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⑥⑤ エンジェルの逆転劇(1)



「!!!」


「王家の印は悪用されぬよう大切に保管されている」


「………そ、れは」


「ヨルダンですら簡単には手に出来ぬ場所にな」



それこそ税の引き上げや国に関わるような重大な書類に押す時のみ、厳重に保管されている印をシスティルが鍵を開けて取り出すのだ。

それに触れられるのは限られた者のみ。

例え宰相であったとしても勝手に触れられないようになっている。



「くっ、国の為にと…!国を良くする為だからと……父上を驚かせようとしたのです!」


「……」


「それに父上は、全然僕の事を認めてくれないではありませんかっ!」


「そうだな」


「"このままではいけない" "王にはなれない"と、其ればかりッ!!僕だって国の役に立つところを見せれば……っ!少しは父上も僕を認めてくれるとヨルダンが!!」


「何故、これだけお前のことを想っていても、上手く伝わらないものだな」


「え……?」


「では問おう。ローレンス、お前は今まで何をしていた?毎日勉強をサボり、マナーも学ばない……お前は今、何が出来る?」


「そ、そんな面倒な事をしなくても僕は……!!」


「人を咎めて他を見下し、人の話に耳を傾けない。それでは良い王にはなれぬ」


「そんな筈ありませんッ!僕は選ばれた存在ですから!!」


「……いつかは気付いてくれるかもと期待していた我々が馬鹿だったのだ」


「……ッ」


「ヨルダンとお前は、他国に争いの火種をばら撒いていた。アインホルン家が声を上げなければ、どうなっていたか……考えたくもない」


「争い?僕は何も……!」


「お前の無責任な行動で、民を危険に晒したのだ。そして有能な家臣と素晴らしい友を失うところだった」


「……っ」


「お前が王位を継ぐ頃には、マーリナルト王国は無くなっていたかもしれぬな」


「!!?」


「それかヨルダンの傀儡にされて、愚王と国民から見放されて処刑されるかのどちらかだ」


「僕が、処刑………?」


「ああ、お前に未来はない」


「ぁ…………、そんなっ」



ローレンスがペタリとその場に座り込む。

華々しい舞踏会が行われている中、王座の直ぐ横では地獄のような光景が広がっていた。



トビアスに呼ばれて後ろに控えていたクリスティンは、頃合いを見計らって隣にいる令嬢と共にシスティルの前へと向かう。


カーテシーをした後に国王の言葉を待つ。

システィルが頷くとトビアスが口を開く。



「陛下、紹介致します。娘のクリスティンです」


「この度は見事な働きだった。深く感謝する……!」


「恐れ入ります」



クリスティンが笑みを浮かべる。

そして、その隣にいる御令嬢も静かに顔を上げる。



「お久しぶりです、国王陛下」


「驚いた……!随分と雰囲気が変わったな、エンジェル」


「はい。クリスティンのお陰で、わたくしは変わりました」


「ほぅ……それは素晴らしいな」


「自慢の友人ですわ!今日は大切なお話があって参りました………ですが、その前に」



エンジェルが柔かに微笑むと、小さく震えながら座り込んでいるローレンスの前にゆっくりと足を進める。



「お久しぶりです、ローレンス様」


「………エ、ンジェル?」


「はい、そうですわ」



以前は派手で真っ赤なドレスを着て、髪の毛をグルングルンに巻いていたエンジェルが、今や薄ピンクのレースドレスに身を包み柔らかい微笑みを浮かべている。

過剰にまとめ上げていた髪も緩く巻いて、前髪を作る事で可愛らしい印象を作り上げたのだ。


エンジェルという名に相応しい朗らかな雰囲気と優しい笑顔。


以前のキツく近寄り難いエンジェルとは一転して、思わず守ってあげたくなるような清楚で凛とした女性に生まれ変わったのだった。



「ローレンス様に"お前のような図太い女とだけは絶対に結婚したくない"と言われたエンジェル・ヘルマンですわ」


「!!?」


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