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月日が経つのは実に早い②


で、ディアンはこれくらいにして、次はウィークについてだ。まぁ、まんまだけどね。曜日事に決まった人が護衛をするからウィークだ。

ウィークは、4つある王国騎士団の中から2人ずつ派遣する形で、合計8人いる。なんで8人かって?この世界の1週間が前世より1日多い8日間って事もあるけど、まぁ騎士団にも色々あるんだよ。


各騎士団長が自分の騎士団から選んで任命するからか、一部のウィークってなんだか面倒くさくて、正直ちょっと苦手なんだよね。

あ、でもウィーク8人の内、2人は女性だったんですよ、1人は明るい性格の筋肉隆々のアマゾネスみたいな人で、もう1人は今護衛をしてくれている、鋭い目付きが特徴の基本無口なコトコさん!うん、護衛だもんね!護衛だもんね!!(2回目)


しかし、諸君!こう思わなかったかね?ディアンをどうして、ウィークと同じように騎士団から出さないのか?ってね。ふふふ、もちろん俺に抜かりはない、しっかり説明してやんぜ!

最初に言った通り、ディアン希望者は指定年齢内であれば、貴族平民問わず誰でも参加可能・・・つまり、騎士団に所属していても、ちゃんと申請すれば参加する事は可能だそうだ。


しかし、騎士団員の実力者のほとんどは所属する騎士団の団長やアシドラ王に忠誠を誓っている。なので残っているのは、実力が伴っていない、家督を継げないご子息ご令嬢ばかりになるわけで。

仮に参加したとして、本選ではなく予選で一般人に負けようものなら、所属している騎士団の面汚し扱いで、退団するまでずっと肩身の狭い思いをする事になるらしい。

家名にも泥を塗った扱いになるらしいし、何より騎士団員である自身のプライドもズタズタになる事必須。

これだけのデメリットを考えれば、いくら名誉や上の爵位が貰えるって言われても、余程自信のある人以外は騎士団から参加しないらしい。まぁ、当然か。


そんな賭けに出るくらいだったら、騎士団長にゴマすりでもして、ウィークに抜擢された後に王族に取り入った方がいいって思うだろうし・・・てか、そう考えるとますますウィーク苦手になっちゃう。

いやいや、ナナセさんやコトコさんみたいに実力で選ばれた人もいるし、大丈夫大丈夫!大丈夫・・・ですよね?


こうしてタタンさんやマーロンさんから聞いたディアンとウィークの話を、俺が得意げにヴェルディさんに話したら、何故か整った顔で意味深に微笑まれた。

後日、タタンさんにヴェルディさんが騎士団出身だったと聞いた俺が、もの凄く驚いたのは言うまでもない。見た目は眼鏡かけた細身の優男なのに・・・ヴェルディさん、恐ろしい人。


ちなみにディアンの階級は、1代限りとはいえ前世で言うところの公爵の次に偉い侯爵と同じ扱いらしい。だから、平民上がりとはいえ、なんびとたりとも、マーロンさんを馬鹿にする事は出来ないのだ。てか、俺が絶対に許さん!!!


・・・まぁ、これで俺の3歳になるまでの流れはだいたい分かっただろうから、最初の俺が急いでた理由を話すとしようか。急いでいた理由、それは今、俺の目の前にある扉の先にあった。

俺は息を少し整え、控えめに扉をノックする。


「しどです、はいっても()()()ですか?」


ふふ、流暢に話したら気味が悪いだろうからな・・・ワザと舌っ足らずに喋るなど、俺には造作もない!


