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④⑨ エラの逆転劇(1)


ザワザワと騒がしい会場で、全ての注目はアインホルン家に集まっている。


一番体の変化が大きいトビアスの周囲では、以前とは違って爽やかな風が吹いている。

トビアスは愛おしそうにエラを見つめている。


そんなエラの美しさには何度も目を擦りたくなる程だった。

とても以前の姿と同一人物だとは思えない。


豊満な胸を全面に押し出して、筋トレで作り上げたくびれに加えて、コルセットで更に引き締めたことにより、美しすぎるボディーラインが完成したのだ。


見ていて惚れ惚れとしてしまう艶やかな淑女である。

周囲の人達から漏れる感嘆の溜息。


弧を描いた真っ赤な唇と流し目に頬を染める人達。

そのあとに送られるトビアスの鋭い視線に男達の顔は青くなる。


エラは自分の体型が少しずつ変わっていく様を楽しみ、感動しながら過ごしていた。

やはり目に見える変化と数値は大きいようで、そこに気付いてしまえば、やる気は更に上がった。

食事に関しては甘いものを我慢出来ずに食べてしまう事もあったが、それは女性ならではのホルモンバランスや生理周期で変わるのは仕方がないことだ。


「また食べてしまった…」と落ち込むエラに「そういう時期がある」ことを説明しつつ、食べた分は動いてカロリー消費する事や、甘いけれど栄養もある果実に切り替えることでコントロールする事を勧めた。


あとはシェフにバランスの良い食事を作ってもらい、十分な睡眠を取ることを促す。


時間を掛けて無理のないダイエットをした事で、肌艶もよく健康的な痩せ方をする事が出来た。

機嫌は良くなり、夫婦仲も良くなり……今では何も言わなくとも、自分で時間を見つけては今のボディーをキープする為に、色々と取り組んでくれるようになったのだ。

自分のコンディションを保つ為に、エラは最大限の努力を見せてくれている。


クリスティンから見るエラは、女性としてとても輝いて見えた。

エラの努力は実を結び、こうして最高の結果をもたらした。


挨拶のためにトビアスと離れたエラに集う婦人達。

美しすぎるドレスをどこで買い付けたのか、エラの体型の変化やその理由を聞きたいようだった。


イエローゴールドの髪は一つに纏めてスッキリと見せている為、更にドレスとエラの体型を引き立たせている。


エラが纏うネイビーのドレスの上半身には真っ白な輝く糸で施された薔薇の刺繍。

動く度に光に反射して薔薇が輝き、存在感が増していく。

これはシャンデラ王国で作られる"魔法の糸"と呼ばれているものを交渉して輸入したのだった。

糸の中には鉱石を砕いて粉状にしたものを混ぜ込んでおり、シャンデラ王国の中では定番の糸なのだそうだ。



「アインホルン家で新しく輸入した糸と生地を使っているんですよ」


「……キラキラした薔薇の刺繍がとても綺麗」


「こんなに上品で美しいドレス見た事ないわ」


「エラ様、その綺麗なボディーラインは何処で手に入れたの!?わたくしにも教えて頂戴!!」



周りに飛び交う質問に丁寧に答えて行く。

以前、暴言を吐いて馬鹿にしていた御婦人の中には手のひらを返したような態度でエラを褒め称える人もいた。



「エラ様、是非わたくしにも…!」


「あら、私のドレスに興味があるのですか…?以前は"貴女のドレスと体型は惨めで見てられないわ"と笑いながら仰っていたのに」


「……そ、れは」


「それでも私の"惨めなドレスと体型"の話を聞きたいのならどうぞ?話を聞いていって下さいな」



そんな御婦人に冷めた視線を送りつつ、満面の笑みを浮かべながら答えると顔を赤く伏せた御婦人達は笑顔の意味を感じ取ったのか、輪の中から去っていく。


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