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14 静香の恋愛相談-2-

           第二章

「ーーと、まぁ大体こんな感じ。他にも良い所は沢山あるけど聞く?」

「いや、遠慮しておく」


 静香からの話を簡易的にまとめるとこうだ。

 高校入学と同時に学校近くのファミレスでアルバイトを始めたのだが、バイト先の先輩の男から何かとしつこく言い寄られていた。

 バイト終わりの遅い時間にその先輩が店舗近くで待ち伏せをしていてご飯などしつこく誘われている所を通りがかった才賀に助けて貰いそこから目で追うようになって気がつけば好きになっていたとまさに昔の少女漫画の様なベタな展開だった。


「……ラブコメとしては三十点だな」

「へ? なにが?」


 ぼそっと呟いた言葉に聞き返されると「いや、こっちの話」とだけ答えた凛太郎に静香は眉を寄せながら首を傾げた。


「んで、静香は才賀とは連絡したりしてるのか?」

「んー連絡先は皆んなで交換していた時に知ってるんだけどあんまり返事は来ないし、なんかそういうやり取りは好きじゃなさそうなんだよね……」


 困ったように苦笑を浮かべる静香を見て確かにそうなると中々打つ手はないと納得する。

 まだ性格や考え方なんていうのは話した事も無いだけに分からないが明らかに小まめに連絡を取り合うという感じのタイプでは無いように思えるし萩原のように会話を弾ませたり女子に気を使いそうなイメージも沸かない。


 本来であればこんな面倒ごとは真っ先に白旗を上げて御免被りたいのだが自分の意思で乗り出した船だ簡単に降りるわけにもいかない。


 出来れば本番前に多少は才賀とのコミュニケーションを図っておきたい所なのだが学校はもう休みだしぶっつけ本番になってしまうが仕方ない。


「やれるだけやってみるか」


 自分なりの覚悟を決めた凛太郎が真っ直ぐに見つめて意志を伝えれば静香は弾けるような笑顔を見せた。


「ぶっつけ本番になってしまうけど、上手い事やってみる。ちなみにだがこの件、萩原にも教えていいか?」

「萩原くん?」

「ああ、静香の事情もあるし直接的な協力は控えてもらうけど俺は才賀とは話したこともないし、あいつならその点クラスの奴全員と関係性出来てると思うから上手い事繋いでもらえたらと」


 実際は萩原は誰よりも早く静香の気持ちに勘付いていて、凛太郎に恋愛相談されてこいと言われた事実なんて言えるわけもない。


 しかし、目の前の恋路に真剣に向き合っている静香に対してその気持ちを利用するかの様に動いている罪悪感を少しでも消したかった気持ちと静香に対して自分しか知らないという“嘘”をつきたくなかったのかもしれない。


 もちろん自分の力のみではやり切れる自信が無かったので何でもこなせる王子様の協力を仰ぎたいというのは本音だ。


 凛太郎の提案に少し考えた静香は小さく頷くと「それじゃあ、よろしくです!」と両掌を合わせてペコっと頭を下げた。


 そこからは当日どの様にして才賀と話す機会を得るか、出来れば二人きりで話したい、可能な限り自分をアピールして欲しい、他にもキリがない程の無理難題を要求された。


 正直、その全てを実現させる確約は出来ないと伝えたが静香自身もそれは分かってくれている様で「何個かでも出来れば感謝だよ!」と笑顔を向けられた。


 期待されている分かなりプレッシャーは感じてしまうが、余りにも楽しそうに話す静香の様子を見ていると、昔の自分自身を見ている様な気持ちになり少しだけ懐かしい気持ちになった。


 話に一区切りついた頃にはお互いの飲み物も無くなり空になったカップを片付けて店を出る。


 静香はこの後バイトもある様なのでそのままバイト先に向かうとの事だが、凛太郎が駅併設のショッピングモールの駐輪場に自転車を止めていると聞くと電車で来た静香も共に駅に向かって歩き出す。


 待ち合わせをしてカフェで会話までしておいて距離を取って歩くというのも変な話なので並びながら駅に向かい歩いていたが、会話の内容もネタ切れなだけに少し気まずさを感じていると徐に静香が口を開いた。


「そういえば、鈴本って下の名前なんていうんだっけ?」

「凛太郎だけど何でだ?」

「うん、じゃあ今から凛太郎って呼ぶね!」

「……え? いや、その」

「凛太郎だって私のこと静香って呼んでるじゃん?」

「いやっ、それはお前がそう呼べってーー」


 昔の男友達からは名前で呼ばれてはいたが、中学時代の女子の知り合いの大抵は苗字で呼び合っていたし名前で呼び合う異性は親族を除けば元カノ位だっただけに妙な緊張感を感じる。


 本来であれば急な距離感の変化などから、あの感情が顔を出しそうな物だが静香のそれは下心や後ろめたい策略などは無く、完全に友人としてのそれと感じ取れただけに只々焦るという感情になったが、屈託のない笑顔を向けられるとどうにも拒絶は出来ずに頷く事を余儀なくされた。


 困った様子の凛太郎を見ると満足げな笑みを見せた静香は、「連絡する!」とだけ告げて改札口に向かって小走りで走り出した。


「自由すぎるだろ」と言葉を漏らした凛太郎が駐輪場に着き自転車のロックを外しているとポケットに入れた携帯が小刻みに震える。


 画面を見てみれば連絡は静香からで『よろしく頼むよ共犯者くん』という文面と共に例のうさねこがサングラスをかけて銃を構えている謎のスタンプが送られてきていた。


「共犯者じゃなくて協力者だわ」


 一人携帯を見ながらくすっと溢れた笑いに、対人関係で久々に笑ったな何て考えながら携帯をポケットにしまうと自転車に跨り帰路についた。



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