「ええ、入っていらっしゃい。」


優しい声に俺が扉を開けて(タタンさんにも手伝ってもらって)中に入ると、そこには生まれて間もない()()()を抱っこしたリーチェさんが、ベッドの上で俺に向かって微笑んでいた。


「アンジュ、ほら、()()1()()()お兄様が来てくれたわよ。」


リーチェさんが僕の方にそっとアンジュを向ける。


「うわぁ・・」


光属性のリーチェさんと同じ、金髪でハニーゴールドの瞳をしたアンジュが俺の顔をじっと見つめる。そっと指をアンジュの手に乗せれば、その小さな手で俺の指をギュッと握ってきた。


「あんじゅ、ぼく、しどだよ、あんじゅのにいちゃだよ。」


「ふふ、シドったら・・・()()()()()()()()()と同じ事をするのね。」


「あるにいちゃ、きてたですか?」


「えぇ、少しの間ね。アルスラン・ザナもアンジュの手に指をのせて微笑んでいたわ。」


アルスランは、この世界の俺の腹違いの兄だ。だからリーリャさんは、俺の時とは違い、アルスランの事は()()付で呼ぶ。

でも、アルスランを敬称付きで呼ぶからといって、王妃同士の仲が悪いとかではないらしい。むしろ、アルスランの母親であるエイマさんとリーチェさんは、姉妹のように仲が良いそうだ。


ちなみにこの世界では王や女王をメレーフ、王妃や王配をレリッサ、王や女王の兄弟姉妹をアデラ、そしてアルスランや俺、アンジュといった王子王女はリウスと名前の後に付けて呼ぶのが敬称になるらしいんだけど、男女同じ言い方の敬称だからか、俺の翻訳特典が上手く機能しなかった。

ディアンやウィークもそうだけど、元いた世界で表現出来ないものに関してはそうなるんだろうな。


さて、話が少し逸れたがもうお気づきだろう。俺が急いで来た理由・・・それは、妹のアンジュと初めて会う事が出来るから!でした。

というのも、前世の俺は一人っ子で、友達がめちゃくちゃ兄妹の愚痴を零してても、やっぱり羨ましくてたまらなかったんだよね。俺に妹か弟がいたら、とことん甘やかすんだ・・・なんて思ってた時もあるわけよ?

そしたら、今世の母、リーチェさんがご懐妊!そして待望の妹を無事に出産!俺、兄ちゃん!!そりゃテンション上がって、馳せ参じるってもんでしょ?!


ぁ、もちろんアンジュだけじゃなくて、アルスランの存在を知った時も、嬉しかった・・・嬉しかったけども。俺には前世の記憶があるわけで。

例え今の見た目は3歳児でも、精神年齢は35歳、大人びたヴェルディさんならまだしも、8歳のアルスランを兄として見るのは、流石に()()()()だ。

そう、今は無理、である。


実はこの身体になってから少しづつ、魅力的なリーチェさんの胸や女性のパンチラとか見ても(ほら、視界的に見えるやん?)俺は全く興奮しなくなっていた。

それに気分の浮き沈みも激しくなっていて、すぐに泣きたくなったり、嬉しくなったりと、くるくる変わる感情を制御するのが実に大変だったりする。

つまり多少なりとも、精神が肉体に影響をうけている・・・って事だろう。


だから今はまだ無理でも、いずれは本気でアルスランの事を兄と思える日がくるかも知れない。まぁ、先の事は分からないけどね。よし、とりあえず今日から心の中でも、アル兄様呼びしておこう。

そんな事を考えていると、リーチェさんが俺を見つめながら感慨深そうな声をあげた。


「今年はアルスラン・リウスの生誕儀(せいたんぎ)だったけど、来年はシドも生誕儀を迎えるのね・・・本当に月日が経つのは早いわ。」


そう言いながら、リーチェさんは俺の頭にそっと手を置き、愛でるように優しく撫でる。

生誕儀、前の世界で言うところの誕生日みたいなもんだ。だけど前の世界と違って、生誕儀は一生でたったの4回しかおこなわれないらしい。まぁ、とりあえず4歳、8歳、12歳、16歳になる年は、大勢の人達が集まって、盛大に祝う風習らしいんだよね。


まだ理由は分からないけど、何かしら意味あるんだろう。ここ最近、俺が聞いたら大体は普通に教えてくれるようになったし、後で聞いてみようかな?

