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13 静香の恋愛相談-1-

           第二章

「それで、相談ってなんだ?」


 二人掛けの円形テーブルがある席に腰掛けるとアイスコーヒーを一口運んでから問いかける。

 静香は先程と打って変わって木製のテーブルの木目を数えているのかと言う位に視線を落として話しづらそうに俯いていたが、少しすると意を結したように顔を上げた。


「わ、私、好きな人がいるの!」

「それは分かってる、んで俺に何を聞いてほしい」

「ーーえ!? なんで分かってんの!?」


 本人からすれば重大発表をしたのであろうが即答した凛太郎に対して目を見開いて唖然とした表情を見せる静香に「昨日の電話の流れで分かるだろ」と答えれば「そ、そうなの?」と不思議そうに応えては視線を逸らしラテを口に運ぶ。


「そ、その正直クラスの他の女の子の友達にも話したりしてないんだけど、今回の林間学校でその人とお近づきになれたらと思いまして……」

「そうか、それは良いと思うし応援するぞ」

「ありがと……で、鈴本にはその人と話すきっかけというか手助けをしてもらいたいなぁ……なんて思いまして」


 人差し指で髪をくるくると遊ばせながら頬を淡く染めて呟く静香は普段とはまた違った表情で新鮮に見えた。


「でも、俺は基本クラス内で友達と呼べる関係性の奴いないぞ? それに、俺なんかに取り持って貰うよりも同じ班ならそれこそ萩原とかの方が適任じゃないのか?」

「萩原はだめ! 他の子の視線がキツすぎるし私の友達で好きな子がいるから」


 なるほど、と軽く頷いた。確かにクラス内でも女子からの王子様人気は凄まじく、違った目的があれど積極的にコンタクトと取っていようものなら勘違いは避けられないだろう。


 良い意味でも悪い意味でも萩原と静香の二人は教室内で目を引く存在なだけに変な勘違いをされて交友関係に亀裂が走るのを避けたいというのは納得だ。


 その点、凛太郎であれば人目を引かないどころか、同じ班という事で冴えない隠キャに教室のムードメーカーな静香が積極的にコミュニケーションを取っているだけという構図になる。


 静香自身はそこまで深く計算するタイプでは無いだろうが、現状では他の話せる男子に頼むよりも自然で最善の案というのは間違いないだろう。


「んで、誰とお近づきになりたいんだ?」

「えと……そ、その」

「名前も教えてもらえなきゃ俺にはどうする事も出来ないぞ?」

「わ、わかってるよ! 私、付き合った事とかないからこういうの本当に慣れてなくて……」


 困ったように眉尻を下げて耳まで真っ赤に染める静香に思わず「えっ」と声を漏らせば「うるさい!」と声が飛んできて軽く肩を叩かれる。


 ギャルだからと言ってしまえば偏見になってしまうのだが、容姿に関しても相当に良く、男子から視線を奪う位には整っていて性格面でも明るく誰からも好かれそうな静香が今まで交際の経験が無いという事実はかなり衝撃的だった。


 側から見れば恋多き乙女なんて肩書きがあったとしたら、最も似合いそうな奴だけに、面と向かって恋愛相談をしているだけで顔を真っ赤にしながら恥じらう姿というのは相当なギャップがある。


「そうか、それは急かして悪かった。んで誰と話してみたいんだ?」


 小動物の様に小さくなってラテを一口飲みながら軽く深呼吸をした静香は頬を赤く染めながらも俯き気味にボソッと口を開いた。


「……才賀」

「才賀……そんな名前のやつ居たっけか?」

「ーーえ!? いるでしょうよ! 鈴本の二個前の席の才賀司だよ!」


 名前を聞いてはみたものの顔と名前が一致せずに聞き返した凛太郎に呆然とした表情を見せた静香は、肩にかけていた小さなハンドバックから携帯を取り出して写真投稿用アプリを開くと写真を見せる。


 映し出された投稿用アプリの画面は静香のアカウントの様で、クラス内で女友達と撮影した写真の後ろに映り込んでいる男子生徒を指差すと、顔を確認してようやく名前と顔が一致した。


 才賀司は教室内では萩原の様な感じでは無いのだが、凛太郎から顔を認識されるくらいには目立っている存在だ。

 特に勉強やスポーツに秀でている訳ではないのだが、分かりやすく言えばとにかく雰囲気と見た目が怖い。


 体格も良く高い身長に赤みがかった短髪で立てられたヘアースタイル、目付きは鋭くどこか人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している男子生徒だ。


 凛太郎自身、実際に話した事はないので実際はどんな人柄なのかは分かりかねるが、中学の時は素行が悪かったとか三年の怖い先輩に狙われているなど、そんな噂話を耳にしたことがある。


 しかしながら名前を急に言われても直ぐに認識する程には興味も無いだけに写真を見せられてようやく顔と名前が一致したわけだ。


「お前、中々に高難度の男との繋がりを俺に頼んでくれるな」

「え、なんで? 普通にクラスメートじゃん」


 良くも悪くも静香は人を分け隔てなく一個人として見ている。

 それ故に凛太郎があの感情を出さずにある程度自然体で話せているという事実があるのだが、第三者的視点から見ればクラス内の友達がいないオタクと不良なんていうのは決して相容れない存在で正に水と油の様な構図だ。


 中学時代は部活にも励んでいただけに少しヤンチャな教室内の男子とも同等に交流はあったものの、現状の高校生活ではそんな過去を知る友人もいなければ既にクラス内の関係性というのは出来上がっているだけに、才賀が見た目通りの性格だった場合は静香を取り持つどころか凛太郎個人が話しかけて仲良くなるのも難しいと思われる。


 やっぱり安易にこんな事に首を突っ込むべきじゃなかったとひとつため息を落とせば、そんな事を知る由もない静香は、蛇口から捻られた水が飛び出してくるかの様に才賀との関係性や好きになるきっかけになった出来事を話し始めた。





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