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アカガミノドカ  作者: HDK
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第2章 「真実」

第2章「真実」


 

 太陽は、俺と彼女を容赦ない光でぶつけてくる。春とは言え、温暖化のせいもあってか、夏の暑さをも感じさせた。振り返り校舎内を見ると、通常のクラスは、まだホームルームが続いているようだ。

 彼女の足取りは遅かった。普段から歩きが早い俺にとっては、イライラさえ感じる速度ではあったが、先の階段降りの負担を抱える今の俺には、その速度が、ちょうどマッチしていた。

 彼女の歩く姿を見ていると、なぜか心が痛む………。そんな俺は、校門から出たすぐの所で、彼女の前でしゃがみ込んだ。俺のとった行動に彼女は、戸惑いを示した。

「な………何してるの?」

「おまえが辛そうだから………ほら? おぶってやる。」


「わ………私は。そこまで貧弱じゃないわ………。」

「ふ~ん………。」

俺はそんな彼女の言葉を無視し、彼女の身体に背中をくっつけ、両足を脇に抱え込み、背負った。

「!」

彼女を持ち上げると、不思議な事に重さを感じない。ただ背中から伝わる体温だけが、伝わってきた。最初は嫌がり、降りようと抵抗していたが、すぐに諦め、俺の背中に落ち着いた。

「………大鳥くんは、私が怖くないの?」

「突然何言い出すんだ? モヤシみたいなおまえを怖がる奴なんて、この世界中のどこを探しても居ないぞ!」

「モ………モヤシ?」

彼女の顔は見えないが、その言葉に少々怒っている顔が、想像できた。正午間近の時間帯の通学路は、学生どころか、大人もロクに歩いていない。俺は彼女をおんぶしたまま、無言に歩き続けた。


―――15分ほど歩いて、ようやく最寄り駅の周辺にさしかかった。さすがにここまで来ると、周囲の視線が俺に集中した。

背負う彼女の姿は、どう考えても目立っていた。銀髪に白い透きとおった瞳を持ち、身長150にも満たないこの小学生のような容姿………。そんな彼女を背負っている時点で、既に怪しい男だ。俺は、すれ違う人々の目を振り払い、ある場所で彼女を下ろした。

「ここは?」

「俺だけの秘密の隠れ家だ! たまに一人になりたい時によく出入りしてるただの喫茶店だけどな。」

「………そうなんだ。」

彼女を見ると俺は気付いた。彼女の無表情が作りであった事に―――。

そんな彼女の笑顔を見たい………。自然にそう思っている自分がいた。

俺は彼女を先頭にして、店内へと入った。

「ちょ………ちょっと! 押さないで!」

彼女は、焦りを小さな声で伝えてきた。そんな彼女の姿に可愛いと感じてしまった俺は、自分らしくもなく、頬を赤らめてしまった。

店内に入ると、すぐさま店員のお姉さんが、ウエルカム用語で話しかけてきた。この喫茶店は、隠れ家風居酒屋の跡地にできた店だけあって、内装はそのままの状態で営業されていた。各席は、外から見えないよう暖簾で覆われている。人の目も気にせず、ゆっくり自分の時間を過ごせる唯一の場所になっていた。


ランチタイムに突入したせいもあり、厨房は、ランチの量産に追われ、慌しい雰囲気だ。今の俺らの将来もこんな風に時間に縛られるようになるのだと考えるだけで、ため息が出てしまう。ほぼ個室とも言えるテーブル席に案内された俺らは、暖簾をくぐり、お互い面と向かって、やっと落ち着ける場所に腰を下ろした。

