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16 お料理バトル&恋愛作戦初日開幕!

            第二章

車内の盛り上がる声に目を覚ますと窓の外は一面緑に覆われた山道を走っていた。


少し前方に『この先一キロ○○キャンプ場』と記載された看板が建てられているのでこれに気がついたクラスメート達が騒ぎ始めたのだろう。


「凛太郎起きたー?」


睡気眼の中、視線を上げれば座席の上から身を乗り出してこちらを覗き込むように見る静香がいた。


「……ああ、そういやバスかここ」

「どんだけ爆睡しちゃってんのよ」


呆れ気味に瞳を眇めて凛太郎を見た静香はため息を落とすと「ね」と隣に座る萩原に視線を移した。


「全くだね。多分このレベルで爆睡していたのは〝凛太郎〟だけだよな静香」

「ほんとだよねー!」


隣を見てみればやたらと含みのある笑みを浮かべた萩原が凛太郎に対して名前を誇張する様に視線を滑らせる。


「ーーあ、いやこれは別に変な意味はなくて」


ぼんやりした思考の中で言葉の意味を理解をすると、焦りながら訂正する凛太郎に萩原はくっと笑いを堪えながら「分かってるよ」と一言告げると肩を叩いた。


「……お前本当は性格相当歪んでるだろ?」

「どうだろう?自分では分からないけどクラスの皆んなからはそれなりに信頼されてると思うから普通だとは思うけどね」


 そんな二人のやり取りを眺めていた静香は「仲良しだね!」と笑顔を送るとバスは速度を緩めてゆっくりと停車した。


「よーし! お前達到着だ。先ずは予定通り調理実習から開始するので荷物は特に持っていかなくていいから貴重品だけ忘れない様に」


 葛木が声をかけ立ち上がると生徒達は賑わいながら続々と下車して行く。


「よーし! きらら行こう!」

「はい。行きましょうか」

「二人とも降りる時、結構段差あるから気をつけてね」


 我先にと静香が九条の手を引いて立ち上がると、それに続くように凛太郎と萩原も席を立つ。


 こういう時の一言が王子様と言われる所以なのだろうと関心すると同時に「でも本性はそうじゃない……」と皮肉混じりに呟く凛太郎を見た萩原は小さく笑った。


バスから下車すれば、これこそキャンプ場と言わんばかりな広大な土地と緑、前方には各班が調理するのに十分な広さの調理スペースと木製の大きなテーブルに丸太を切ったような椅子が四個ずつ並べられていた。


勿論、普通のキッチンにある様なガスコンロやレンジなどの電化製品はない炊事棟と言った形式だ。


 食器や野菜を洗う用の水道は学校内にあるのとは変わりないが、米を炊く際や炒め物をする為の焚き火台など日常生活で使う事の無い器材に胸を躍らせる生徒は少なくない。


各班ごとに決められた調理スペースには事前に発注していた調理用の食材と各々で使用する調理器具など全てが用意されていた。

 

 普通の林間学校であれば全員で同じものを作るのが定番だろうが、ここに関しても葛木の采配が行き届いており各班で決めた料理なら何でも料理して良いという決まりになっていた。


流石に予算面での取り決めとして希少な食材や高級食材などは用意されないが指定された予算内であればどんな食材を発注しても良しとのことで調理に興味の無い生徒も前向きに参加の意思を示している。


「さて! 各班集まって貰った所で調理に入る前に一つ特別試験だ。各班毎に調理した料理の中から私が上位三班を決めて見事入選した班にはキャンプの際に使える特別アイテムを支給してやろう!」


葛木の発表にどういう意図か理解が追いつかない生徒達はお互いに顔を見合わせる。


キャンプをするという内容は各々理解はしているのだが、その詳細な内容に関しては誰も知らされていない。


グランピングの様な形式なのかアウトドアにテントを張ってという形なのかも知らされていないのでリアクションとしては非常に取りずらい物があるのだが『特別アイテム』という言葉の響きに男心を擽られた男子が声を上げれば同調するかのように周りも沸き立った。


「なんかよく分かんないけど、勝負なら負けられないねー!」


この班の中では性別的には女の子だが一番少年の心を持ち合わせていそうな静香が拳を握りしめて三人に振り返る。


苦笑を溢しながらもやる気を見せなければうるさそうなだけに凛太郎が「そうだな」と一言返事をすれば九条も「が、頑張りましょう!」と静香の気合いに圧倒されながらも頷くが瞳を眇めながら顎先に手を当てて真剣な面持ちの萩原はぼそっと呟いた。


「……これは勝ちに行かないとね」


他の班の生徒たちに関しても「勝つぞー!」なんて盛り上がりを見せているが余りにも温度感が違う神妙な面持ちに凛太郎が「どうした?」と尋ねるが既にいつもの王子スマイルに戻っている萩原は「いや、頑張って美味しいものを作ろう」と三人に声をかけた。


どことなく腑に落ちない気持ちを残しながらも頷いた凛太郎と特に気に留めていない女子二人は頷くと各々での調理作業の割り振りに入る。



今回、この班で作るのは至って定番にはなるが『カレー』だ。


調理する料理は自由なだけに他の班の話し合いでは中華料理や、それこそキャンプらしく骨付きステーキなんて所もあったが萩原班は静香の「キャンプ場での料理って言ったらカレーでしょ!」の猛烈なプッシュの元決定された。


調理の手間を考えた時に余り乗り気ではなかった凛太郎としては切って入れて煮込む位の物なら大歓迎だったので首を縦に振るのは勿論で萩原に九条も「静香がそんなに言うならそうしようか」の一声の元決定されたのだ。


作業分担に関しては凛太郎と静香が任されている仕事の一つで事前に決定していた各二名に別れての作業となる。


飯盒での炊飯や火起こしなどは凛太郎、静香ペア。

食材を切ったり調理の準備などは萩原、九条ペアだ。


事前のグループチャットでの会話で萩原と九条に関して料理が出来るとの話があったのも大きな要因の一つではあるが、もちろん凛太郎と静香の真の目的は別にある。


ここからが〝静香の恋愛作戦〟の開幕だ。



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