5、いよいよ到着
「着いたー!」
馬車で7時間。そこまで前の町と離れないとはいえ、私にとっては人生2回目の大移動だった。馬車から降りると、御者の人の方に向かう。
「ここまでありがとうございました。よかったらどうぞ」
「俺に? 嬉しいよ。ありがとう」
よかった。喜んでくれた。
「それでは、いってきます!」
「ああ、いってらっしゃい!」
ここが、ブリッツハンター育成学校。学校、というより小さな塾と言った方がしっくりくる建物に、不釣り合いなほど大きなグラウンドがある。こっちが寮だろうか? とりあえず受付に向かう。
「失礼します。明日からここの生徒になるイレーネ・ピュリスです」
「こんにちは。イレーネ、イレーネ、ああ。部屋は2階。突き当たりの右側ね」
「分かりました。ありがとうございます!」
「元気がいいねぇ。私はここの管理人のシムソンだよ」
「シムソンさん。これから1年間、よろしくお願いします」
「よろしくね」
管理人さんが優しそうでよかった。私は確実に周りの人に恵まれている。
「ここか」
今日から私のルームメイトになる子がここにいる。少しドキドキしつつノックをすると、中から返事が聞こえた。
「はーい」
「失礼します」
私は、ゆっくりとドアを開けた。