「何にする?」

「大鳥くんと同じモノで良い。」

「コーヒーだけど、飲める?」

「子供扱いするのは、やめて………。」

さっきは、顔が拝めなかったが、今回は、はっきりと見える。予想した通り、彼女の顔が、少しぷくっと膨れていた。俺はその顔を見て、思わず噴き出し、笑ってしまった。それに対して、彼女の顔は、先よりも増して膨れ上がった。からかうのもこれぐらいにして、店員を呼び、アイスコーヒーを二つ注文した。今日出逢ったばかりなのに、二人きりのシチュエーションは、お互い沈黙の時間を作ってしまったが、注文のコーヒーの到着をキッカケに俺は、彼女に例の話を切り出そうと狙っていたのだが、先手を打たれてしまった。

「今朝の現場見てたでしょ?」

「う………うん。でも、いったい何だったんだアレ?」

「あの風景は、私と波長が合う人にしか見えないの。」

「波長?」

「うん………。簡単に言えば、ラジオみたいなものよ。大鳥くんが見たモノは、過去に資材室であった光景なの。由愛先生は、話を少しばかり濁らせていたけど、あの話は現実にあった出来事なのよ………。」

彼女は冷静な瞳で俺に語りかけながら、アイスコーヒーにミルクをかけ始めた。

「お………おまえが、殺したのか?」

いきなりの直球過ぎる俺の質問に、彼女は少し笑みらしきものを浮かべた。

「そういえば、私の名前………まだ言ってなかったね。私は、黒川 長閑………。よろしくね。」

「長閑かぁ………。俺は大鳥 兼丈だ! よろしくな!」

自己紹介で逃げられた感じがした。しかし、俺が目の前のコーヒーを手に取り、口にした時だった………。


「そうよ………。私が殺した。」


長閑も答えを直球で俺に浴びせたのだ。俺は、飲み干そうとしていたコーヒーの一部を噴き出してしまった。すぐに彼女は、冷静にフキンを俺に差し出しくれた。

「大鳥くん………大丈夫?」


「ごほ! ごふっ………。もう大丈夫だ。」

正直言って、信じられなかった。目の前にいるこんな可憐な彼女が、人殺しをするような人間には、到底思えない。目を瞑り、何かの間違いだと自分に言い聞かせていた。ある程度落ち着きを取り戻した俺は、再び彼女との会話を再開した。


「犯罪を起こしたというのに、何で長閑はここにいるんだ?」

「私自身が、直接殺したわけではないわ。間接的に殺したの。殺したという表現が、そもそも

誤解を生んでしまったようね。その人の心を操ったとでも言っておくわ………。」

彼女が何を言っているのか、さっぱり理解できない俺は、自棄になってコーヒーを一気に飲み干した。そして、店員に2杯目を頼んだのだ。

「………お腹壊すわよ?」

冷静な物言いの長閑は、以前表情を変えず、俺にそう忠告してきたが、このままでは、俺が冷静さを保てない。長閑は、そんな俺の心の乱れに気付いてくれたようで、静かに2杯目が来るのを待ってくれた。


―――数分後、2杯目のアイスコーヒーが到着し、俺の落ち着きを確認した後、長閑は話を続けた。


 この学校の事件の発端は、私なの………。由愛先生が、今日話した事件の内容には、訂正があるわ。私がその場に居たから、嘘をついたんだと思うけど………。クラスの全員が殺されたって言ってたよね? でも実際は、一人だけ生き残った人間がいたの………。

「誰なんだ? その生き残った奴?」

「………私よ。」

「そ………そんな馬鹿な話あるかよ? 6年前って言ったら、俺ら小学生だぞ?」


長閑は、俺の顔に近づくなり、こう答えた。

「私は大鳥くんより6つ年上よ。」

「え?」

どうやら、今日は嘘と真が入り乱れる1日になっているようだ。目の前にいる長閑が、先輩であるわけがない………。こんな子供みたいな容姿なのに? 俺は、からかうなと言ってやったが、紛れもない現実を俺に押し付けてきたのだ。長閑が、可愛らしい財布を取り出し、中から1枚のカードを俺に手渡してきた。それを見て俺は、固まった。

