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拾ったものには責任を持ちましょう

お気に入り登録数が10件越えてました!ありがとうございます♪

 すみません、自己紹介が遅れました。わたくし、赤木 緒生おみと申します。うちの母(いわ)く、「細かろうが太かろうが、なかなか切れないほつれた糸のように、何が何でも長く長くしぶとく生きなさい」という願いをこめて名付けたそうです。


 年齢は18歳です。趣味は3度の飯と野菜作り。好きな動物は猫。苦手な教科は数学。

 高校3年生でした。園芸部の部長でした。決してリーダーシップがあるとか素敵な理由ではありません。3年の部員がわたし一人しかいなかったので、仕方なく部長をやってました。2人しかいなかった後輩は元気でしょうか。こんなわたしでもよく慕ってくれた、できた後輩だったんです。

 なぜ過去形かって?いまでは学校なんて行ってませんから。よって部活にも行ってません。微分積分とかもう忘れました。この生活には必要ないし。

 決して退学したわけではありません。いつのまにか森にいたんです。


 そして母の願いどおり、自給自足の生活でしぶとく生きています。かわいい相棒もいます。

 なのでお父さん、お母さん、わたしは心配いりません。わたしの安否よりも、大学4年生になったお兄ちゃんの就職の心配をしてあげてください。わたしがいなくなったからには、両親の老後の面倒をみられる人間はお兄ちゃんしかいません。


 ついでに兄貴、いいとこに就職して、いい嫁さんもらえよ。

 父さんと母さん泣かせたら、呪う。










「みーちゃん、ごはんだよー」


 今日も今日とてわたしはみーちゃんと自分のためにご飯を作る。小屋の外に出て、森に向かってみーちゃんを呼ぶ。現在、みーちゃんはお出かけ中だ。


 わたしがこの小屋に住み着いてかれこれ4ヶ月、みーちゃんと暮らすようになって3ヶ月が経過しようとしていた。すっかり自給自足の生活になれ、みーちゃんもすくすくと大きくなっていった。



 そう、すくすくと。それはもう、すくすくと・・・・・・。


 今ではすっかり秋田犬並みの大きさだ。


 決して(いや)ではない。大きくなったらなったで抱きごたえがあるし、かわいいことは変わりない。かわいいうえに(かしこ)い、自慢の相棒だ。しかし、さすがにそんなに早く成長してしまうとは思わなかった。

 まだみーちゃんが小さかったころ、わたしは日曜大工をしていたお父さんになったつもりで玄関に猫用の扉を作った。はじめはみーちゃんも喜んでそれを利用していたが、今では器用に自分でドアノブを回して出て行く。そして出て行ったら律儀に閉めていく。魚の小骨を丁寧に取り除く必要もない。


 なんか、なんかさみしい。


 3ヶ月前に感じていたものとは、まったく別のさみしさを感じる。でも、それは決して悲観的なものではなくて、以前のように涙がこぼれることはない。

 気をとりなおして、再びみーちゃんを呼んだ







 そして、このみーちゃん。先ほども言ったが、ものすごく賢い。そして森のすべてを知り尽くしている。

 まだみーちゃんが子猫の大きさだったころの話である。わたしはいまだかつて見たことのない植物をみつけた。ヨモギっぽい形をしているのだが、赤紫色なのである。食べられるのかどうかわからず悩んだが、紫キャベツとか紫芋とかあるし・・・と思い、一口食べようと口元に持っていった。


 口に入れる直前で、みーちゃんに顔面ホールドをくらった。


 どうやら食べてはいけない草だったらしく、草を持った手をガブガブと()まれた。そのころはまだ牙もろくに生えておらず、痛みもとくに感じることはなく、状況も忘れてのほほんと見守っていた。

 今のみーちゃんにそれをやられたら流血沙汰(りゅうけつざた)は間違いない。

 そして、代わりにと言わんばかりにキノコをくわえて差し出してきた。赤地に白の水玉と、赤い帽子がトレードマークの配管工のおじさんを思い出させるデザインだった。その人じゃないのに。

 おそるおそる茹でて食べてみると、シイタケの味がした。まさかである。お出汁もちゃんととれた。うまかった。


 もうひとつエピソードがある。

 ある日、わたしは水を小屋に運んでいる途中でうっかり転んでしまった。そしてひざと腕を擦りむいた。じくじくと痛むひざを泉の水で洗ったはいいが、洗うだけでは化膿(かのう)して破傷風になってしまうかもしれない。

