命の恩人には礼儀を尽くせ
やっと書けた~・・・。難しいですね、男性視点。
それはさておき、お気に入り登録件数が、なんと100件越えしました!ありがとうございます。がんばります。亀更新ですけど。
目を覚ましたら、見慣れない天井だった。板張りの天井なんて見た覚えがない。
とっさに声をあげようとしたが、喉がひっついってしまったような感覚とともにヒュッと息がもれるだけだった。
そうなってから思い出す。1週間前に着の身着のまま母親に村を追い出されたことを。ただでさえ今は水不足が深刻化しているっていうのに、おかげでぶっ倒れた。
あのババァ!
ぎろりと天井の木目をにらむ。ひどく体がだるいが、動けないわけじゃない。現状を把握しようと上半身を起こした。ずるりと粗末な毛布が滑り落ちたのが見えた。
そういえば、俺は行き倒れたんだった。状況から察するに、現在は無人の小屋だろう。
しかし、そうなると誰が自分を運んだのか。不思議に思い、辺りを見回した。
そして見たのは、眠っている白い獣だった。
驚いて立ち上がろうとした。しかし、ここはいつもと違うとても狭いベッド。しかも衰弱していたために足はおぼつかない。俺は派手に転落した。
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
痛みにうめくが声が出ない。頭を床に思い切りぶつけてしまった。力が出ず、頭をおさえることもできない。
いや、そんなことよりも、何故ここに神獣がいる!?
頭をおさえ、痛みをこらえながら呆然としていると、白い獣の脇で、ムクリと何かが起き上がる気配がした。殺気はなかった。人間だか動物だか知らないが、この小屋を使用しているものに違いない。
確かめようと体を起こしたが、あまりにも水分を摂っていなかったせいか、目眩がした。先ほどぶつけた頭も痛い。再び床に倒れこみ、じっと様子をうかがった。
誰かが火を扱っているようだった。そのほかにも何かと物音がする。決して騒がしいものではなく、なんとなく心地よい落ち着いたものだった。
それを聴いているうちにうとうとしかける。すると、視界の端に白いものが入った。見上げる、と神々しくも畏れ多い白い獣が歯を剥きだしにしてこちらを睨んでいた。
別に危害を加えにきたわけじゃない。それに、もう目的は果たした。
そんな思いを、力の入らない体で必死に視線に込めた。
白い獣はそんな俺をしばらくじっと見つめていたが、興が削がれたのかすぃっと目をそらした。そして、その辺に転がっていた丸い木の実をちょいちょいと前足や鼻先でいじりはじめた。そのしぐさはまるで子猫のようで、とても見た目にそぐわないものだった。
マジでこいつが神獣か?
おもわず疑ってしまう。すると、それを察したのか神獣がこちらを振り返った。感情のみえない表情に、ぎくりと身をこわばらせる。白い獣は俺の顔の真ん前で、のそりと前足をあげた。
そして、俺の後頭部に前足を乗せ・・・・・ 思い切り体重をかけた。
痛ぇーーーーーー!!
心なしか、白い獣はニヤついているような気がした。
声もなく痛みにもだえていると、突然両脇を持ち上げられ、ベッドに座らされた。まるで幼子のような扱いだ。だが、もう抵抗する気力もない。
力なく見上げると、黒い髪に茶色い目をした女が立っていた。なんだか睨まれているような気がする。女はすぐさま踵を返し、小屋の中央にあるテーブルまで歩いていく。
それをぼんやりと見ていると、目の前に白い器があらわれた。それは女が持ってきたものだった。中にはほんのりと赤く色づいた液体が入っている。食欲をそそる香りと湯気がただよう。俺は口の中が唾液で満たされるのに気がついた。
俺が微動だにしないでいると、女は苛ついたようにもう一度食器を突き出した。俺はとうとう我慢できずにその器を奪い、口つけた。ほのかに風味があるだけのスープは難なくのどを通り過ぎる。水に飢えていた体が満たされていく。俺は数分もしないうちにスープを飲み干した。
だが、あせっていたためか、最後の一口でスープが気管に入ってしまった。とたんに激しく咳きこむ。いつのまにかとなりに座っていた女が俺の背中をさする。しばらくしてようやく咳が落ち着いてとなりにいる女を見やると、呆れたような顔でこちらを見ていた。
無性に腹がたったが、お礼は言わねばなるまい。
「すまない、助かった」
「ハイ?」
女が首をかしげる。俺の言ったことが理解できないらしい。お礼なんて必要ないと言いたいのか?とんだお人好しだ。
・・・・・いや、待て。こいつは誰だ?なんで神獣といる?
ありえない事態に、俺はじっとこちらを観察する女に問い詰めた。
「おい、お前は誰だ!なんでここにいる!」
女は戸惑った顔をすると、立ち上がってこちらに頭を下げた。
「エート? 、 。 、 」
どうやら謝罪をしているようだ。しかし、女が話すのは聞いたこともない言語だ。何を言っているか、さっぱりわからない。いままで多くの国の言語を学んできたが、それのどれにも属さない。一体どうなってるん・・・・・・突如殺気を感じた。ばっとその方向を向くと、白い獣がこちらを睨んでいた。グルゥ・・・・・・と唸り声の幻聴が聞こえてきそうだ。
「なんで謝る!?いいから頭上げろ!!」
俺が殺される・・・・・・!!
まくしたてると、女が顔をあげた。すると、おもむろに自分を指差した。そして口を開く。
「オミ」
その単語だけ聞き取れた。女の名前かと思い、復唱する。すると女はにこりと笑ってうなずいた。そして今度は白い獣を指差した。
「ミーチャ。ね、ミーチャ?」
ミーチャ?この白い獣のことか?神獣に名前をつけるなんて・・・しかし妙な名前だ。
考えを読まれたのか、白い獣に睨まれた。思わず肩がびくついた。それを見た女はパタパタと白い獣のもとへ寄って、丁寧に獣の首を撫ではじめた。
獣はゴロゴロと大きな音でのどを鳴らす。また、気持ちよさそうに目をつむっている。仕舞いにはゴロンと仰向けに寝転がって、腹をなでてもらっていた。
高貴なはずの獣が何をしているんだ。呆れてものも言えずそれをながめていた。しかし、ふと女のほうを見ると、そちらも幸せそうな顔をして獣をかまっている。俺の存在なんて完全に忘れている。
すかさずわざと咳をした。女はハッと我に返り、少し顔を赤くしてうつむいた。
俺はため息をついて、自分を指差す。
「リックだ」
女は顔をあげ、キョトンとした。
「リック?」
「そうだ」
「リック!リックサン!!」
女は喜色満面の笑みで俺の手を両手で握ってぶんぶんと振り回した。あまりにも嬉しそうなので、何も言わずに振らされてやった。
だが、「リックサン」ってなんだ!?俺は「リック」だ!!
怒鳴りつけたかったが、白い獣がジロリとこちらを睨んだので怒声を飲み込んだ。
上機嫌の女に食事をもらい、白い獣と2人きりで(主に俺が)気まずい雰囲気で女の帰りを待ち、小屋に入ってくるなり俺の顔をみて大笑いしはじめた女を我慢できずに怒鳴りつけ、落ち着いた女がつくった食事を食べた。
俺は黙って、夕飯の最中でも肩を震わせる女をにらみつけた。
次は主人公視点に戻ります。そろそろ何か進展を・・・させたいな




