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まともな初恋を求める水理高等学校

前回に続き、水理高等学校。ヤヤに惚れた可愛そうな男子の話

 謎の三つの殺人事件が発生していた、水理スイリ高等学校。

 その事件を解決すべく、較達が潜入していたが、終った後も、次の予定が無い為、雷華も居た事もあり、通学していた。



「赤芽さん、転校生の白風さんとは、知り合い?」

 雷華のクラスメイトの男子、初野ハツノマコトが声を掛けてきた。

「まあね、中学時代のクラスメイトだからね」

 雷華が答えると真は、真剣な顔をして言う。

「紹介してくれないか?」

 意外な言葉に固まる雷華。

 その間も真は、雷華を見続けた。

 暫くして雷華が真の両肩をもって言う。

「まさかと思うが、惚れたはれたの事を言ってないよな?」

 顔を真赤にして真が言う。

「それは……、だって彼女、可愛いじゃないか。それは、少し幼そうな外見だけど、大人しくって、自分でぬいぐるみを作ってるなんて、女の子っぽいじゃんか」

 雷華は、恐ろしいものを見る顔をして言う。

「えーと、ヤヤは、年上の彼氏が居るぞ」

 その言葉に驚く真。

「本当なのか?」

 雷華が頷く。

「ああ、何でも写真家を目指していて、一応金を持ってるヤヤがパトロンやってるって話だ。同居もしてるぞ」

 真が驚いた顔をした後、怒り顔になる。

「そいつロリコンの変態で、きっと白風さんの恥ずかしい写真を盗撮して、脅迫しているんだ!」

 雷華がそっぽを剥いて小声で呟く。

「ヤヤを脅迫する命知らずなんて居るかよ」

「そうに決まってる! 俺には、そいつから白風さんを救う義務がある!」

 燃え上がる真であった。



「って事があった。世の中、命知らずが居るもんだな」

 雷華の言葉に一緒に昼飯を食べていた良美が答える。

「ヤヤは、猫かぶりだからな。けっこう告白とかされてたよな」

「全部、丁寧に断ってるよ」

 較の言葉に雷華が首を傾げる。

「でも、中学の時は、告白されたのを見た覚えが無いぞ」

 較が小さくため息を吐いて言う。

「雷華が転校してきた時は、あちきとヨシが付き合ってるってなんて根も葉もない百合疑惑が広がってたからね」

「なるほど」

 手を叩き、納得する雷華。

「とにかく、ここも長く居る予定は、無いから、適当に誤魔化せば大丈夫だろう」

 のんきに言う良美に頷く一同であった。



 しかし、状況は、思わぬ展開を見せた。

「白風さん、俺が君を救う!」

 放課後、真がそういってやって来た。

 較は、ため息を吐き言う。

「赤芽さんに、変な事を言われたかもしれないけど、鳳さんとは、まだそんな関係じゃ無いです。あちきが彼の写真が好きだから、純粋に応援しているだけ。それに同居と言えば、大門さんとも一緒に暮らしてるから、初野くんが思っている様な事は、絶対に無いから安心して」

