表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

まぁ、誕生日って何かしらあるよね①


おはよう、諸君!実に気持ちの良い日だね・・・なんて、言うと思ったかい?


「シド・リウス、大変素敵ですよ。」


「うん、ありがとうヴェルディ。」


そう返事をして全身鏡を見てみれば、そこにはまだあどけなさ全開の、着飾った()()()幼児の俺が写っていた。

え、可愛いじゃないのかって?うーん、確かに年相応の顔をしたら可愛いだろうけど・・・。

実は今世の俺、表情筋が死んでるんだよね。

鏡の前で、全力でニコーってして見ても、その顔は微笑んでる程度。

普段の表情も含めて、顔のパーツがあまり動いてくれない。


まぁ、気持ちがすぐ顔に出るより、ポーカーフェイスでいる方が、王族としては良いんだろうけどさ。

けどなー・・・鏡に写る俺が、ほんの少しだけ困ったような表情をする。

俺的には、全力でげんなりとした表情を作ったつもりだったけど。

普段とは違い、俺と同じように正装しているヴェルディさんがそんな俺の顔を覗き込む。


「シド・リウス、どうされましたか?」

「んー、せいたんぎってたいへんだなーっておもったの。」

「んふっ!」


なんだよ、笑う事ないじゃんよ、全く・・・。

今日は俺にとって初の生誕儀の日だ。

しかし、俺は貴族の生誕儀を甘く見ていた。

何故なら、俺の生誕儀に向けての準備は、実に半年以上も前から始まっていたのだ。

まず最初に、俺はタタンさん達から、社交界での最低限のマナーとかを学んだんだけど、まぁ、それに関してはあまり苦労はしなかったかな。

だって走らない、叩かない、大声を上げないって・・・中身成人の俺からしたら、まぁ、当然っすねって感じの事ばかりだったからさ。

それにほら、貴族社会あるあるの目上の人からじゃないと喋りかけちゃ駄目ってやつなんか、俺の立場からしたら、ほんのひと握りしかいないわけですし、余裕余裕。


で、並行して生誕儀に参加する、同年齢の貴族の子の顔と名前を覚えさせられたんだけど、最初にヴェルディさんから笑顔で、シド・ザナと共に生誕儀を迎える方々の名前を覚えましょうって言われて、分厚い本を渡された時、めっちゃドキドキしましたよ。

え、俺と同い年の子どんだけ来るの?って感じで。

でも、実際は覚える子供は6人だけだったから、かなり拍子抜けしたよね。

本が分厚いのは、今回参加する全ての貴族が一緒に載っているからだった。

うん、普通に考えればそうだよね、けど言い方紛らわしいわ。

渡された本は辞書みたいになっていて、現貴族の偉い順から()()()()()()()で載っていた。

異世界=白黒の姿絵を想像してた俺は、ヒュー貴族だけじゃなく、様々な色や形をした異種族貴族の写真も載っている辞書並に分厚いその本を、興奮しながら何度も読みふけった。

そのおかげで気付けば俺は、暗記必須の6人の名前だけじゃなく、生誕儀に参加する、全ての貴族の名前と爵位も全部覚えてやりましたよ、ドヤァ。

学校卒業して、義務教育じゃなくなった途端に勉強が楽しくなるやつ。

あれと同じ感覚で、スラスラ覚えれたんだよね。

義務じゃないって素晴らしい。


そうして2ヵ月を切った頃に、今度は衣装選びが始まったんだけど、実はこれが1番大変だった。

前世じゃとくに試着とかせず、UNI〇LOとかで、ぱぱっと無難な服を買って着ていた俺が、来る日も来る日も、様々なデザインの衣装を着ては脱いで、着ては脱いでを繰り返すんだよ?

これが着せ替え人形の気持ちかぁ・・って、ぐったりしながら思ったもんだ。

ただ、疲れが溜まった時は、みんなから城下街や領地の話を聞いたり、アンジュに会いに行ったり、アル兄様の剣術訓練とかを見に行ったりして、自分なりの息抜きをしてなんとか乗り切った。


そして、あっという間に今日という日を迎えたわけだけど・・・身支度って、こんなに大変なもんだったの?

朝6時半に起床、その後30分ほどの時間をかけての朝食、別にこれは問題ない。

俺みたいに早寝する子は、当然早起き出来るからね。

ただ、その後の入浴とマッサージに2時間って、どんだけ時間使うのさ。

俺、4歳だよ?美容とか気にしないで良い年頃でしょ、普通の4歳児なら嫌がって泣くわ!

・・・まぁ、普段と違って、若いお姉さんにマッサージしてもらって、着替えまで手伝ってもらえたのは良かったけどね。

やっぱり、マッサージしてもらうにしても、着替えを手伝ってもらうにしても、若い女性の方が良いもんですなぁ。

ゴホン・・・で、今に至るってわけだ。

ちなみに俺が今着ている服は、上下共に黒を基調としたもので、上は何らかの植物をあしらった金の刺繍に加え、様々な装飾品の付いた民族衣装みたいな服だ。

下は膝をちょうど隠すぐらいの裾リブハーフズボンで、上着と同じように金色の植物の刺繍があしらわれている。

うん、実にお高そうだ。

え、リブが分からないって?ググればいいと思うよ!まぁ全体的に、インドとか中国とかの民族衣装みたいな感じで、俺的に嫌いじゃない。

それに美幼児は何を着ても様になるからね!


