第二話 赤を選ぶ子だった
彼女のことを思い出すと、
最初に浮かぶのは、いつも動いていた姿だ。
小学生の頃、外で遊ぶときはだいたい鬼ごっこだった。
彼女は捕まる側より、追いかける側に回ることが多い。
足が速かったわけじゃない。
ただ、迷いがなかった。
当時流行っていた携帯型のゲーム機を一緒にやったときも、
彼女は選択画面で立ち止まらなかった。
赤い色の方を、当然みたいに選ぶ。
「そっちなんだ」
そう言うと、
「うん」とだけ返ってきた。
理由は聞かなかった。
今思えば、聞くほどのことでもなかったのだと思う。
ある日、なぜか彼女の家で遊ぶことになった。
どうしてそうなったのかは覚えていない。
気づいたら、二人きりだった。
ゲームをして、お菓子を食べて、
テレビでは夕方によく流れていた、少し騒がしいアニメが流れていた。
会話は多くなかった。
沈黙が気まずいとも感じなかった。
今ならわかる。
あの時間は、特別だった。
でも、そのときの自分は、
それを特別だとは思っていなかった。
同じ学年の頃、
中古の本やゲームが並ぶ店で、偶然会ったことがある。
彼女は一人で立ち読みをしていて、
自分も同じだった。
目が合って、少し笑って、
「じゃあね」と別れた。
それだけの出来事なのに、
なぜかよく覚えている。
五年生になる直前、
クラスで「誰が好きか」を聞く遊びが流行った。
軽い気持ちで、彼女に聞いた。
返ってきた答えに、
頭が真っ白になった。
何も言えなかった。
そのまま、話は終わった。
転校の日、彼女は泣いていた。
声をかけることもできず、ただ見ていた。
あのとき、
何か一つでも言えていたら、
少しは違っていたのかもしれない。
でも、たぶん――
それでも、同じだった気もする。




