第17話 EAT細胞
行動を縛り付ける加勢の夜行スキル【天地返し】。
人間を相手にした場合、凄まじい速度で対象を老化させる。
六番の細胞を削り取る睨みが維持できたのは一時間と少しだった。
天井に張り付けられた状態で六番は少しずつ細胞増殖の力を押し上げていった。
天井から雫がこぼれる。
トッ、という音を立てて床に落ちると、あっという間に人型を形成し始めた。
「オオオッ!!」
ドゴオ
腰の辺りの高さになったところで、その顔面を思い切り縦拳で撃ち抜いた。
ゴン、という鈍い音を立てて壁のところまで吹き飛ぶと、空から大猿が咆哮を上げながら天を仰ぐ姿が降ってきた。
ゴオオオオオアアアッ
ズドオ
そのまま、潰れかけた六番の分身に降り注いだ。
桐生の宿魔、【芭論魔】。
分身を殺したようだ。
加勢の夜行スキルにより、六番の行動は封じられている。殺気にスキルで応じてくることはない。
「溢れたら殺す。お前と花筏は隊長の補佐を頼む」
浅田に向かってそう言うと、右手に握ったボールペンに力を集め始めた。
ズズズズズ
場が高揚し始める。
――森羅万象。
空間が立ち直った。
加勢が再び細胞を削り始める。
現在、減魔内で参戦している隊は一番、三番、五番、八番の四部隊だけだ。
あとは外地に出ている。
爆圧石は持ち主が恐怖や不安の感情を持つと対になってる石にその感覚が伝わるようになっている。
各隊にこの場所の状況が何となく伝わっているはずだ――。
三日以内に助けが届くとしたら一番近くの七番隊か、副長九間のいる二番隊だけだ。
浅田は再び火が灯った減魔の部屋の中を見渡すと、手にしていた黒檀を脇に抱えて床に座り込んだ。
かなりの隊士が力を使いきり、倒れている。
「桐生、何時間持つ?」
加勢の後ろで気燃を燃焼させているその後ろ姿に向かって言う。
「何時間なわけねえだろ、持って一時間だ」
「では交代でやろう」
そう言うと浅田は静かに目を閉じた。
EAT細胞。
悪魔は全てに反応する。
恐怖により活動を始め、増殖し、殺戮へと走る。
食い止める方法は恐怖しないことだ。
無念無想の殺し合い。
この後、力で抑え込み、溢れ始めたら殺す。
加勢がスキルで抑え続け、二人の隊長が後ろから交代で援護する。
それを四十時間繰り返すことになる。
時間は恐怖ではない。
恐怖があるとすれば、火が消えることだ。
それは命の火ではない。
三人は気が遠くなるほどの時間を、ただひたすら確かめ合うようにその場を燃やし続けた。




