2、レストランMuller
「イレーネちゃん! 注文お願い!」
「はい!」
あの日、私が転生してから一年が経った。あの後、体調が回復するのを待って孤児院を抜け出した私は、働き先を見つけるために今いる町まで出てきたのだ。
「イレーネ」は早くギルドに登録してどこかのパーティーに拾ってもらいたいと思っていたのだが、流石にそれには無理がある。それに、迂闊なことをすれば簡単に死んでしまうのがハンターだ。特に、私のような単独では戦えない者は、パーティーのメンバー次第で生死が決まってしまう。
だから私は考えた。ハンターを育成する学校、そこに通って力を磨き、必要とされるようになろうと。そうすれば自分でパーティーを選ぶことも可能になってくる。ただ、当然学校に通うにはお金が必要だ。
そうして、私を雇ってくれるところを探し、色々追い返された先に辿り着いたのが、ここ、レストランMullerだった。ここはその名の通りミュラー夫婦が営んでおり、それなりの人気店だった。2人は私が住み込みで働くことを認めてくれて、それ以来、ずっと休まずにやってきた。そして今日も、私の慌ただしい1日が終わろうとしている。
「おじさん、おばさん、お話があります」
「ああ、イレーネ」
「今日渡されたお金で、ハンター育成学校にかかる費用が用意できました。最初に言った通り、私は明日ここを出て、学校へと向かいます。今まで、本当にありがとうございました」
「そうか、もうそんなに貯まったのか。よく頑張ったね」
「おじさん……」
「ハンターになるだなんてすごいじゃないの。イレーネなら大丈夫だよ」
「おばさんも……」
「明日は早いのかい?」
「朝9時にはここを出ます」
「そうか、それなら今日はゆっくりお休み」
「はい。ありがとうございます!」
私は2階にある部屋へと上がる。荷物はもうまとめてあった。それにしても、本当にいい人たちと出会えたな。恩返しの意味でも、必ず立派なハンターになりたい。そう思いながら、私は眠りについた。