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④② 変わっても

「噂で聞いた事あるでしょう?」


「少しは……」



アインホルン家の変革に忙しく動いていた為、自分のことは後回しにしていた。

最近、やっとジョエルの事を調べ始めた為に、まだまだ知らないことも多い。



「君は興味ある事以外には疎いよね」


「た、偶々ですわ」


「そう…?」



ますます気になるジョエルの訳あり発言。


大体、貴族の訳あり事情なんて余り表立って言えない事ばかりだ。

やはりマーリナルト王国では見かけない毛色と肌の白さ、異様な美しさを考えればどこかの王族の生き残りか隠し子説が濃厚だろうか。


以前のクリスティンはジョエルのウワサを殆ど気にしていなかったので記憶にも答えはない。



「二人だけの秘密として、わたくしにだけ教えてくれたりとかは…?」



少し甘えた声で聞いてみるものの……



「それは……まだ内緒かな」



これまた眩しいほどの笑顔で答えられてしまった。


手っ取り早く何が訳ありなのか教えて頂きたいところだが、これ以上問いただすだけ無駄だろう。


ジョエルとのこれからの関係をどう推し進めていくかを考えていると…。



「大した事じゃないんだけど、今は誰にもバレる訳にはいかないんだ」



大したことないのなら言えよ…と心の中で舌打ちをする。



「クリスティンに迷惑を掛ける事はないから安心して。驚くかもしれないけれど」


「……」


「むしろ、今の君にとってはプラスに働く可能性も大きい」


「そうなることを願っているわ…心から」


「あぁ…それと、君が変わっても僕の気持ちは変わらないからね」


「あら、気付いてたの?」


「勿論さ、僕は君をずっと見てきたんだから」



今度はジョエルが猫のように目を細めた。


性格が変わった事を隠しているつもりもないが、前のクリスティンとは"別人"だと明確に示すつもりはない。

実際、これだけ中身が変わったとしても記憶が残っている為に"クリスティン"を別人だと疑う者は殆どいない。


しかしジョエルはクリスティンが"変わった"と言い切ったのだ。

これも愛の力だろうか。


ベテラン黒服の佐々木さん並みの観察力と察しの良さに驚くばかりだ。


キャストの気持ちが分からないボーイが多い中で、いつもニコニコ佐々木さんは、新人の女の子のサポートも難なくこなす。

そして黒い笑顔を浮かべながら完璧な付け回しをするので、佐々木さんは店で圧倒的な信頼を勝ち取っていたのと同時に恐れられていた。


その腹黒い部分がジョエルと似ているような気がしてならない。



「春の花のように温かくて可愛くて健気で夢見ているクリスティンも素敵だけれど、薔薇のように美しいけど棘があってアグレッシブな君も好きだよ」



以前のクリスティンを褒め称える言葉の方が温かく感じるのは気のせいだろうか。

サラリと毒を吐かれて口端がヒクリと動く。

若さというのは時として最も強力な武器である。



「あーら、それは貴方の期待に添えずに申し訳ないわ」


「そういう負けず嫌いなところも、君が言うと可愛く思えるよ」


「恋は盲目って言うけれど本当なのね」


「そうだね……でもクリスティンも変わった事だし、僕も変わらなきゃかな」



イラっとするのを抑えつつ、ジョエルに向けて微笑みを浮かべる。

カップの取っ手がミシリと音を立てた。

違うという事を認識した上で、何も問わずに"クリスティン"として扱っていたかと思うと、なかなかに食えない男である。


 

「はぁ……とりあえず、貴方は何か事情を抱えていて、それは今言うべきタイミングではないのね」


「理解が早くて助かるよ」



内情がわからない以上、派手に動くことは出来ない。

それに今は深入りしない方がいいようだ。



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