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不運なる努蛙功工業高校

新シリーズ開始。最初は、不幸な不良達のお話です

 その学校は、努蛙功ドアク工業高校と言い、名前には、努力し功を成す蛙の様に飛びあがれと言う意味がある。

 勉強が出来なくても技術を身につければ、人として真っ当な生き方が出来るが基本教育方針で、筆記よりも面接重視であった。

 その際、一部の面接官が賄賂を受け取り、生活態度に問題がある生徒を受け入れた事から生徒の質が落ちて行き、現在は、完全な不良高校になってしまった。



 改造制服の不良達が各々勝手な事をしている教室に男性教員と二人の少女が入ってきた。

「新学期が始まったばかりだが、転校生だ、自己紹介してくれるか?」

 ショートヘアーでよく鍛えられたスレンダーな体の少女が手を上げて言う。

「あたしは、大門ダイモン良美ヨシミ。特技は、空手で中学の時に全国大会も出た事もあるよ。そうだ先生、この机で試し割りして良い?」

 良美が傾いている教卓を指差すが、男性教師は、引きつった顔で答える。

「ちょっと校内の物を破壊するのは、止めてくれるかい」

 良美は、つまらなそうな顔をする中、もう一人のポニーテールをした小学生と勘違いされそうな童顔幼児体型、しかし顔は、そこそこの大人しそうな少女が頭を下げて言う。

「あちきの名前は、白風シラカゼクラベと言います。友達からは、ヤヤと呼ばれています。趣味は、ぬいぐるみの作成です。これは、お近づきのしるしです」

 較は、紙袋からぬいぐるみをだして、教卓に広げる。

「すまないがそういうことは、後にしてもらえるかい?」

 男性教師の言葉に較が頭を下げる。

「すいません。直ぐに片付けます」

 しかし、前の方にいた金髪の女子が来て、ぬいぐるみをとっていう。

「いいだろ、どうせ授業なんてしないんだから」

 他の女子や軟派な男子がぬいぐるみをとっていく。

 その中、腐った目の生徒が多い中、芯が通った目をした男子が良美の前に立つ。

「スポーツで多少、強いからって粋がるんじゃないぞ。俺は、高田タカダ剛一ゴウイチ、番長になる男だ!」

 クラスメイト達が大爆笑をすると、剛一が教卓を粉砕する。

「笑うな!」

 その一撃でクラスメイト達は笑いを止めるが、良美だけは、爆笑を続ける。

「今時、番長制度ってまだあったんだ」

 較が袖を引きとめる。

「笑っちゃ駄目だよ。本人は、真面目なんだから」

 それに頷き、良美が涙を拭きながら手を出す。

「笑ってごめんな。でもあたしは、そういうの好きだぜ。どうせなら天辺を目指さなきゃな」

 素直に謝り、受け入れられた事に剛一が驚く。

「信じるのか?」

 良美が頷く。

「あんたが成りたいんだったら、努力しだいだろ?」

 較が言う。

「実際問題、過去にそういった制度があった以上、それを再現する事は、可能ですよ」

 意外なまともな回答に行った本人、剛一自身が戸惑うのであった。



 休み時間のたびに良美は、先輩に呼び出され、較と一緒に出かけて次の授業前に帰って来た。

 昼休みに、お弁当を食べる良美と較の所に剛一が来て言う。

「お前、先輩の呼び出しを全て蹴散らしてるそうだな」

 良美が呆れた顔をして言う。

「全然、鍛えられてない雑魚ばっか。囲んでナイフを使えばこっちがびびって言う事を聞くなんて馬鹿な事を考えてる奴が大半だよ」

 剛一が顔を引きつらせる。

「そんな事があったのか?」

 良美が平然と頷く。

「素人がもったナイフよりあたしの正拳の方が速いって事実を教えてやった」

「ナイフは、怖くないのか?」

 剛一の言葉に良美が鼻で笑う。

「人の手だって鍛えればナイフより凶器。使う相手次第じゃ、爪楊枝だって怖い事があるよ」

 良美の豪胆に剛一が驚く。

「すげえな」

 そんな時、顔面に包帯を巻いた男子が教室に飛び込んでくる。

「大門、前に出ろ」

 その男子は、拳銃、ロシアからの密輸が多いトカレフが構える。

 良美は、溜息を吐いて言う。

「はいはい、先輩何のようですか?」

 その男子生徒は、トカレフを突きつけて言う。

「死にたくなければ、裸で土下座しろ。そして二度と逆らいません。一生、貴方の肉奴隷として生きていきますと誓え!」

 呆れた顔をする良美。

「エロゲーのやり過ぎ?」

 男子生徒が怒鳴る。

「死にたいのか!」