 そんな心配をしていると、どこからかみーちゃんが走ってきた。口には黄土色の草をくわえている。そして、草をくわえたまま足に顔を擦りつけてきた。その草を患部にのせると、「なうん」と満足そうに鳴いた。そこで適当に包帯をつくり、すりつぶした草を患部に当てて過ごしてみた。すると不思議なことに、翌朝には皮膚が再生しはじめ、うすく瘡蓋(かさぶた)ができていた。

 いまでは傷跡すら残っていない。


 

 もうひとつ、みーちゃんはとても(たくま)しい。

 まだみーちゃんと暮らし始めて間もないころ、たった一晩で収穫間近の農作物を根こそぎ食い荒らされてしまうことがあった。しかし、これは当然の事でもある。ここは森、つまり野生の動物がたくさんいる。その動物達が農作物を食べてしまうのだ。

 食料に関しては自分とみーちゃんの分さえ得られればかまわないし、春のような涼しい気候とはいえ、長期間の保存はできない。なので多くの量ではないが、常に何かしらの作物を育てている。

 べつに動物達に罪があるわけではない。彼らは生きるために食べるのだから。しかし、わたしだって生きるのに必死なのだ。食料はゆずれない。

 夜に見張りをしようかと思ったが、さすがに夜の森は怖い。今まで昼間に森を歩き回って獣に襲われたことはないが、夜はやっぱり雰囲気がぜんぜん違う。わたしはとても悩んでいた。


 ある夜、ベッドでみーちゃんにその悩みを打ち明けた。

 そのときはまだ、みーちゃんがそこまで賢こかったとは知らず、ただの独り言のつもりだったのだ。するとみーちゃんは共感してくれたのか、「みゃおう!」と威勢よく鳴いた。そして颯爽(さっそう)とベッドを降りると、するりと猫用の扉から外へと出ていった。

 そのときは、みーちゃんはちょくちょく夜に外出することがあったので、気にとめていなかった。猫は夜行性だったはずだし、みーちゃんはもともと野生の子だしと、とくに心配もしていなかった。

 そして翌朝、わたしが畑のようすを見に行くと、ドーベルマンのごとくびしりと姿勢を正して見張りをするみーちゃんを見たのだ。赤々と実ったトマトには傷ひとつない。

 わたしは感動してみーちゃんを抱きしめた。みーちゃんはちょっと苦しそうにフガフガ言っていた。





 その後もみーちゃんの賢さと逞しさは顕著(けんちょ)にあらわれた。そのたびに驚き喜び、わたしは毎日をとても楽しく過ごしている。

 月日が経つにつれて、わたしはよりみーちゃんを信用するようになったし、みーちゃんもわたしをとても信用してくれていると思う。

 朝と夕方の食事はかならず2人で食べる。お昼に一緒に食べるのは週に2、3回程度だ。みーちゃんはしょっちゅうお昼寝や外出をするのだ。ときどき、一緒に森まで入って狩りや食材探しを手伝ってくれるので、そのときは一緒に食べている。


 そしていまは日が暮れかけた夕方。赤い夕日がまぶしい。


「みーちゃん、どこまで行っちゃったんだろう・・・」


 みーちゃんはいつもなら夕食が作り終わる前に小屋まで帰ってくるのだが、今日はすでに夕食を作り終わって30分ほど経つというのに帰ってこない。ごくたまにこんな日もあるのだが、少し心配になってくる。小屋の外で若干そわそわしながらもう一度みーちゃんを呼ぶ。


「みーちゃーん!ご飯できてるよー」


「なーう」


「みーちゃん!?」

 

 今ではすっかり低くセクシーになった鳴き声が聞こえた。その声のほうを向くと、大きな夕日を背負ったみーちゃんのシルエットが見えた。


 なんか映画みたい!!みーちゃんかっこいい・・・!


 すっかりみーちゃんに見惚(みと)れていたわたしだが、唐突にあることに気がついた。


「みーちゃん、何を背負ってるの?」


 夕日の話ではない。みーちゃんが背中に物理的な何かを乗せているのだ。大きさ的にはみーちゃんより一回り大きいような・・・そう、例えでいえば人間くらい・・・。人間?


「なぅん」


ドサリ


 器用にわたしの足元に背負っていたものを落とした。


「えーーーーー!!どこで拾ってきたの!!?」


 それは、まるでRPGにでてくる冒険家のような服装をした男性だった。

 なんだかひどく汚れているうえに、かなり衰弱しているようだった。さすがに元の場所に返してきなさいとは言わず、その男性を小屋のベッドまで運ぶことにした。



 それにしても、ここに来てから初めて人に会ったっていうのに・・・・こんなのあり!?












新キャラ登場です。

毎回これくらいかもう少しゆっくりめなペースで更新していくと思います。いまは春休み中なので、4月になったら遅くなるかもです・・・。

それまでにできるだけ多く書きたいです。

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