4、いざ学校へ(後編)
しばらく歩いてみたが、ここも前の町と同じ。俗に言う中世ヨーロッパ風の景観が広がっている。そして、やはり下水道が整備されているのだろう。道が綺麗だ。たくさんの屋台があるから、見ていて飽きないな。そう思いながらしばらく歩いていると、
「うわぁ、美味しそう!」
「1つどうだい?」
美味しそうなチキンを見つけてしまった……1つくらい買ってもいいよね? いや待て。我慢だ我慢。お金はできるだけ貯めないといけないのだから。
「今持ち合わせがなくて……」
「残念! また来てよ!」
食べたかったな。そうだ、御者の人に何かいいものを買うんだった。疲れている人には甘いものが定番なはずだ。これなんかどうだろう。なんだか金平糖みたいだな。魔法のお陰でそれなりに文明が進んでいるからこそ、庶民の私も甘いものにありつけるのだ。やはり魔法は最高である。さてと、そろそろ戻らねば。
「う、うぇーん」
あれ? 近くから小さい子の泣き声がする。
「どうしたの?迷子かな?」
泣いているのは5歳くらいの女の子だった。
「うぇ、つ、ひっく、」
「あらら、怪我しちゃったか。大丈夫だよ、ほら」
私は呪文を唱える。
「痛いの痛いの飛んでいけ!」
「っ、え、あれ?」
「よしよし、もう痛くないよ! だから泣かないで」
「ころんだのは……?」
「お姉ちゃんが魔法の力で治しちゃった! お母さんとかお父さんはいる?」
「おかあさんいないの……」
「そっか、じゃあ一緒に探そう?お名前は?」
「アニー」
「よし、それじゃあ、アニーのお母さんー! いませんかー! アニーのお母さんー!」
そのままその場で名前を呼び続ける。しばらくすると、
「アニー!」
「おかあさーん!」
お母さんが見つかった。良かった良かった。
「びっくりした……」
「良かったね、アニーちゃん」
「ありがとうございます。さ、アニーもありがとうは?」
「ありがとう」
「いえいえ。それでは!」
「ありがとうございました」
にしてもまさか私の魔法がこんなところで役に立つとは。いや、実のところこんなことくらいしか使い道はないのだが。
「あー!」
馬車が出発する! 急がねば!
「すみません!」
「おう、もう出るところだよ! 早く乗って!」
「はい!」
そして馬車が出発した。渡せなかったお菓子は後で降りる時に渡そう。後もう少しで学校に到着する。なんだかワクワクしてきた。