いやでも、結構な頻度でいろんな事聞いてるし、自重するべきか・・・いや、今更か?ヴェルディさんなんてとくに気にしてないみたいだし・・・うーん、悩むなぁ。あ、ちなみに年齢は普通に数えていくらしいよ。


「せーたんぎはたのしい?」


「えぇ、とても賑やかで楽しいはずよ。皆がシドをお祝いしてくれるわ。」


「みんなって、とーさまとかーさまも?」


「ふふ、もちろん。他にも沢山の人達がお祝いしてくれるわよ。」


「わ〜い、たのしみ〜♪」


く、子供らしく振る舞う俺に微笑むリーチェさんが、聖母みたいで眩しいぜ。

しかし俺も来年は生誕儀かぁ・・・年齢的理由で、社交の場はもちろん、アル兄様の生誕儀にも参加出来なかった俺としては、不安半分楽しみ半分といったところだ。

しかし沢山の人達か、今のところヒューリアと数名の異種族しか見てないけど、実はリザードマンとかドワーフとかの異種族とかもまだまだいたりするのかな?うわ、気になってきた!


「かーさま、せーたんぎには・・・」


「ふ・・・ふやぁっ、ふやぁっ!」


「!あらあら、アンジュどうしたの?」


「失礼します。」


俺の声と重なるかたちでアンジュがぐずり出すと、横に待機していたタタンさんが、すぐさま(かが)んで俺に耳打ちをする。


「・・・シド・リウス、そろそろ戻りましょう。」


タタンさんの言葉に俺はすぐ頷く。ここに俺がいたら、リーリャさんはぐずるアンジュに集中出来ないだろうからね。うん、俺は聞き分け良い子だ!そして、赤ちゃんに優しい男だ!


「かーさま、ぼく()()()()()。」


「えぇ、シド。またいつでもいらっしゃい。」


「はい、またきます!」


パタンとドアが閉まった後に、俺は少しため息を吐く。実にあっという間だった。滞在時間10分も満たなかった気がする。

今世は父親はもちろん、母親であるリーチェさんともなかなか会えなかったりする。この国のトップとその妻だからね、腐敗した国じゃない限り忙しいのは当然か。


とくに父親であるアシドラ・ティアトールに関しては、俺の精神が完璧に幼児だったら忘れてるぐらい、それくらい長いこと会っていない。むしろ、タタンさんをパパと勘違いしててもおかしくないレベルだ。

リーチェさんは合間を縫って、俺と一緒に寝てくれたり、絵本を読んでくれたりしたけど、アンジュを出産する少し前からは、全く会うことが出来なくなっていた。

だから、今日はアンジュに会うのはもちろん、正直リーチェさんに会うのも楽しみにしていたんだと、今更ながらに気付かされた。


閉まるドア、名残惜しくて、下を向く。


おっといかん、俺の心の中の友〇が思わず俳句を読んでしまったぜ。しかし本当、急速に幼児化が進むねー、俺。


「シド・リウス、その・・・」


「ねー、ねー、にゃにゃせ。せーたんぎはどーして4ちゅだけなのー?」


すぐさま俺は声をかけてきたナナセさんに、パッと明るい表情を見せて話しかける。まぁ、あんまり()()()()()()()()()だろうけど、声で分かるでしょ。


「うーん、シド・リウスには、まだ難しいと思いますよ。」


「えー、だいじょぶだもん。ぼく、わかるもん。ねー、たたん?」


「そうですね、では部屋に戻るまでの間、ナナセに説明させるとしましょう。」


「ちょ、タタンさん?!」


「・・・ではナナセさん、宜しくお願いします。」


「コトコさんまで?!」


面食らった後に、本気で困ったような表情を見せるナナセさんが面白くて、俺もタタンさんも、普段は感情を表に出さないコトコさんまでも、耐えきれずに笑ってしまう。そんな俺達に、ナナセさんは一瞬キョトンとした後に釣られて一緒に笑った。


俺は大丈夫だよ、ナナセさん。気にしてくれてありがとう。もちろんタタンさんもコトコさんもね。

心の中でお礼を言いながら、俺は部屋に戻るまでの間、たわいもない会話をみんなとするのだった。

ちなみに主人公は知りませんがヴェルディさんは22歳、タタンさんは28歳、マーロンさんは21歳とみんな主人公の中身より年下です。海外顔なので、大人びて見えます。羨ましい限りですね(何

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