第4話 壊された村
村を焼いた火はその後しばらく燃え続けた。
全てが収まった頃、村の建物は半分が瓦礫となってしまった。村人たちは何とか風上の森に逃げ込み、命は助かったものの帰る家を失い、心にも深い傷を負うことになってしまった。
戦闘現場に残っていたのは右門と、村の少女――由良だけだった。
村の者たちの多くは、現場で何が起きていたのかを知らない。
魔物か来る――。
そう聞かされて家に避難していた。子供たちも全員隠れる準備をしていた。村の冒険者が全員集められたから大丈夫だ。大人たちがそう言って安心させた。
しかし、現実は残酷だった。勘のいい者は、最初の波動で異形の何かが来たことを悟った。急いで全員を屋外へ避難させた。その直後、炎が上がった。
半ば爆発に近い炎だった。亡くなった冒険者たちはほとんどが壁際で死んでいた。吹き飛ばされたのだろう。
最初の波動で右門はこの後の一方的な展開を容易に予測できた。誰にも対処はできない。自分が逃げろと叫んでも無駄なこともわかった。見殺しにするしかなかった。
自分も死ぬ――。
父と母との別れよりも、苦しい絶望が目の前に迫ったのを感じた。
しかし、受け入れるのにそれほど時間はかからなかった。それほど、自分の命にも大きな執着はなかったからだ。
子供たちの顔が思い浮かんだとき、目の前を曇らせていた絶望が少しだけ晴れた。
殺しがずっと怖かった。人は恐怖することから優しさが生まれる。右門は彼らの命が好きだった。
右門は、優しいが故に何もできない男だった。
人形が崩れた跡に何かが落ちていた。
小さな石のようだった。紫色に光っている。
右門も由良もそれには気づかず、それは置き去りにされたまま誰にも知られることはなかった。
生き残った村人たちは、その後ギルドを避難所にして夜のあいだを過ごした。
右門と由良もそこに身を寄せた。
ギルドの担当者に事の成り行きを伝え、そこから魔物は死んだことを皆にも伝えられた。
夜が明けると村は以前の面影はどこにも感じられないほど荒れ果てて見えた。
冒険者の亡骸もあちこちに見える。
泣き出す声や、怒りの声。ギルド員に食って掛かる者もいた。
右門も問い詰めてみたが、ギルドの関係者も誰も詳細は知らないようだった。
早く村を立て直さなくては――。
幸い怪我人が数人出ただけで、冒険者以外で死者はでなかった。
彼らが盾になったようなものだ。
生き残った冒険者は右門だけだった。
冬牙村のギルドはその日、閉鎖が決まった。




