第29話 沈む赤い日
洞窟の中を一歩ずつ行くと、壁の外灯石が一つ消えた。
まだ先の方にあるそれが消えて、暗闇が少しだけ延びた。
通路は奥で曲がっており、その向こうにはまた灯がぽつぽつと続くのが見える。
どうやらこの少し先に灯が消える原因があるようだ。
「消えた……?」
二人はその壁のところまで行くと、外灯石のあったところを照らして不思議そうにしながら雲海が言った。
「ここの外灯石は少し前に取り付けたばかりなんです。こんなに早く消えるはずない」
外灯石は触っても、ただの石でしかなく、気燃は完全に失われているようだった。
その様子を見て右門が先の暗闇を見ながら言った。
「……ここは気燃が出しづらい。おそらく宿したものもすぐに消えるのだろう」
雲海は右門が見ている前方を照らして確認した。
薄っすらと見える洞窟内にとくに変わった様子はない。
左側には川が流れている。
あの暗闇にきっと何かがあるようだ。
二人は気を付けながら先を進んだ。少し曲がった先にはまた明かりがずっと続いているのが見える。
外灯石が消えている部分のちょうど真ん中あたりに来たとき、右門は足を止めた。
川の音がおかしい――。
それは耳を澄ますとかすかに聞こえてくる。流れが僅かに乱れる音だった。
「この先に、何かある」
右門は川に下りて壁を確かめようとした。すると――。
「右門さん!?」
壁を確認しようとした右門は、そのまま奥の暗闇へと吸い込まれるように入って行ってしまった。
壁がない――?
左隅を流れていた川は、どうやらほんの僅かに流れが分かれ、壁だと思われていた暗がりの向こうへと続いているようだった。
奥には小さな通路があった。
「何も見えない。来てくれないか」
湧き水のような、川の音だけが先まで続いていた。それ以外は何もない。
雲海は言われたとおりに明かりを持って下へと降りた。
川の水が冷たい。二人はそのまま細い通路を先へと進んだ。
道は少し折れ曲がっていた。やがて遠くに小さな明かりがあるのを見つけた。
そこまで歩いて行くと、細い通路を抜け小さな広間へと出た。
壁に一つだけ外灯石が灯っていた。
そして下の方には燃石が同じく一つだけあった。
隅には石でできた小さな台があった。
その手前にそれより低い石が腰をかける椅子のように置いてある。
そこはまるで何かの部屋のようだった。
雲海は外周エリアの地図を取り出し、床で広げて確認してみた。
しかし、該当すると思われる場所には何も描かれていない。
完全な未探索領域――。
右門は部屋の壁の前に立ち、何かを見ているようだった。
そこには、またあの古代文字が小さく記されていた。
“6th weapon”
その横には、同じく小さく“12.11”と記されていた。
ここはいったい――。
右門はその文字から、少しだけ何かを感じた。
それは受け入れてはいけないような気がした。




