきながら言う。

「あれは、若気の至りって奴で、返せるものだったら返しても良いと思ってる次第ですよ」

「黙れ! 今更返してもらおうとは、思わない。しかし、お前の右手を封印すれば我が息子、ゼロが新たな次期長に成る事だろう」

 野望を語る氷に較が告げる。

「そうだね、ゼロさんだったら十分にその資格があるね。でもこの状況でヒョウ叔父さんに負けるつもりは、ないけど?」

 氷が悔しそうに頷く。

「そうだろう、エンの奴が開発した撃術は、こういった一対一の状況では、本式より有利だろう。しかし、一対一でなかったらどうだ?」

 その言葉と共に、氷の前に出る三人の分家の人間、白水シラミズ隠子インコ白金シラガネ京子ケイコ白土シラツチツヨシが居た。

 それを見て較が言う。

「静太さんは、ともかく、ガイが居ないのは、正一さんの助言なんだろうな」

 その言葉に剛が反応する。

「どういう意味ですか?」

 較は、淡々と告げる。

「あちきとヒョウ叔父さんの戦いでどっちに付いた方が徳かを判断してってことだよ」

 そんな較に対して陰子が言う。

「今の次期分家頭筆頭のガイは、ともかく、静太さんとしては、次期長が代わった方が徳だと思います。そしてここで参戦し、成果を上げれば今より高い地位が約束されると思いますが?」

 較が苦笑する。

「それってゼロさんが次期長についたらの話だよね? どこにそんな保障があるの?」

 氷が怒鳴る。

「お前が落ちればゼロが次期長になるのは、決まりきった事だ! 奴は、実力から考えても十分にその資格があるとお前も認めただろう。それどころかお前より相応しい実力の持ち主だ」

「そうだけど、じゃあどうして次期長になってないと思う?」

 較の質問に京子が首を傾げる。

「そういえば、おかしいですよね?」

 分家の連中に戸惑いの空気が流れるのを確認して較が言う。

「ゼロさんにその気があれば、あちきと再度勝負をして勝つのは、容易な事。あちきは、次期長の地位だけの為にあんな無茶は、しないし、出来ないと思ってるしね。詰り、ゼロさんは、ヒョウ叔父さんと違って地位に執着していない。それが何を意味するか解る?」

 最初に動いたのは、陰子だった。

 直ぐにその場から離脱した。

 京子が手を上げる。

「正直、どうなるの?」

 較が答える。

「即座に次期長の地位の異動は、無いと考えて良いね。少なくとも、今回の事で邪魔した分家の人間を合法的に処分する時間は、ある筈だよ」

 京子が慌てて帰っていく。

 最後に残った剛が複雑な顔をしているので慌てて氷が言う。

「お前まで逃げたりしないな? お前が次期分家頭筆頭になるチャンスは、ここしかないんだぞ!」

 較が笑顔で言う。

「邪魔しないでくれたら、あちきのポケットマネーから分家頭の家に十億ずつお礼金払うよ。確か、白土は、仕事優先で、あまり稼ぎが無かったはずだよね?」

「すいません。家の改装費も馬鹿に成らないのです」

 剛も戦線離脱した。

 氷が半歩下がるが年長者の意地で踏みとどまる。

「お前みたいな小娘には、実力では、負けん!」

『ヤマタノオロチ』

 超高速の八方からの攻撃を咄嗟にガードした氷。

『アメノムラクモ』

 溜め込んだ正面からの一撃を喰らってそのまま吹っ飛ぶ。

「陰子さん、状況を見守ろうと隠れているのは、解ってるから、この人を連れ帰って」

 陰子が現れて倒れている氷に近寄りながら言う。

「圧倒的でしたね?」

 較が肩を竦める。

「総合的な実力だったらまだヒョウ叔父さんが上だよ。でもね、ここに来る前から今の攻撃の為に気を高めておいたあちきと貴方達の壁をあてにしていたヒョウ叔父さんとの心構えの違いが明確に出ただけだよ」

 こうして初日が過ぎていくのであった。

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