⑥③ トビアスの逆転劇(3)
どうやらヨルダンは罪を認める気はないようだ。
自分が宰相として優秀だったからこそ、今までマーリナルト王国が平和だったのだと必死にアピールしている。
けれど、こうなることは想定内だ。
確実にトドメを刺す為に動いてきたのだ。
「ここで一旦、闇オークションの話に戻そう」
「!!?」
「最近、他国から無理矢理連れて来られたという人々を保護した」
「なんだと…!?その者たちは今何処に!?」
「皆、アインホルン家で保護している」
「っ、貴様が高い金で買い取ったッ……はっ!な、何でもありません!!」
「ヨルダン……まさかお前が」
「その通りだ。そして我が息子が奴隷船摘発に力を入れていてな……捕まえたゴロツキ共から情報を吐かせて大本を辿っていくと全員が同じ名前を口にしたんだ」
「ば、馬鹿な…!」
「誰の名前を口にしたと思う?」
「……!!」
「ーーーお前だ、ヨルダン」
「何かの間違いだッ!!陛下、信じてはいけません!」
「闇オークションをマーリナルト王国で開く為に、ヨルダンが秘密裏に動いたことを娘が突き止めた。証拠もある」
「……そうか」
「争いの種を撒き散らすゴミは早めに掃除した方がいい。他国との良好な関係を保つ為に、手遅れになってはいけない」
騒ぐヨルダンを無視して、システィルを真っ直ぐ見つめている。
「……私からは以上だ。あとはお前に判断を任せよう、システィル」
「あぁ」
「私を、これ以上失望させないでくれ」
「安心しろトビアス。ワシの目を覚まさせてくれたこと心より感謝する……楽に死ねると思うな、ヨルダン」
「ま……待ってくれ!!本当に違うんだ!陛下ぁ、へいかあぁあぁっ!!」
ずるずると引きずられていくヨルダンを見送った。
ここ最近、アイラやシェイラのような奴隷や他国の子供を何人も保護してきたのだ。
見慣れない船や馬車を見掛けたら声を掛けていた。
アインホルン家の護衛を上手く使い、捕らえて情報を吐かせるという事を何度か繰り返した。
情報を追っていくと、最終的には首謀者である宰相"ヨルダン"に行き着いた。
「すまなかった……友よ」
「いいや、システィル。祖父の代で戦争も終わり、世界が平和になったことで、随分と気の抜いた生活を送ってきた」
「………あぁ」
「腑抜けていたのは、私も同じかもしれない」
「トビアス…」
「私は何も疑う事なくお前を……国を信じていた。平和ボケしていたのを娘のクリスティンが目を覚まさせてくれたんだ」
クリスティンは違和感の正体を突き止める為に積極的に動いていた。
アイラとシェイラを護衛代わりに、闇オークションに出品される予定の人達が集まる家に乗り込んで救い出した事もあった。
ジョエルにも協力を求め、様々な場所にドレスショップを持つオクターバ侯爵家の情報網を駆使して、何とか黒幕を突き止める事に成功した。
それがこの国を陰で牛耳っている宰相であるヨルダンだったのだ。
「どうだ、トビアス。久しぶりに城に滞在してくれまいか?」
「また改めて足を運ぼう。今日は愛する妻と祝杯をあげたくてな」
「そうか……このまま隣国に逃げられては困るからな。有能な家臣は引き留めなければと思ったんだが」
「ははっ、勘がいいな!実は、お前の返答次第では隣国に行こうと準備をしていた」
「……………」
「ハハッ、冗談だ!」
「トビアス……お前、本気だったろう?」
「システィル、マーリナルトをもっと良い国にしよう」
「ああ……是非とも力を貸してくれ」
システィルは固く握手を交わした。
「国を危機から救ってくれた君たち家族に、ワシから御礼を言いたい。アインホルン辺境伯」
「かしこまりました。国王陛下」
二人の間に和やかな雰囲気が流れる。
そんな時だった。




