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⑥② トビアスの逆転劇(2)



内情を調べ上げる為に、クリスティンと協力しながら動いていた。


そして一年程前……"国境に防壁を建てろ"、"再び軍を配備せよ"という国王の捺印が押された勅命まで届いた事を不服に思ったトビアスは、抗議文を送ったものの"王命である"と明確な理由は教えて貰えなかったのだ。


静かに問いかける。



「今からは一人の友人として接してもいいか?システィル」


「ああ、勿論だ。トビアス」


「理不尽な願いもシスティルとマーリナルト王国の為になるならばと全て飲み込んできた」


「……!」


「しかし、国境の防壁をアインホルン家の財を使い建設しろというのは何故なのだ……軍を何に使う?」


「!?」


「もし平和な国々に荒波を立てるつもりならば……私は全力で阻止しよう」


「トビアス、一体何の話をしている…!?そんな命令を下した覚えはないぞ!?」



困惑しているシスティルの表情を見る限り、嘘はついてないと判断するべきなのだろうか。

隣ではソワソワと手を動かし、瞳を揺らすヨルダンの姿……。


(もう少し様子を見るべきか)



「システィル、これを見てくれ……此処に国王しか押せない筈の印がある。これはお前が押したものではないのか?」


「なっ、何だコレは……!!」



今までシスティルから送られ続けていた理不尽な命令が書かれた紙を渡す。



「……こんな、まさかっ!あり得ない!!」



内容を目で追うシスティルの手が次第に激しく震えていく。



「私がこの国に尽くす意味はあるのか……教えてくれ、友よ」



縋るような視線に、システィルは目を見開いた。

自分が命を下していないとなると……答えは自ずと出てくる。



「ーーヨルダンッ!今すぐ説明しろ!!」


「ヒッ……!!」


「ワシはアインホルン領だけに重い税を課した覚えも、戦争を引き起こすような命を下した覚えもないぞ!!このような報告は受けておらぬッ!!」


「こ、これは、マーリナルト王国の未来を思いましてッ!!」


「自分が何をしたのか分かっているのかッ!?その為にローレンスを使ったのか……小賢しい奴め!ワシを謀りおって!!」


「ッ、違います!私は王子の為に懸命に…!!」


「御託はもう良い……!」


「しかし、陛下ッ!アインホルン家は十分すぎる程に財を持っているではありませんか!!だからあんなにブクブクと贅肉を付けて…」


「今のトビアスのどこに贅肉がついているというのだ」


「そ、れは」


「ーーヨルダンの配下の者共を捕らえ、情報を全て吐かせろッ!!徹底的にだ」


「「「はっ!」」」


「お待ちください、陛下ッ!!」


「他にもヨルダンがワシの印を使い、独自に送った書類があるか調べてくれ……!マーリナルト王国の貴族が集まっている今ならば手早く手を打てるだろう。違和感を覚える書類や理不尽な命があったかどうか聞き込んでくれ」



システィルは立ち上がり、手際良く命令を下す。

ヨルダンは唇を噛み締めながら此方を睨みつけている。



「私よりもこの男を信用するのですか!?全ては私を貶める嘘だッ」


「……」


「陛下、よく考えて下さい…っ!!何かの間違いです!」


「いいや、何も間違えてなどおらぬ……!責めるべきは、お前に政事やローレンスを任せたワシの愚かさだ」


「ずっと貴方の腹心だった私を切り捨てるのですかッ!?」



ヨルダンは尚も食らいつく。

必死な形相で国王であるシスティルに自らの必要性を訴える。

そして「マーリナルト王国の未来の為に」「国を更に発展させるには」と自らの主張を繰り返す。


システィルは顔を歪めながら、縋り付くヨルダンの手を振り払う。



「財源が底を尽きそうなどと嘘を吐き、トビアスからこれだけの税を徴収して、その金はどこへ行った……!?」


「で、ですから、それは…!!」


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