第5話 彼の森
冒険者資格を失った。ギルドが閉鎖したのだから仕方ない。それまでに稼いだ金で何とかやっていくしかない。
俺は近くの村まで行って野菜や石炭を買ってきた。俺は金があったからいいけど、村の人たちは物々交換でやっていたからこれからが大変だ。魔物の影響か知らないが畑の作物は全部枯れてしまっていた。子供たちを食わせてやらないといけない。
狩りをしたり木を切ったりできる大人たちは残っているが、冒険者がいなくなってしまった。彼らは特殊な力を持っており、そのスキルと呼ばれる力を使ってこの村の生活水準はかなりまともなレベルに保たれていた。それが全て使えなくなってしまった。ただ一人残った俺は残念ながらスキルは一つも習得していない。冒険者は誰でもなれるわけではないけれど、スキルを使えるものはさらに限られる。
由良の父親でいえば【身体操作、二】のスキルを持っていた。スキルには第一接続と第二接続というのがある。
第一が身体操作や感覚機能、あるいは自然魔法なんていうものもある。
第二が後ろにつく数字で、一が人、二が動物、三が魔物、四が鬼、となっている。
【身体操作、二】の場合、身体機能が動物並みに強化される。大きな木を切るのは非常に危険だが、彼が加わるだけでかなり楽ができていた。
自然魔法の場合、第二項目は人か魔物しかない。動物は魔法に接続できず、鬼はまだ確認されていない。あるのではないかと言われてはいるが、基本的に第二項目で三以降が使える冒険者はまずいないそうだ。
身体操作などで二に接続した後は必ず一の人間に戻す必要がある。でないとスキルに必要なエネルギーをいつまでも消費し続けることになるからだ。
この冬牙村にもこういったスキルを使えた冒険者が数名いたのだが、皆この前の事件で死んでしまった。
村長の娘は自然魔法【外灯】が使えた。週に一度、夜になると村の広場は彼女の灯した明かりで幻想的な雰囲気に包まれていた。村の皆もそこで一週間の疲れを癒していた。週末でなくとも村長の家の前は夜になるといつも彼女の明かりが灯っていた。
もうそんな風景も見ることができなくなってしまった。
俺はあの後、何度かあの森へと足を運んでみたが、あれ以来声が聞こえてくることは一度もなかった。
あの声は何だったのだろう。俺はあの祠に祀っている動物――おそらく魔物の声だとばかり思っていたのだが、あの不思議な気配もあのとき以来感じることはなくなってしまった。
村の復興事務所となってしまったギルドで尋ねてみてもそういう話は村長に聞いたらいいと言われるだけだった。
その村長はというと、ただこの土地の神様を祀っている祠じゃないかとしか言わない。俺は気になったのであの木彫りの動物の人形を手を合わせ、拝借させてもらった。そのうち誰か知っているものが現れるかもしれない。
それからは毎日、木を切ったり瓦礫を片付けたり、水を汲んだり、しばらくはひもじい生活を強いられることになった。




