第四話 あの頃観ていた映画を、もう一度
告白の、二か月くらい前のことだった。
小学生の頃に観ていたアニメ映画が、
期間限定で映画館に戻ってくると知った。
いわゆるリバイバル上映というやつだ。
懐かしさもあって、彼女を誘ってみた。
「行きたい」
返事はすぐだった。
映画館で並んで座るのは、
これが初めてだったかもしれない。
上映が始まると、
子どもの頃とは、見え方が違っていた。
覚えていた場面。
忘れていた場面。
当時は気にも留めなかった台詞が、
妙に引っかかる。
隣を見ると、
彼女はスクリーンをまっすぐ見つめていた。
同じ映画を、
同じ時間に、
もう一度観ている。
それだけで、十分だった。
映画が終わると、昼前だった。
あらかじめ予約していた店に向かう。
少しおしゃれな、イタリアンのランチ。
自分一人では、あまり入らないタイプの店だ。
窓際の席で、パスタと前菜を頼んだ。
料理が来るまでの間、映画の話をした。
「あの場面、覚えてた?」
「覚えてたけど、印象が違った」
そんなやり取りをしながら、
料理を分け合った。
無理に話題を探さなくても、
会話は自然に続いた。
この人となら、
こういう時間を、
これからも重ねていけるかもしれない。
そのとき、
はっきりそう思った。
映画と食事が終わって、
駅まで一緒に歩いた。
別れ際、
何か言おうとして、結局やめた。
まだ、その段階じゃない。
そう思った。
だから、
あの日の告白は、
衝動ではなかった。




