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⑥⑨ とある男の逆転劇?(2)


「僕の父は陛下の弟なんだ」



どうやらジョエルは国王の弟の子、つまりローレンスの従兄弟にあたるようだ。

そして、その王弟のお相手というのがミーレ王国の第2王女であった。


ジョエルの容姿は母親の血を色濃く受け継いだものだった。


ミーレ王国の王族は珍しい白銀の髪と瞳を持っていた。

そこにマーリナルト王国のブルーが混ざったような形でジョエルに受け継がれた。


駆け落ち同然で結婚した二人は、まだ幼いジョエルを残して事故でなくなってしまったのだ。


ジョエルは病弱であった為、常に雪が積もっているミーレ王国の氷点下の寒さには耐えられないと判断して、気候のいいマーリナルト王国で育てることになった。


それに加えてミーレ王国の王族は厳しい決まり事がある事で有名だった。

マーリナルト王国の血が混じったジョエルを引き取ることを拒否した為、自然とジョエルを引き取る流れとなったのだ。


そして信頼が厚いルカーナ公爵の元に養子として預ける事となった。


何故、王家で引き取らなかったのか……。

それは王族でいる限り、食事や飲み物などに毒などを盛られる可能性があるからだ。

その為、幼い頃から毒に慣らすのだが、ほんの少量の毒でも耐えられないだろうと言われたジョエルを王城に置くわけにはいかなかった。


それ程にジョエルの体は弱かった。


ジョエルはとても食が細く、食べられるものが少なかった。

困ったルカーナ公爵は、もしかしたらミーレ王国の物が口に合うのではと、縋るような思いでトビアスの元を訪れた。


そこでクリスティンとジョエルは初めて出会ったのだ。


ジョエルが咳き込みながらスープを啜っている横で、美味しそうにモリモリとご飯を食べるクリスティンの姿にジョエルは釘付けになった。


そしてクリスティンとオスカーに釣られるようにして、ジョエルも少しずつ食べ物を口に運んだ。

しかしその夜、熱を出して寝込んでしまったジョエルは、暫く体調が良くなるまでアインホルン邸に滞在することとなった。


クリスティンは毎日ジョエルの為に花を届けたり、おすすめの食べ物を持ってきてはジョエルと一緒に食べていた。


そして熱が下がり、ジョエルの口に合う食べ物を見つけたルカーナ公爵は屋敷に帰る事になった。


「帰りたくない」と渋るジョエルにクリスティンは手を掴んで「また美味しいものを食べながらお茶しましょう?約束ね!」と優しく笑いかけたのだった。






「その瞬間、僕は恋に落ちたんだ……そして父上とアインホルン辺境伯に許可を貰って月に一回、クリスティンに会いに行っていたんだ」


「……」


「あの後からずっと僕はクリスティンと婚約したいと言っていたんだけど、心変わりするだろうって相手にしてもらえなかったんだ………だからこうして一途に君だけを思い続けてた。ずっとね…」


「……!」



ジョエルの熱い想いとは裏腹に、全く二人の出会いを覚えていなかった。


(……どうなっているのよ、クリスティン!)


恐らく、マーリナルト王国の貴族達と交流がない代わりに、異国の船からの沢山の人達と交流していたせいか、そんな記憶の一部として流してしまっていたのだろう。


そしてクリスティンはジョエルが来る度に自分が大好きなお姫様と王子様の絵本を一緒に読んでいた。

それを見ていたジョエルは、クリスティンの理想の男になれば振り向いてくれるかもと努力し始めたのだという。


エンジェルと共にいる時に、ジョエルの話になると必ず言われる一言があった。


「クリスティンの前だとジョエル様は別人よ」


ジョエルが誰かと話している所など興味がなく、見た事が無かった為、その言葉を安易に信じる事が出来なかった。


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