俺はこの世界を知っていた。
初めましてm(*_ _)m{人生初小説なので、いたらない点が多いと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
ーカシャンー
頭の中で、何かが開くような、そんな音がした。
次の瞬間、俺はこの世界の事を全て思い出した。
あぁ、そうか・・・ここは。
雨の中、あまりの事実に、俺は思わずふらついた。
妹アンの姿はもう見えない。
おそらく、原作通りに逃げたのだろう。
「シド・ティアトール、お前には今度こそ、ここで消えてもらうぞ。」
悪役お決まりのセリフを吐く男とその仲間に対して、俺はどうしようもない感情に襲われる。
五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い!
「・・・・ッァア"ア"ア"ーー!!!」
自分が出したとは思えないような咆哮。怒り、悲しみ、困惑、感情がまとまらないまま、俺は剣と魔法を振るう。
「グァッ!」
「ゲェッ!」
「ガァッ!」
次々と蛙を踏み潰したような声をあげながら、絶命する男達。
前世の争いを知らないままの俺だったら、剣で相手を切るなんて事はもちろん、何も出来ないまま、この男達に殺されていただろう。
どれくらいたったか分からない。
気付けば、立っているのは俺だけで、男達は皆絶命していた。
その姿を見て、あの日の出来事が重なって、俺は耐えきれず、気付けばまた叫んでいた。
「ッア"ー!アア"ー!アア"ア"ーー!!!」
雨の中、咆哮をあげ続ける。遠くから徐々に近付いてくる明かりは、おそらく騒ぎに気付いた騎士達だろう。
どうして、今思い出した?
どうして、今更になって気付いた?
どうして今になってあの話を思い出した!!?
どうして、どうして、どうして!!!
「・・・なんで、今まで思い出せなかったんだよ・・・どうして・・・今更!!」
自問自答を繰り返し続ける俺にフッと影がかかった。
「シド!一体何があったんだ!」
俺の両肩を掴みながら、ラシードが声を荒らげ問う。かなり動揺しているらしく、他の騎士がいるにもかかわらず、敬称を使わなかった。
「ラシード・アデラ・・・アンが、アンジュ・ティアトールがこの国を出ました。」
「なんだと!それは誠か!?」
動揺するラシードに俺は無言で頷く。
俺の周りにある死体にこの国を出たというアン。ラシードを含めた騎士達に動揺が走る。
「急いでアンジュ・リウスを捜索するんだ!まだ、遠くに行っていないはずだ、捜して連れ戻せ!」
「「「はっ!」」」
無駄だ、アンは絶対に見つからない
。
ラシードの指揮を聞きながら、俺は心の中で呟く。
俺はこの後どうなるかを知っている。
いや、俺はこの世界の事を知っていたのだ。
そして、結末も。
「シド!」
不意に名前を呼ばれ、顔を上げるとソフィアが泣きそうな顔で、俺を抱き締めた。
婚約しているとはいえ、本来人前で抱きつく事などあってはならない。
でも、今の俺には、その温もりが嬉しかった。そして、そのあたたかさが俺を奮い立たせる。
・・・そうだ、この世界の結末がなんだって言うんだ。
俺は知っている・・・なら、今からでも変える事が出来るはずだ。
いや、絶対に変えてみせる!
俺はこの世界、
「高校生の俺が異世界転移で無双する!」を全力で変えてやるっ!!!