④③ やる気がアップ
(何かしてきたら返り討ちにしてやる…)
「あぁ、でも……アインホルン辺境伯は僕の気持ちも、婚約したいけど今は出来ない事情も知っているよ?」
「……はぁ!?」
「だから君の側に居ることを許可しているんだと思う」
どうやらトビアスがジョエルの裏事情を知っているようだ。
どうりで婚約者でもない男と一緒にお茶をしていても何も言わない訳だ。
さりげなくジョエルとの婚約をトビアスに勧められた時があったが、以前のクリスティンは「お父様、冗談でしょ?」とジョエルの告白の時と同様に笑って受け流していた。
「あんなに素晴らしい人と自分が釣り合う訳ないじゃない」と。
しかし今、トビアスから何も言われないところを見ると、ジョエルとの関係を前向きに捉えていると思われているのだろうか。
じっとりと警戒心を滲ませてジョエルを見ていると、すかさず話題を変える。
「そういえばクリスティン…今年の舞踏会には参加するの?去年もその前も参加を辞退していたね」
「勿論、今年は家族全員で参加予定よ…!」
今年の舞踏会での気合は半端ではない。
そこで念入りに作り上げた爆弾が大爆発する時なのだ。
会場には、高笑いが響き渡る事だろう。
(今までで一番楽しい舞踏会になるのよッ!!)
「なら僕は、君のパートナーとして立候補したい」
「へあ…!?」
「僕が、役に立つんでしょう?」
突拍子もない申し出に、口からは間抜けな声が飛び出した。
それに言葉通り、ジョエルがとても役に立つことは間違いない。
どこにいようとも常に令嬢達の視線を独占しているジョエルと共に行動する事で、注目は更に集まる事だろう。
目的を理解した上で、自分の有用性をアピールしてくるジョエルの賢さには驚くばかりだ。
そして断る理由は無いのを分かってて言っている。
しかし、承諾する前に気になる事があった。
何故ジョエルはこれだけの思いを抱えながら、今まで一度もクリスティンを舞踏会へ誘わなかったのだろうか。
婚約しなくとも男友達として共に出席することはよくある話だ。
「何故、今までわたくしを舞踏会に誘わなかったの?」
「それは…」
「…?」
「君はパーティーや舞踏会が余り好きそうじゃないし、僕が隣にいると迷惑掛けるでしょう?」
「………」
「今のクリスティンなら返り討ちに出来るだろうけど、前は……」
迷惑とは、ジョエルと仲良くしているのを見た他の御令嬢達に攻撃されてしまうという事だろうか。
どうやらジョエルはジョエルなりの理由があって、クリスティンの為を思って動いていたようだ。
「返事は?」
「勿論、受けて立つわ!!」
「……君は一体、何と勝負してるんだい?」
「わたくしを侮った全ての者たちに決まってるじゃない!!」
「あぁ、なるほどね」
「あとは貴方のその無駄に綺麗な顔面よ」
「えー……僕もなの?」
「横に並ぶのに、ジョエルの方が美しいなんて耐えられないわ!!」
打倒ジョエルに燃えていた。
目標があれば更にやる気が出るというものだ。
「君はそのままでも可愛いから…」
「そんなの知ってるわ!わたくしが可愛いのは当たり前の話よ」
「……そうだね」
「貴方が無駄に美し過ぎるのが原因でしょう?」
「はは、僕だってもう少しすれば男らしくなるよ」
「そうかしら…?」
ジョエルは肩の力が抜けたのか、フーッと息を吐き出した。
キラキラとした髪に光が反射して眩しいのもあるが、些か顔面が整い過ぎていて不満である。
自分よりも目立つ美しさというのは考えものである。




