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⑤ 有り得ない現実


膝から崩れ落ちた。

両手で顔を覆うと、寝起きで肌がベタついているし、口元や顔全体に細かいニキビが沢山あった。



「ひぃ……!」



暫くするとドシドシという地響きと共に、乱暴にドアが開いた。



「愛しいクリスティン…!!何があったんだ!?」



目の前にはクリスティンと瓜二つの男性と、これまたボリューミーな体型の女性。

そしてまん丸なボールのような男の子。


(どうして、そんなに太ってしまったの…!?)


クリスティン自身も人の事は言えないのだが…。

部屋の密度が一気に上がったような気がした。



「…どうしたクリスティン!?なんか悪い夢を見たのか!!」



ーーートビアス・アインホルン(35) 120kg



「クリスティン…一体何があったの!?」



ーーーエラ・アインホルン(33) 98kg



「姉上、頭大丈夫ですか?」



ーーーオスカー・アインホルン(11) 80kg




上から父、母、弟……。

ご丁寧に翻訳機能と体重まで表示してくれる機能が付いているようだ。


アインホルン辺境伯…アインホルン家は他国から美味しい食べ物を輸入したり、逆にマーリナルト王国の特産品を輸出するパイプを繋ぐことを生業としていた。


各国と同盟が組まれてから早50年。

平和な世界になった為、他国との国境を守る必要がなくなったアインホルン家は、武器を捨てて輸入食料商社を立ち上げたところ大成功。


アインホルン家の食卓は毎日豪華に彩られている。


国での食料の三分の一を仕入れている。

人柄も明るく民からの信頼も厚い……が、働き振りの割には扱いも適当で貴族社会からは疎外されている。


というか、嫌われている。


パーティーにもお茶会にも呼ばれず、招待状も届かない。


しかし、本人たちは何も気にしていない。

そう…今のままで幸せだから!!



「……ああ!クリスティン」



トビアスが歩く度にドスンドスンッと床が揺れる。

これは家族全員で肥満ということなのだろうか。



(……た、耐えられない!可愛いドレスも着れないの!?というか肉が擦れて歩き辛い!!)



立ち上がろうとするが足が絡まり床に倒れ込む。

べチャリと顔をぶつけた後に、頭を押さえながらワナワナと震えていた。


"クリスティン"という名前に、この豊かすぎる体型。

大したことない婚約者を取られて振られた挙句、泣き寝入りをして、部屋に引きこもり、喉にクッキーとブラウニーを詰まらせて息絶えた……夢で見たクリスティン・アインホルンになっているのではないだろうか!?!?



「ーーーあり得ないッ!!」


「へ……?」


「こんな現実、許せないわ!!!許せる訳ないじゃない…!」


「ど、どうしたクリスティン…また振られたのか?」



そう…このクリスティンは惚れっぽい恋愛体質。

王子様を待って夢を見ている女の子なのである。

記憶を辿っていけば令息から行商の息子、町にいる男の子。

すぐに惚れ込みアピールするものの、見事に全滅である。

婚約の申し込みはあるが、顔を合わせれば直ぐに振られてしまう。


(お金を持っている白馬の王子様はトコトコと歩いてやって来ない……狩りに行って餌で誘き寄せて捕まえるものよ!!!)


夢でも見た事が本当に起こる未来なのかは分からない。

けれど今現在クリスティンに婚約者はおらず、少々焦っているところだ。


(このままだと同じ人生を辿るって事でしょう!?)


十二歳の時、王家主催の舞踏会で出会うウォーリーだかポーリーだか知らない侯爵家の令息と婚約するクリスティン。


それが高校デビュー…いや学園デビューしたよく分からない中途半端な男に振られてしまうのだ。


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