8、ルームメイト(後編)
「風よ。風よ。我の前を駆けよ。疾風となりて吹き荒れろ。風よ、風よ!」
「きゃっ!」
部屋の中に強風が吹く。これが魔法……!
「おっと、強すぎた? ごめんごめん。どう?」
ミアの言葉で我に返った。
「へ、あ、凄かった。それになんか、呪文も……」
「かっこいいでしょ。すごい悩んだんだよ」
私の「痛いの痛いの飛んでいけ」とはずいぶん違う。
「うん。かっこいいね」
初めて見た、人の魔法。本当に凄い。凄い、が、場所を選ばないと大惨事だ。部屋のものが散らかってしまった。
「ああ、ごめん。片付け手伝って」
「もちろん!」
その後、部屋を片付けた私達は、早いとは知りつつ食堂に向かうことにした。案の定誰もいなかったけど、ご飯を食べることはできた。出来立てで、とっても美味しかった。
談笑しつつ、明日の初授業に思いを馳せる。お給料日まで待っていたら到着がぎりぎりになってしまったが、無事に着いてよかった。部屋に帰り、ミアが上の段、私が下の段で寝ることを決め、物の整理をする。2人でさらに盛り上がった後、早めに寝ることにした。
彼女が優しくて良かった。寮生活も楽しめそうだ。だが、それ以上に自分が特殊なのかが気になってしまう。でも、「イレーネ」として、私が入り込む前からこうだったのなら、私は関係ないのかな。疑問は残るが、今は明日に備えて早く寝ることを優先しよう。