「の………長閑。これって? 本物?」

「当たり前でしょ! 偽物入れる馬鹿がどこにいるのよ?」


手渡されたのは、長閑の運転免許証だった。生年月日を見ると、俺の生まれた西暦より6年前の年号が、しっかりと記載されていた。俺は突きつけられた現実を受け止め―――

「の………長閑先輩?」

「今さら先輩を付けても遅い………。呼び捨てで良い。話を続けるわね。」

「………はい。」


 私は、6年前の事件で唯一生き残った一人だった。警察にいろいろと事情聴取されたけど、その時の事をはっきりと思い出せないの。その事件以後、私は違うクラスに入れられたけど、そんな事件の後で生き残ったせいか、ひどいイジメにあったのよ。そのイジメがあった年は、結局学校に行かなくなり、留年したわ。そして、翌年改めて2年生として、登校した。でも、駄目だった。全国を震撼させたほどの事件の記憶っていうのは、1年経過したぐらいでは、消えないものなのよ。すぐに私が事件の生き残りと分かったら、結果は去年と同じ。それからすぐに再び惨劇が起こった。2年連続ともあって、教育委員会で、ある対策案が可決された。特別クラス「10組」の設立案。被害者を最小に抑える為にクラスの人数を6人に限定した。それにも理由があった。最初の1年目を除き、2年目以降の死んだ生徒の数が、6人を越える事が無かったから。選ばれる生徒は、公平を保つために教育委員会の場で選ばれる。そして、選ばれた生徒の保護者宛に昔で言う「赤紙」が届くのよ。選ばれた生徒の中には、恐れ、他校に転校していく年もあったぐらい。それ以降、私は「アカガミノドカ」と呼ばれるようになったの。そんな惨劇が続く10組に毎年私が居るんだから、そう呼ばれてもおかしくないわ―――。

「転校した生徒は、生きてるのか?」

「………多分生きてると思う。私と居ると死んじゃうからね。転校した生徒とは、面識もないわけだし。」

「でも、さっき言ってた間接的に殺すなんて、不可能だろ?」

「出来るわよ………。私と同じ目に遭わす事でね………。」

「い………イジメか?」

「そうとも言えるわね………。イジメの行き着く先にある選択肢は、「逃げる」「戦う」「

自殺」………。この3つしかないわ。」

 長閑はすべてのコーヒーを飲み干した。俺が追加を頼もうとすると、もういいと顔を左右に振った。

―――3つしかない選択肢の中で、死に追い込むためには、「自殺」以外の邪魔な二つを消去しなければならない。

1つ目の「逃げる」の消去に困った事は、一度も無かった。それは、イジメの加害者たる宿命が味方してくれるから。被害者に尻尾巻いて逃げる加害者は、この5年間1人も居なかったわ。だから、1つ目はクリア。


2つ目の「戦う」だけど、加害者と同じイジメで立ち向かっても、短期間で人を死に追い込むのは、とても無理な話。だから、何で追い込むか、私は必死で考え、実践した。それは、「言ノ葉」と呼ばれるもの。催眠術に近い形かもしれないけど、実際には、日々それを毎日行うの。今までそれを聴いて、学校に来なくなった生徒もいたけど、自宅で首を吊って死んでるわ………。あるボーダーラインを超せば、もう手遅れ………。私の「言ノ葉」の指示には、絶対逆らえない。

 加害者を「言ノ葉」で操るまでの期間は、約2週間かかる。それほど、人の精神を操るには、時間がかかるの。私は何度も同じ言葉を繰り返し、加害者に暗示をかけていく。その間の身体への暴力がある事を承知のうえで行うの。

人は同じ言葉を永遠に繰り返し、言われると、4つの段階を経て、最終的に躁鬱になると言われている。「怒り」から「発狂」を伴い、「悲哀」して「絶望」する。個人差もあるけど、「悲哀」が死のボーダーライン。その人の精神は、「言ノ葉」で支配されるから………。

