⑤ 一体何が!?
まずパッと目を引いたのはジョエル・ルカーナである。
しかしジョエルはヒロインが可愛い系の時ではなく、癒し系や小悪魔系の時に現れる事が多いのだが、まさかの同じクラスである。
そして何故かとてつもなく肩身が狭そうなイワン・エルプは、以前のような堂々とした風格は無い。
逆に周囲の視線を気にしているように見える。
そしてゲームの何倍にも老け込んでしまったアリア・ヴェーバー。
お洒落やドレスに拘り、狡賢く意地悪な感じだったのだが、今は覇気がなくどんよりとした雰囲気が漂っている。
つまりキャラクター的に威勢のいいはずの二人が、何故か反対に勢いがなく地味なキャラクターになっていた。
(この変化には何か理由がある筈…!)
そろそろ色々と突っ込む事にも疲れていると目の前に現れたのは……。
(嘘でしょう!?アレってローレンス?いやいや、まさかそんな………え!?)
二度見しても三度見しても、やはりローレンスらしき男が机に向かって本を読んでいるかと思えば、ガリガリとノートに文字を書き込んで真面目に勉強してる。
(七三分けに眼鏡………?ローレンスってもっと華やかじゃなかった?)
そんな時、ある言葉が耳に届く。
「ジョエル殿下」
「ご機嫌よう、ジョエル殿下」
「皆、一年間宜しくね」
和やかな笑顔で挨拶を返しているのはジョエル・ルカーナである。
ジョエルは公爵家の養子で訳あり令息という設定ではなかっただろうか…?
それなのに何故"ジョエル殿下"と呼ばれているのだろう。
どうやら知らない間にローレンスではなくジョエルが王太子になっているようだ。
(どういう事…?一体、何があったというの!?)
ヒロインが可愛い系の時はローレンスやイワンが出てくる可能性が高いので、ルート的に間違ってはいないが、些か知っているキャラクター達と違いすぎではないだろうか。
愕然としながら、キャラクター達を確認していると…
ーーーガラッ
教室に足を踏み入れる一人の少女。
その少女が入って来た瞬間、空気がガラリと変わる。
「ご機嫌よう」
「クリスティン…!」
「全然来ないから心配したのよ!?」
「クリスティン、随分と遅いじゃないか」
"クリスティン"と呼ばれた令嬢は髪の毛をバサリと掻き上げる。
教室内に広がるほんのりと甘い花の香り。
ジョエルが直様立ち上がり、クリスティンの元へと向かう。
そして手を取ると愛おしそうに口付けるジョエルを見て、震えが止まらなかった。
(私ですらクリア出来なかったジョエルのハッピーエンドを攻略済みだというの!?!?)
お目当てはジョエルではないから良いものの、驚きを隠せない。
それに、あのクリスティンという少女の周りにはエンジェルとコーリーの姿。
良い方に変化しているキャラクター達の中心にクリスティンがいるという事は…。
(まさかクリスティンが転生者!?)
「アイラとシェイラが"寂しい"って離してくれなかったの……あの二人の怪力ってどうにかならないかしら」
「あらまぁ…それにしてもアインホルン領から学園まで遠くない?クリスティンは寮には入らないの?」
「えぇ、わたくしは寮でもいいけど……」
「駄目だよ?僕が干渉できないから」
「「……」」
「って、ジョエルとアイラとシェイラが言うから馬車で頑張る事にしたの」
「何かあれば城に泊まるといい。クリスティンが過ごしやすいように一部屋改造しておいたんだ」
「ジョエル……最近、貴方の適応能力の高さがとても気持ち悪いわ」
「そんなに褒めないでよ?照れるから」
「チッ…」
あのジョエルに平然と気持ち悪いと言い放つクリスティンには驚かされるばかりだ。