 無理やりの笑顔での答えに真は、首を横に振って言う。

「無理をしなくても良いんです。俺が絶対に救い出します」

 顔を引きつらせる較。

 そんな時、刑事が声を掛けてきた。

「例の事件の再検証に来たんだが、現場を教えてもらえないか?」

「はい、案内します」

 較が丁度いいと振り返ると、その刑事が叫ぶ。

「お前は、白風較!」

 大きく離れる刑事に良美が呆れた顔をして質問する。

「ヤヤ、今度は、何をやらかした相手だ?」

 較は、問題の刑事をじっくり見てから慌てて頭を下げる。

「あの時は、本当にすいませんでした。自分でも深く反省しています」

 雷華も頭をかきながら言う。

「どんな騒動に巻き込んだんだ?」

 それに対して較は語り始める。

「あれは、まだあちきが小学生の頃の話」



「手を上げろ!」

 通報があって駆けつけた警官が拳銃を向ける。

 小学生の赤いランドセルを背負った較は、顔すらむけず言う。

「今、忙しいから少し待ってて」

 そのまま、自分に向かって拳銃を乱射する相手の肩を掴み、そのまま握りつぶす。

 のたうちまわるその男の腰を踏み潰し、痙攣する男の腕と足を一回ずつ踏み、四肢を壊す。

 完全に人間として終ったことを確認してから較が警官の方を向いて言う。

「お待たせ、何の用ですか?」

 警官は、返り血で顔を濡らす較に恐怖して叫ぶ。

「大人しくしろ、傷害致死の現行犯で逮捕する!」

 較は、笑顔で言う。

「誤解です。この人は、死んでないですよ。まあ、もう二度とベッドの上から出られないでしょうけど」

「うるさい、とにかく逮捕する!」

 警官の言葉に較は、困った顔をする。

「うーん、封鎖が完璧じゃ無かったのか。バトルの組織の人間もいい加減な仕事するな。ウザイから壊しても良いけど、無関係な人間だよね」

 半ば本気な言葉に警官が顔を引きつらせるのを見て較は、やる気を失って両手を揃えて前に出す。

「大人しく捕まりますから、そんなに怯えないでくださいよ。それと、救急車は呼ばなくても大丈夫ですよ」

 こうして、較は、警察署に連行された。



「自分が何をしたのか解っているのか!」

 強面の刑事の言葉に較は、真面目な顔で答える。

「勿論。バトル、バックに大きな組織がある賭け試合に参加して、試合をしてました。因みに非合法ですけど、そこ等へんは、権力の超法的な処理がされますから、今回の件も握りつぶされます」

「妄想を言ってるんじゃない! 自分の立場って奴を理解しているのか!」

 較の胸倉を掴む刑事。

 それに制止をかける中年の刑事。

「待つんだ、相手は、まだ小学生だぞ」

 その制止を振り払い強面の刑事が言う。

「何を言っているんですか! このガキは、人に重症を負わせていながら反省もしてないんですよ!」

 較は、ため息を吐いて言う。

「そういう刑事さんこそ、自分の立場を理解していますか?」

 強面刑事が較に言う。

「どういう意味だ!」

 較が淡々と言う。

「自分が殺されるかもしれないって事実に気付いているかって事ですよ」

 強面刑事が怒鳴る。

「ふざけるのも大概にしろ、この状況でどうしたら、俺が殺されるって言うんだ!」

 次の瞬間、較は、強面刑事の腕を捻り砕く。

 強面刑事が床に転げまわるが、その胸を足で踏み較が告げる。

「このまま胸を踏み砕けば死ぬって理解できますか?」

 中年刑事が慌てて言う。

「そんな事をしてただで済むと思うって居るのか?」

 較が笑顔で答える。

「勿論、バトルに関わる事件だったら、組織の人間が握りつぶしてくれますから。因みにあちきは、この警察署の全警官を皆殺しに出来る自信ありますよ」

 青褪める中年刑事。

「ヤヤ、無関係な人間に危害を加えるのは、止めなさい」

 入り口から、較を迎えに来た希代子が声を掛けてきた。

「だって、この人たちってあちきの事を妄想娘だって思って、真面目に話を聞かずに自分の常識だけで話をしようとするんだもん」

 文句を言う較に希代子が近寄り叱る。

「世の中は、そんな理不尽な物なの。それより帰るわよ。黒林コクリンさんには、私が食事に誘ったって事にしてあるからね」

 較を連れて立ち去ろうとする希代子に中年刑事が言う。

「待ってください、彼女は、傷害の容疑者なんです!」

 それに対して希代子が言う。

「その件でしたら、既に警官の報告間違いとされています。この子は、警官が夜道で危険だからと保護された事になっています。そこの人も不幸な事故って事で処理されるでしょうね。でも、安心してください、治療費と慰謝料は、十分に払われますから」

 そのまま去っていく希代子と較であった。



「その時の中年の刑事さんがその人なの。若気の至りだよ」

 遠い目をする較。

「今だったらどうするんだ?」

 雷華の質問に較が答える。

「今だったら、警官に見つかるようなドジは、しない。万が一見つかっても、その場で頭の中を弄って記憶を消しておく。希代子さんに変な苦労かけられないからね。周りの苦労も理解できる年になったんだよ」

「根本的に、そんな真似がいけないと思わないのか?」

 中年の刑事の言葉に較が小さくため息を吐いて言う。

「理解できないのは、今は、私も解ります。あの時は、それが解らず暴れてすいませんでした」

 再び頭を下げ、頭を上げて較が続ける。

「でも、理解できなくても、そういう世界があるって事です」

 中年の刑事は、忌々しい物を見るように言う。

「私も理解したよ、あの後、本当に全てが揉み消された。まさかと思うが、今回の事件も?」

 較が笑顔で答える。

「まさか、もしもあちきがやったんだったら、こんな大事になる前に、握りつぶしていますよ」

 大きくため息を吐く中年の刑事。

「そうだな。現場は、他の生徒に聞く」

 そういって離れていく。

「ところで、こいつどうする?」

 良美の言葉で、壮絶すぎる話に硬直する真に気付く較と雷華であった。



 較達が転校した後、雷華が真に言う。

「それで、白風には、告白したのか?」

 それに対して、首を傾げる真が言う。

「誰だ、それ。俺は、恋愛より部活が優先だぞ」

 そのまま去っていく真を見送ってから雷華が言う。

「あまりの事に記憶から削除したか。まあ、それが懸命な判断だな」

 この様に較は、色々な所に地雷を設置して人生を送っている。

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