⑥⑦ エンジェルの逆転劇(3)
「……そうかもしれないわね」
「何かを変えなければいけないとずっと思っていたわ!でももうわたくし、どうすればいいのか分からなくてっ…!!」
「わたくしに任せて?」
ヘルマン公爵夫人の協力が欲しかった為、エンジェルの申し出をアッサリと了承。
エンジェルはコーリー同様、定期的にアインホルン邸に通うようになった。
婚約者候補として厳しい教育を受けていた公爵令嬢であるエンジェルは体型にしろ、マナーにしろ全てが完璧だった。
これもエンジェルが幼い頃から努力していた結果だろう。
やはりエンジェルの貴族として磨かれた所作は素晴らしいものだ。
逆にエンジェルの持つ技術を教わりつつ、仲を深めていった。
エンジェルの外見には殆ど手を加えていない。
強いて言うならばグルングルンの髪の毛をグルングルンにするのをやめて、メイクのやり方を変えてドレスを選んだだけである。
それだけでエンジェルの印象はガラリと変わった。
生まれ変わった自分を鏡で見たエンジェルは「これがわたくし…?」と言って涙を流したのだった。
「信じられない!今までのわたくしが嘘みたいだわ……こんな自分にもなれたのね」
「えぇ、後は自分の気持ちを上手く伝えられるように頑張りましょうね」
「ありがとう、クリスティン!今すぐお母様に見せたい……この姿で会いたいわ!」
そしてエンジェルがアインホルン邸に通うようになったのをきっかけに、ヘルマン公爵夫人とエラの仲を取り持ち、ドレスの協力を得るところまで繋げる事ができたのだ。
エンジェルはコーリーと同じく、クリスティンにもアインホルン家にとって素晴らしい結果をもたらしてくれた。
ある日、ピンときたクリスティンは一切関わりがなさそうだった二人、コーリーとエンジェルをお茶に誘って同席させた。
いつもと違う状況に戸惑う二人に「お互い、良い練習相手になるはず」と言って色々な話をするように促した。
初めて会うエンジェルに緊張して消極的だったコーリーは"常に堂々たれ"と育てられたエンジェルの姿が大きな刺激になったようだ。
いまいち自分に自信が持ちきれなかったコーリーは、エンジェルの芯の強い部分に強く惹かれるようになった。
そしてコーリーは相手を威嚇するような高圧的な態度が染み付いているエンジェルの言動を特に気にする事もなく、笑いながら受け止めたのだった。
元々穏やかなコーリーは感情的になりやすいエンジェルを不思議と落ち着かせてしまう。
直ぐに強がってしまうエンジェルには、コーリーの包み込むような優しさは新鮮だったようだ。
真逆の性格に見えた二人だったが、見立て通りピッタリとハマったのである。
そんなコーリーの温かさに絆されるような形で、エンジェルは想いを寄せていったのだ。
「クリスティン、わたくし……好きな人が」
「知っているわ、コーリーでしょう?」
「…!!」
「わ、わたくしが想いを寄せても迷惑じゃないかしら……」
「勿論よ!逆にエンジェル程の素晴らしい御令嬢を断る男なんているの?」
「………」
「あぁ、馬鹿な男が一人いたわ…!アイツは見る目がないのよ?綺麗さっぱり忘れましょう」
「そうね、確かに」
「黒歴史は記憶の奥に葬り去って次よ次!!」
「ウフフフ」
「オホホホ」
こうして水面下でエンジェルとコーリーは愛を育んでいったのだ。
二人に感謝されて、ヘルマン公爵夫人とオクターバ侯爵夫人も味方につける事が出来た。
エンジェルもコーリーも幸せで万々歳である。
「………陛下、お待たせ致しました」
「おぉ……シル!」
シルと呼ばれた人物を見て、目を見開いた。




