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20 お料理対決結果発表

           第二章

「まずは第三位! 横山班の特製餡掛けチャーハンと水餃子の点心セット!」


 名前を呼ばれたリーダーの横山が葛木の前に行き自分の班に向かって手を振ると賛辞の言葉が向けられる。


「続いての第二位! 飯田班の山菜のアヒージョとカプレーゼと焼きたてバターロール」


 この班は静香と才賀の元に向かおうとした時に人だかりが出来ていたところだ。

 料理研究会という部活動に入っている女子生徒が班員に居たようで、飯盒を使って米を炊かずにパンを焼き上げるという発想は誰も思いつかないだろう。


 更にこの状況下で敢えてのフレンチというのも独自性抜群で納得の順位なだけに遠目から眺める凛太郎はぼそっと呟いた。


「こりゃあ、俺たちの班は厳しいかもな」


 想像していたよりも遥かに高いレベルでの攻防に言葉を漏らすと、隣に座る萩原は声は掛かっていないが腰を上げ「ーー大丈夫」と呟くと映えある一位の発表に入る。


「そして第一位! 萩原班カレーライス!」


「やったぁぁあーーーー!!!」


 誰よりも先に静香が歓喜の声を上げる。

 発表を聞いた他の班の女子達は「流石萩原くんだね!」なんて黄色い声もあれば、一部の男子からは否定的な意見も飛んできた。


 確かに側から見ればそう思うかもしれない。

 実際にこのカレーを食べた凛太郎達からすれば素直に喜べる結果だが、この美味しさを知らない他の班員からすれば萩原が贔屓されたかの様にも見えてしまうし、何よりも本格的な中華料理や、ハイレベルなフレンチを退けて勝利したのが一般的な料理の代表のカレーなのだ。


 生徒の批判の声が高まってゆく中で、その様子を静観していた葛木は小さく笑うとゆっくりと口を開いた。


「……一位のこのカレーだが、市販のルーは使わずにスパイスの調合から始めたものだな? 九条」

「は、はい」


 萩原ではなく声をかけられたのは静香の隣に座る九条だった。話しかけられた当人も戸惑いながらもその言葉に頷くと葛木は話を続けた。



「更に水からの水分ではなくトマトや野菜をペースト状にしてーー」


 そこからはまるで一緒に調理をしていたのではと思う程に細かい調理の手順や大変だった工程、さらに驚いたのは使用したスパイスまで全て説明した上でテレビの食レポ顔負けの味の表現まで始める。


 単純な調理工程じゃないというのは、葛木の細かい説明から他の生徒も納得せざるを得ないほどに明白だが、何よりもその食レポの表現は批判を送っていた生徒すら涎を飲み込む程だ。


 葛木が話を終えた頃には文句を言おうとする生徒は誰一人もいなくなるどころか「カレー俺たちにも一口食べさせてくれ!」なんて声が続出する程だった。


 萩原はそんな様子を眺めて小さく笑みを溢して葛木の元へ向かうと上位三班のリーダーが集まる中央のテーブルに“三つの特別アイテム”が並べられた。


「……えっ?……」


 並べられた入賞景品のアイテムに期待感の中で見守っていた生徒たちから間の抜けた声が漏れる。

 騒つく中でお互いに顔を見合わせれば「これなら、入賞しなくても良かったわ」なんて言い出す男子もいるくらいだ。


 テーブルの上に並べられた葛木の特別アイテムは《縄》《スポーツドリンク》《マッチ》の三つだった。


 もはや景品と呼べる物としたら譲歩してもスポーツドリンク位のもので、縄とマッチに関しては意味が分からない。


 キャンプをする上で特別な利用方法があるか、普通の商品とは違って特殊な物なのかと考察をする生徒もいるが、明らかにそれは市販のホームセンターなどに行けば見かけるレベルの品物だ。


「おや、不服なら授与は無しでも大丈夫だぞ?」


 そんな生徒たちの様子を見つつも中央に集められたリーダー三人に含みのある笑みを見せながら問いかける葛木に何とも言い難い表情を見せる横山、飯田の二人の代表だが彼等が対応する前に萩原は一本前に踏み出した。


「もちろん、有り難く頂きます」

「そうか、それなら良かった」


 いつもの笑顔で軽く会釈をした萩原に葛木は満足げな表情を見せると話を続けた。


「それでは順位をつけたことだし一位の萩原から順に景品を選んでいけ」


「それじゃあ、これを頂きますね」


 三つ並べられた景品の中から迷いもなく萩原が選んだのは“縄”だった。

 正直この中から選択するとすればスポーツドリンクがマシな方だろうと思っていただけに凛太郎は思わず「えっ」と声を漏らす。


 二位の班はやはりと言っていいか無難にスポーツドリンク、三位がマッチを手に取ると景品の授与は終わり各リーダーが班の元へと戻る。


「このラインナップなら最悪二位でも取れそうだったけど一位が取れて良かったね」

「……いや、お前縄そんなに欲しかったのか? あれか? 性癖的なやつか?」


 笑顔で縄を抱えながら班に戻った萩原に皮肉混じりに言葉を投げかけるが気にする様子もない萩原は満足気に景品の縄をテーブルに置く。


 リーダーである萩原が選んできたものだし、正直特にどれを選んでも良いと思っていた凛太郎だが、あまりにも独特な選択に一歩引きながら言葉を投げれば「どうだろうね?」と萩原は茶化す様に返した。


 しかしながら、自らの班の勝利に誰よりも喜んでいた静香が黙っているわけもなく、わなわなと身を震わせているとテーブルに両手を勢いよくついて立ち上がる。


「な、な、なんで縄……スポドリでよかったじゃん!! みんなで乾杯出来たじゃーん!!」


 テーブルの上に置かれた縄を指差して声を上げながら萩原を見つめると頬を膨らませて明らかに不服そうな声を上げるのは予想出来た事だった。


 言いたいことは分からんでもないだけにフォローを送りたい所だが、当の本人といえば全くもって気にする様子など見せることなく「縄って案外と役にたつよ?」なんて王子スマイルで返している姿に凛太郎と九条は苦笑をこぼして頭を抱える他ない。


「静香……残念だが意味がないから諦めろ」

「な、縄跳びとか出来ますから大丈夫です!」


 凛太郎が静香の肩を軽く叩くと、状況を眺めていた九条も自分なりのフォローを入れるが流石に無理があるなぁなんて思いつつも既に後の祭りの状況に静香も観念したのか重いため息をひとつ吐き出した。


「……良いよもう、次は縄だけは無いからね!」


 軽く頬を膨らませながらジト目で視線を送る静香に「次は相談するね」と王子様は笑顔で返すと再度葛木の声に一同視線を移した。


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