 良美が真剣な顔をして言う。

「そんな拳銃であたしを殺せるとでも?」

 剛一が驚く。

「ちょっと待て、まさか拳銃相手に喧嘩うるのかよ!」

 良美がきっぱり言う。

「喧嘩を売ったのは、あの先輩。拳銃じゃない!」

 完全に行った目で男子生徒がトカレフの引き金を引こうとした時、較の足払いがその男子生徒に決まる。

「ヨシ、教室で発砲させたら周りの人が怪我するよ、少しは、TPOを考えて行動しなよ」

 較の手には、トカレフが握られていた。

「わるかったよ」

 頭をかきながら、問題の男子生徒の所に行き言う。

「そういうわけだ、狙うんだったら放課後にしてくれ」

 良美は、較から受け取ったトカレフを窓からほうり捨てる。

「ごみのポイ捨ては、マナー違反だよ」

 較の突っ込みに良美が胸を張っていう。

「大丈夫、先輩が必死に回収するから」

 良美の言うとおり、男子生徒は、駆け足でトカレフを拾いに向った。

 剛一が流石に引きつった顔で言う。

「お前等、何処かおかしいぞ」

 首を傾げる良美。

「拳銃の流れ弾が周りの人に当たったら危ないとか、ごみを捨てるのは、マナー違反とか、極々常識的な会話しかしてないぞ」

「確かに常識だが、根本的に何かが間違ってる気がするぞ」

 剛一の言葉に良美が笑う。

「細かい事は、気にしない」



 放課後、不良達は、ナイフや拳銃装備でグラウンドを占拠し、良美を待ち構えていた。

 教師達も、不良が怖く何もいえないで居る。

 良美と較が校舎を出て、校門に向ってグラウンドを歩き始めた。

 不良達が二人に近づこうとした時、戦闘ヘリが強襲してきた。

「もー学校を戦闘ヘリで強襲するなんて非常識な事を」

 較は、そういいながらも、良美を抱えながら、駆け出し、校舎の壁に飛ぶ。

 誰もがその高さに驚く中、さらに壁を蹴って戦闘ヘリに襲い掛かる較。

『バハムートブレス』

 掌打の一発で戦闘ヘリを空中で回転させて墜落させる。

 その間にも、装甲車や防弾仕様のトラックがグランドに入ってくる。

 較に対する包囲が完成した頃には、不良も他の生徒も校舎の中で震えていた。

 そんな不良達が怯えている直ぐ傍の校舎の壁に良美が寄りかかる。

「ヤヤ、この不良達が待ってるから、とっとと終わらせてね」

 較が頷く。

 そして、兵士の格好をした人間がマシンガンを連射し、バズーカーの砲弾が飛ぶ中、較は、縦横無尽に走り、次々と兵士達を戦闘不能にしていく。

 最後の兵士が装甲車の中に隠れ、装甲車に装備された大口径の機関銃を較に連射する。

『アテナグローブ』

 較は素手でそれを弾きながら接近する。

 剛一が引きつりながら言う。

「どうなってるんだ?」

 良美は、不良達に聞こえる声で言う。

「ルールを守らないってアウトローで楽しそうだろ? でもね、アウトローって事は、法の保護が無いって事。襲われたら最後、自分の手で生き延びるしかない。別にルールを重視しろとは、言わないけど、ルールを無視する以上、いつああいう風に襲われても、文句が言えないって事だけは、覚えておいたほうが良いよ」

『オーディーン』

 較の手刀が装甲車を断ち切り、最後の男を戦闘不能にした。

 良美が振り返り言う。

「さて、あっちは、終わったけど、あたしに対する喧嘩を続ける?」

 不良達は、泣いて土下座する。

「真面目に生きますからどうかお見逃しを!」



 翌日の朝のホームルーム。

「いきなりだが、大門さんと白風さんは、転校を取りやめたらしいです」

 そう説明する男子教員の顔に、大量の冷や汗が流れるのは、きっと未だに続くグラウンドの復興作業音が聞こえる所為であろう。

 そして、昨日まで自分勝手にしていた生徒達がきちんとした制服で真面目に席に着いている。

 唯一、剛一だけは、変わらない格好でいた。

「あの生き方、痺れるね。俺も何があろうと番長ロードを走っていくぜ!」



 こうしてなし崩しのまま一つの高校を更生させた較と良美であったが……。

「最初から失敗だよ。ヤヤが余計な恨みを買ってるからだよ」

 良美の突っ込みに較が舌打ちする。

「昼間から襲ってくる馬鹿には、釘をさしておかないと行けないみたいだよ。どっか見せしめに完全壊滅させておくかな」

 理解をしていないみたいであった。

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