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⑤⑥ オスカーの逆転劇(4)

「おっと失礼、つい本音が……」



"お前達も同じだ"との意味を込めてオスカーは令息達を威嚇するように笑みを送る。

今後において良い関係を築けるであろう令息はクリスティンの根回しでキープしてあるので安心である。



「「「………」」」


「用が済んだのなら退いてもらえる?」



取り囲んでいた令嬢達を掻き分けて進んでいく。

そしてある一人の令嬢の元へと真っ直ぐに進んでいく。



「少し、お時間宜しいですか」


「……!?」


「アイリス嬢、あちらで俺と話して頂けませんか?」


「えっ、あの……わたしですか?」


「はい」



舞踏会でいつも一人でいると、毎回必ず声を掛けてくれる御令嬢が居た。

性格は控えめだが、目が合うとニコリと優しい笑みを浮かべて手を振ってくれる。


彼女と会うのは舞踏会で一年に一度だけだった。


少し話をするだけの間柄だった。

素っ気ない返事をしてしまうので、その度に悲しそうな顔をアイリスにさせてしまったのを、いつも帰りの馬車で後悔していた。


少し恥ずかしがり屋な彼女に声を掛けようとしたが「こんな自分が…」と思い、毎回踏みとどまっていた。


「本当は嬉しかった」と、いつか自分に自信がついた時にアイリスに御礼を言いたいと思っていたのだ。




そして奴隷商人に捕まっていた子供達を保護した際、アインホルン領の孤児院を新しく建てている間、隣のラテナ領の孤児院に子供達を一時的に預かって貰うことになった。


ラテナ領の孤児院に向かうと、そこには子供達と楽しそうに遊ぶアイリスの姿があった。

アイリスは見た目が変わったオスカーの姿を見て驚いたものの、以前と変わらない態度で「子供達は任せてくださいね」と、舞踏会の時と同じ微笑みを此方に向けたのだ。


しかし以前と違うアイリスの様子に気が付いた。

アイリスのことが気になり少し調べていると、子爵夫人が亡くなった後、新しく迎えたラテナ子爵の後妻と妹に虐げられていることが分かったのだった。


少し離れた場所には恐らくラテナ子爵の後妻と、その娘が煌びやかなドレスを纏ってアイリスを鋭く睨みつけている。

一方、アイリスの着ているドレスは明らかに型も古くサイズに合っていない。


(やはり、姉上の言う通りか…)


ラテナ子爵はアイリスをとても大切にしているはずなのに…。

周囲を見渡すが、ラテナ子爵は今日は出席していないようだ。



「取り敢えず、場所を変えようか」



アイリスは手を取ろうか迷っているようだ。

やはり、後ろの二人の視線が気になるのだろう。

視線を遮るようにアイリスを誘導する。



「オスカー様、わたしは…」


「突然で申し訳ない。少し調べさせてもらった」


「…!?」


「今だけは俺の言葉を信じてくれないか?」


「なんで、オスカー様が」


「……貴女を救いたいんだ」



そう言うと唖然と見ていたアイリスの瞳には、徐々に涙が溜まっていく。



「…っ」


「大丈夫、もう我慢しなくていい」


「でも……!」


「事情は全て分かっている。明日、俺の指示通りに動いてくれないか?」


「…!!」


「しっ……これは後ろの二人には内緒だ」



アイリスは小さく頷いた。


そっと手を取ると、今までの行いを償うようにアイリスには優しく語りかける。

今までの感謝を伝えて、自分の率直な気持ちを話していた。



「オスカー様、どうして私に…?」


「ずっと前から、俺は貴女の笑顔に救われていた」


「…!」


「次は俺が君を救いたい……そう思ったんだ」



柔らかい笑みを浮かべるて、アイリスも安心したように顔を綻ばせた。

アイリスの瞳から溢れる涙を拭った。


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