「シド・リウス。これからが本番ですよ。」


そう言って、ヴェルディさんが微笑みながらドアを開けると、外にはウィークの2人じゃなく、ディアンのタタンさんとマーロンさんがバルディさんと同じように正装姿で立っていた。

今日のウィークだったリンドンさんとメラルドさんは、他のウィーク達と所属する騎士団の団長と共に先に会場入をしているらしい。

なんでも、王族は初の生誕儀の時は自分だけではなく、自身のディアンとウィークも一緒にお披露目するらしいのだ。

それも会場だけでなく、国民全体に。


「タタン、マーロン!ふたりともカッコいい!」


俺がそう言って駆け寄ると、タタンさんは俺に向かって優雅な動きで片膝を曲げ、俺の目線と同じ高さに合わせた後、ゆっくりと目を閉じて、自分の右手首を左手で掴み、右手を開いたまま胸の中心に置いて会釈(えしゃく)する。

これは、この世界での目上の相手に(おこな)う最上級の挨拶だ。

屈んだまま目を閉じ、利き手を相手の前で封じる事によって、私は貴方に一切敵意は無い、という意思を表しているらしい。


「シド・リウス。()()()()()()の輝きが満ちますように。本日、貴方様の生誕儀を共に迎える事を心より嬉しく思います。」


タタンさんはそう言った後、ゆっくりと目を開き俺に微笑む。

え、やだ何このイケメン♡思わず胸がトゥンクしたわ。

そう思ってると、今度はマーロンさんが同じように屈んで挨拶をする。


「シド・リウス。リトアダールの輝きが満ちますように・・・タタン同様、本当に今日を一緒に迎えられて嬉しいです。」


そう言った後、少し照れたように笑うマーロンさんに俺はまたトゥンクする。

やだ俺の護衛、乙女恋愛ゲームの攻略対象みたいでカッコ良くね?俺が女だったら惚れてたよ。

あ、ちなみにリトアダールっていうのは、この国の神様、いわゆる創造神ってやつらしい。

目上の貴族に挨拶する時に必ず入れる言葉で、ようは貴方にこの先ずっと栄光と繁栄と幸せを!て意味が含まれているらしいよ。


「うん、ぼくもとってもうれしいよ!」


笑顔でそう言いつつ、俺は2人の腕に手を置き、自然に立ち上がるよう促す。

廊下で仰々(ぎょうぎょう)しい挨拶は人の目がちょっとね、ほら、今もそこのメイドさん達の目がハートになってますやん?ま、俺もトゥンクしたけどね、てか今更だけど、トゥンクってなんだ俺。


「お2人とも、そういった事は()()()()(おこな)った後にしてください。」


立ち上がる2人を見ながら、ヴェルディさんがやれやれといった様子で、自身の頭に手を置く。

てか、忠誠の儀?生誕儀じゃなくて?え、初耳なんですけど?俺の戸惑いを察したのか、マーロンさんが口を開く。


「シド・リウス、前にディアンに最も必要なものを説明しましたよね?」

「うん、ちゅーせいしんとつよさでしょ?」

「はい、その通りです。強さを戦いで証明した事は話しましたが、忠誠心の証明の仕方はまだ話していませんでしたよね?」


あぁ確かに。

と言うか、忠誠心はその名の通り心、つまり目に見えないもんだろ?そんなもの、どうやって証明するか疑問だった、けど。


「そのちゅーせいのぎでわかるようになるの?」

「はい、その通りです。やはり、シド・リウスは聡明でいらっしゃいますね。」


笑顔で答えるマーロンさんに(うなが)され、俺達はゆっくりと歩き出す。

俺の左右にマーロンさんとヴェルディさん、そして俺の前をタタンさんが先導する形で歩く中、ヴェルディさんも会話に加わる。


「生誕儀の前に忠誠の儀を済ませておかねばなりません。もちろんシド・ザナにも関係がございますので、我々と共に忠誠の儀に参加していただきます。」

「ぼくはなにをしたらいいの?」

「そうですね・・・忠誠の儀を執り行う際、()()()()から指示があるはずですので、それを聞いていただければと思います。」

「・・・じかんはかかる?」

「ふふっ、忠誠の儀と申しましても、時間は少ししかかかりませんので御安心下さい。」


うん、それを聞いて安心した。

また風呂みたいに2時間近くかかるとかだったら、俺はなんとかして逃げてたと思う。

ほら、幼い体は退屈な事に耐えられないんよ。

しかし、何するかは着いてからのお楽しみってやつですか、短い時間で一体何するんだろう?めっちゃドキワクするわ。

しばらく歩いていると、先導していたタタンさんの足が止まる。

目の前には立派な装飾の扉があり、この先で忠誠儀をするんだという事がすぐ分かった。


『お〜、扉だけでめっちゃ立派じゃん。RPGとかだとこの先が謁見の間だったりするんだろうな。』


フラグを立てつつも、心の中で感嘆の声を上げていると、目の前の扉が勝手に開いて、俺の身体が驚きで一瞬ビクつく。

どうやら内側に人が居たらしい。てか、よく俺達が来たって気付いたな・・・っ!


思わず声を上げそうになったが、すんでのところで耐える。

扉の先には、父親であるウィルニスと母親のリーリャさんら他数名のヒューリアに加え、身長3mあんじゃねっていうゴツい人や全身真っ黒で頭に触角の生えた人、そして先程の扉の左右にねずみのような耳をした男女が立っていたのだ。


主人公はパパと全然過ごしていないので、心の中で呼び捨てしていますw

服の色は個人的にはグーズグレイを使いたかったんですが、普通のリーマンは色に詳しくないかと思って、黒と表現しました。ちなみに上はシャルワニみたいな感じです。靴下も刺繍入で、靴は革靴でも想像していただければ(何

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