 今日、風邪で休んだ女の子居たでしょ? さっきも話したけど、もう転校してしまったんだと思うわ。「赤紙」が届いた時点で、パニックになった両親が、勝手に転校手続きを取ったとしか、考えられない。これで一通り、話はしたわ―――。


 長閑の話した事実に脅威を感じた。間接的だとしても、人を死に追い込む行為そのものは、人として間違っている。語る彼女の表情をずっと見ていたが、本当は人を死なせたくないと、俺に訴えかけているようにも見受けられた。

「長閑は………。今の自分好きか?」

「………何でそんな事聞くの?」

「質問を質問で返すな! 実際どうなんだ? 相手を死に追い込む行為を繰り返し

ていた自分をどう思っている?」

長閑の顔は、曇っていた。綺麗な白い瞳に黒が混ざりあい、何とも言えない表情をしていた。結局、彼女が俺の質問に答える事は無かったが、今年の彼女のサポーターとして選ばれたからには、俺は使命をちゃんと果たさなければいけない。その使命はただ一つ。

長閑を護ること………。それだけだ。

「必ず毎年4月22日におまえを除く生徒が、姿を消すとなると、今日は4月9日だから、明日からの12日間………。ようするに、登校から下校まで、おまえが暴走しないよう、見張っておけば良いわけだ!」

「大鳥くん………。それ本気で言ってる?」

「当たり前だろ! 麻利たちが、おまえをイジメるなんて、とても考えられないが、誰も死なせたくないからな! おまえにこれ以上、そんな事してほしくないし………。」

「大鳥くんって………変わった人ね。」


「おまえの方が、変わり者だ!」

俺と長閑の間にあった壁が、完全に崩れた。その証拠に長閑は初めて、その無表情を解放し、俺に笑いかけたのだ。こんな笑顔を見せられる女の子に、これ以上、無駄な罪を重ねてほしくはないと、俺は心の中でそう思った。その後、俺たちは、明日からの登下校の待ち合わせ等の話し合いをして、喫茶店を後にした。


***


 外に出ると、入る前まで俺の真上にあった太陽は、西に移動し、夕日と姿を変えていた。駅前周辺は、自宅帰りの車と人でごった返している。さすがに今の時間帯で、再び彼女を背負うのは、無理な話だが、彼女の手を握って、人々の渦から護ってあげる事はできる。長閑は、黙ったままだが、俺の手を軽く握り返した。

「帰宅ラッシュが無くなるまで、待つか?」

「………うん。」

 俺たちは、人ゴミから離れ、駅近くにある公園に立ち寄り、人が引くまで待つ事にした。

ベンチに座り、何気ない会話で小さく盛り上がった。時間の経過は、あまりにも早すぎた。あっという間に日は暮れて、気付けば、公園には、俺と長閑の二人だけしか居なかったのだ。俺は、ポケットから携帯を取り出した。時間を見ると、時は既に20時に差し掛かろうとしている。

「そろそろ人も引いただろう。帰るか?」

帰る素振りを見せると、何も言わずに、俺の袖をギュッと握る長閑の姿があった。

「………まだ一緒に居たい。」

「はは! おまえは、やっぱり子供だな………。」

「子供じゃない!」

そんな彼女の気持ちに応えるように、俺は、袖を掴む彼女の手の甲に手を乗せた。暗くて彼女の顔は、はっきりと見えなくなってしまったが、小さな声だけは、はっきりと聞こえてきた。

「………ありがとね。大鳥くんって、何でそんなに優しいの? 私たち今日出逢ったばかりなのに、もうこんなに近くにいる。恋人同士みたい………。」

「な………何言い出すんだ! 突然………。」

何だか胸がドキドキしてきた。俺はそんなにシャイな性格ではない。それなのに、この気持ちは、いったい何なんだ? 小心者になり下がっていた俺は、今の状況に耐え切れなくなり、ベンチから立ち上がろうとした時だった。


ほんの少しだけ、時が止まった………。


唇に温かい感触が広がる………。長閑の唇が、そっと触れていた。子ども扱いしていた俺が馬鹿だったようだ。長閑は間違いなく、俺より先を生きている………。


そう感じるキスだった―――


―――キスの余韻を残したまま、俺たちは、再び駅へと足を歩かせた。出逢った朝の無表情は、どこに行ったのやら………。歩きながら、俺の顔を見ては、微笑んでいた。。

「私ね………。キスしたの初めてだったの。」

「下手な嘘は、よしてくれ………。」

「嘘じゃないわ。私に構う男子なんて、今まで居なかったから………。」

俺は何も返す言葉が出ないでいた。そんな黙り込む俺を見ては、彼女は言うのだ。


「大鳥くんは、本当に優しい人………。」


その言葉にも何も返す言葉が見つからない。長閑は前を向いたまま、いつものペースで歩いていく。しかし、時は無常なもので、改札口が、すぐそこまで迫っていた。

―――離れたくない!

俺の心は、そう叫んでいた。心で叫んでいるようでは、俺もまだまだ子供だと認めてしまう。次に長閑に目をやった時、俺の隣に彼女の姿はなく、既に改札口を通過し、

俺を見つめていた。

「今日は、楽しい一日をありがとう………。嬉しかった。」

「ああ! 俺も楽しかった。………ありがとな!」

俺が言葉した「ありがとう」に、何かを感じたのか? 彼女は、泣き出してしまったのだ。改札口ともあって、周囲の目が彼女に注がれている。その反面、女の子を泣かしたと誤解した道行く人々は、俺を睨んでいた。俺は、駅員に頼んで、何とか彼女をこちらに引き戻し、彼女に泣いた真意を確かめた。

「ご………ごめんなさい。ありがとうなんて、今まで一度も言われた事なかったから………。私は、このまま生きてて………良いんだよね?」

「当たり前だろ! 俺が長閑の苦しみを消してやる! だから、心配するな!」

「………約束だよ?」

「あぁ! 約束だ! おまえは、俺が護り抜く!」

涙で濡れた頬を手で拭ってやった。長閑は、俺の言葉を聞いて、安心したのか、平常を取り戻した。その姿を見て、俺は安心し、このまま長閑を見送る………はずだった。


「!」 


平常心を取り戻した長閑の身体が、急に動かなくなってしまったのだ。力が抜けたように、長閑は、その場に座り込んでしまった。いくら声をかけても、応答がない。

「長閑? 返事しろ! どうしたんだよ?」

「………。」


―――それから、しばらくして、ようやく長閑の口が開いたのだった。


「大鳥くん………。やっぱり、今年も駄目かもしれない。」

「はぁ? さっき、俺が護るって約束しただろうが!」

「………うん。でもね、もう彼女たちが、動き出したみたいだから………。」

「ま………麻利たちの事なのか?」

「うん………。明日から始まると思う。それでも、大鳥くんは、私を護ってくれる?」

「な………何度も言わせるな!」

「ごめん………。でも、これだけは言っておくわ。」

「何だよ?」


「明日からの麻利さん達には、あなた自身も十分気をつけてね。それから、万が一だけど、

もし私が、ぶつぶつと言い出したら、絶対に聴かないで。それは、もう一人の私の「言ノ葉」

だと思うから………。その場からすぐに逃げて。これも約束………。大好きになった大鳥くんだから警告してるの………。いい?」

「わ………わかった。約束する!」

「うん。」

長閑は、俺に注意事項を伝え終わると、ふらりと立ち上がり、俺に小さく笑いかけ、駅構内へと消えていった―――


 長閑が、予知能力を持っているかは、定かではない。だけど、5年間の惨劇が、現実にある今を素直に受け止めるしかない………。

 

明日から始まる日々が、惨劇にならない事をこの時ばかりは、神に祈るしかなかった。


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